映画和日乗

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「ペイン・アンド・グローリー」監督ペドロ・アルモドバル at TOHOシネマズ西宮OS

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アルモドバルの作品は随分敬遠して来た。最後に観たのは2007年の「ポルベール」だ。

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久しぶりに観ようと思ったのは、アルモドバル自身を彷彿とさせる映画監督が主人公だと知ったからだ。「81/2」('63)なのだろうな、と。ボブ・フォッシー北野武も虜にしたこのフェリーニの迷宮にアルモドバルも足を踏み入れる。

 

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 アルモドバルを彷彿とさせる映画監督を演じるのはアントニオ・バンデラス。彼ももう60歳か。かつてのギターとマシンガンを抱えたアクション俳優がここでは手術痕が痛々しい病気がちで鬱気味の男。

 少年時代を回想し、自身の監督作品で主演を演じた俳優の家を30余年ぶりに訪ねる。創作意欲が湧かないと弱音を吐く監督に俳優は一人舞台の台本を書いてくれと懇願する。俳優が常用しているコカインを分けてもらう監督。慢性的な頭痛がコカインの効果で解消され、監督は過去のある男性との同棲の経緯を戯曲化する。その戯曲による一人芝居を上演している劇場にその元同棲相手が現れて、というお話し。アルモドバル自身の経験が色濃く滲んでいる事は自明だ。

 しかしフェリーニやフォッシーのように縦横無尽にキャメラが駆け回って幻想を描き出す訳ではない。むしろ愚直なほどに会話劇、切り返しの応酬。多用される人物二人を横位置で捉える構図。画的にはファッション以外では派手さは無いものの、ハッと息を呑むアクションとしてのラブシーンがたった一度ある。ネタバレになるので書かないが。

 少年時代の"ヰタ・セクスアリス"は丁寧に見せ、それが伏線となって後半にホロリと効いてくる。60年代のビルバオ(バスク州)は貧しくて学校に通えない人がまだいたのか。

 だいぶこの人特有のクドさは鳴りを潜めて、ご自身の来し方をてらいなく綴ったワビサビの心境、といったところか。