宮部みゆきさんの「ソロモンの偽証」を読みました
ソロモンの偽証 宮部みゆき
あらすじ
クリスマスの朝、雪の校庭に急降下した14歳。彼の死を悼む声は小さかった。けど、噂は強力で、気がつけばあたしたちみんな、それに加担していた。そして、その悪意ある風評は、目撃者を名乗る、匿名の告発状を産み落とした―。新たな殺人計画。マスコミの過剰な報道。狂おしい嫉妬による異常行動。そして犠牲者が一人、また一人。学校は汚された。ことごとく無力な大人たちにはもう、任せておけない。学校に仕掛けられた史上最強のミステリー。
「BOOK」データベースより
さすが著者が9年間もかけて書き上げた作品だけあって、ハードカバー3冊とかなりのボリューム。
しかしながら非常に読みやすい文体の上、ストーリーの先がきになってこの物量はまったく気にならない。サクサク読めてしまった。この苦にすることなく読ませる著書の筆力に感服する。
物語は中学校がメインで、主要な登場人物も学校関係者がほとんど。
中でも特に個性的な中学生たちの色付けが見事だと思った。
不良の3人組がちょっとステレオタイプすぎるかな?と感じたのと
頭脳明晰な神原・井上・涼子あたりが、スーパー中学生すぎやしないか?とも思ったが、
それぞれキャラが立っていて魅力的。
中でも自分は人間臭く善悪の狭間を揺れ動き、思春期の葛藤が見事に描かれた野田君に惹かれた。この3部作は彼の成長譚と言ってもいいぐらいの存在感。
読んでいてハッピーエンドにはなりづらい展開であると感じていたが、少年・少女の成長物語として見れば、最後のエピローグを読んですごく心が安らかになれる。
3冊を見なおしてみると、聞き取りや証拠集めに奔走し、さあどうなる裁判!?の引きで終わりワクワク感が半端ないⅡ部が一番面白かった。Ⅱ部であった伏線の回収はⅢ部では自分の想定外の結末ではなく想定内。どんでん返し感はすごく薄い。
しかし最初から最後まで様々な人物の歪んだ嫉妬や被害妄想によって事件が複雑化し、物語の発端ともなるこの屈折した「リア充爆発しろ」な悪意が明らかにされていく過程は圧巻。
そしてこの物語の時代設定であるバブル期に中学生というと自分はドストライクな年代なので、色々と当時が思い出されて感慨深い部分もあった。
自分が中学生だった時はこんな中二病こじらせた思想も、真実を追求するために立ち上がる勇気や決断力もない、凡庸で何も考えていない中学生だったなぁとシミジミ思う。
今年ももうすぐ「このミステリーがすごい!」が発刊される時期だが、
この小説は間違いなく上位にランキングされそう。
自分的にも質・量ともに今年読んだ作品では一番だと思う。
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