sect of vile divinities incantation
INCANTATION / Sect Of Vile Divinities (2020)

1. Ritual Impurity (Seven Of The Sky Is One)
2. Propitiation
3. Entrails Of The Hag Queen
4. Guardians From The Primeval
5. Black Fathom’s Fire
6. Ignis Fatuus
7. Chant Of Formless Dread
8. Shadow-Blade Masters Of Tempest And Maelstrom
9. Scribes Of The Stygian
10. Unborn Ambrosia
11. Fury’s Manifesto
12. Siege Hive

INCANTATIONの3年振り、通算11枚目のアルバム。
Relapse Recordsからのリリース。

US出身のデスメタルバンドです。
前作リリース後、ライヴメンバーとして活躍し前作ではゲストとして参加していたSonny Lombardozzi(Gt)が正式加入。本作に参加しています。が、本作リリース前に既に脱退しており、現在はDISMEMBERMENTのフロントマンであるLuke Shively(Gt)が加入しています。
最近イケイケな勢いを強く感じる新世代オールドスクールデス勢からも大いにリスペクトを集めているベテランデスメタルバンドの新作ですよ。
大きく外したり路線変更したりすることのないバンドなだけに本作にもかなり期待していました。
で、聴いてみたわけですが。

なんかメッチャこじんまりとした音ですね。

本作、過去一で音作りがこじんまりとしてます。
デスメタル的な分厚さや粗さのない妙に小綺麗な音に仕上げられており、正直言ってパワーダウンしている感は否めません。
ここ数作はずっとDan Swanoが音作りを手掛けていて本作もDan Swanoなんですけど、明らかに前3作よりも音圧低めかつ分離の良い音にしていて、INCANTATIONの持つ醜悪さが大いに減退しているのはマイナスにしかなっていないですね。
楽曲のほうはというとやたらと簡素な構成のものが多いです。
疾走中心の楽曲は尺短めに纏めて、ドゥーミーな楽曲は大きくテンポを変えずに聴かせるなど、1曲の中での「速」と「遅」の起伏は小さめ。そのせいなのか、なんか1曲ごとの聴き応えに欠けてアルバムを聴き進めても非常に淡々としてる印象ばかりが残ります。「らしさ」ないわけではないのに「INCANTATIONってこんなんだったっけ?」という違和感が凄くありました。

#1は軽快な2ビートとブラストビートの切り替えにアッサリした気味の悪さを持つテンポの良いトレモロを組み込んだファストパートと、これまたアッサリ気質な泥濘パートを繰り返すデスメタルナンバー。
ドロっとしたドゥームリフをずんぐり振り回す長めの鈍足イントロ ~ バスドラ連打と重たい刻みでテンポアップし、ドゥームデスパートとのヌルヌルした対比を効かせていく#2。
#3はのっけから大味なブラストでパワフルに疾走するもすぐにドロドロのドゥームパートへと急転直下。中盤以降は葬式ドゥームばりに手数を抑えたダウナー展開や纏わりつくような粘り気のあるグルーヴパートなどでひらすら陰気に聴かせています。
妖しく浮遊するイントロで幕を開ける#4は気持ち悪い音階がウネるギターと共に駆けていく短めのデスメタルナンバー。
重たく刻んで叩きつける圧の強い疾走と重心を落とすバスドラ連打のグルーヴパートを行き来し、後半はザラついたドゥームリフを震わせるスローパートでさらに重心を落とす#5。
#6はカビ臭いドゥームリフとグロウルが交錯するもったりした演奏でズルズル引き摺っていく2分半弱のショートナンバー。
#7は前曲とは対照的にヤケッパチな爆走と転がり回るリフでやかましく聴かせる2分半強のデスメタルナンバー。
悲哀と仰々しさが入り乱れたミドルテンポのイントロの後、厳ついアップテンポとミドルの間を揺れ動き、最後は陰気に落ち込んでいく#8。
ネガティヴなツインギターハーモニーを響かせる葬式ドゥーム寄りのダウナーパートを中心に聴かせる#9。ヘヴィネスより悲壮感のほうが強い曲。
続く#10も出だしは粘っこいデス/ドゥーム。その後は分厚いリフとバスドラの連打で強度の高いスロー/ミドルを作り上げて疾走へと持っていくも最後は再び重苦しくテンポを落とす、地底感強めのデスメタルナンバー。
#11はトレモロと軽快な疾走が心地良い2分半ほどのオールドスクールデスナンバー。アルバムの中で一番シンプルにデスメタルしている曲です。
ラストの#12は叩きつけるように疾走する立ち上がりから徐々にグルーヴィーなテンポに落としていき、ハードコア気質なスロー/ミドルへを挟んでからは再び強い疾走へと回帰。中盤以降はグチャグチャな混沌さが増してそのまま終了。

もっと負の感情にまみれたデスメタルだったはずなのになんかスマートになってしまったのが残念でした。
決して悪いアルバムではないですが、僕がINCANTATIONを勧める時に本作を出すことはないかなと思います。

評価:★★★☆