奇勝!滝による瀑食洞門(1)鳥居の滝[上勝町] | 次世代に遺したい自然や史跡

次世代に遺したい自然や史跡

毎年WEB初公開となる無名伝承地や史跡、マイナーな景勝・奇勝を発表。戦争遺跡や鉄道関連、坂本龍馬等の偉人のマイナー伝承地も。学芸員資格を持つ元高知新聞主管講座講師が解説。

[落下する滝が横に弾けて穴を+百間滝]

以前、徳島県那賀町の海蝕洞門(海食洞門)ならぬ河食洞門を紹介したが、隣の上勝町には、川の流れとは垂直、つまり90度近く角度が違った方向に洞門が開く奇勝がある。通称「鳥居の滝」(「鳥居滝」や「鳥居岩の滝」とも)がそれである。

 

鳥居の滝は勝浦川最上流域にあり、大きく二条に分かれて落下している。その二条がそれぞれ複数条に分かれて落下している。落差はさほどでもないが、川の本流の滝故、水量があり、轟音を轟かせている。

 

その二条の瀑布の間には細長い崖となった川床の岩があるのだが、その岩が洞門になっているのである。右側の滝の途中には大きな石があり、そこに瀑布が当たって飛び散るように落下している。

 

つまり、太古は那賀町の洞門横の川のように、勝浦川の水量は現在の倍ほどあり、右側の瀑布は前述の途中の大石に当たった後、左横の細長い岩に衝突して落下していたことが想像される。その衝突が何万年も繰り返された結果、岩を貫き、洞門になったものと考えられる。

 

この洞門を地元民は「鳥居」と呼ぶようになった。洞門は名付けるならば「鳥居洞門」となるだろう。

左右の滝共、それぞれ滝壺を擁すが、特に左側の瀑布の滝壺はエメラルドの泉のようで美しい。「勝浦ブルー」とでも言おうか。

 

高知県から行くには(一般道を辿った場合)、日本最長の林道「剣山スーパー林道」東の起点から行く必要があるが、12月から3月まではゲートにより閉鎖されている。ゲートから現地までは5キロほどだから、車に折り畳み自転車やマウンテンバイクを積んでおけば、行けるだろう。

徳島県在住者なら、神山町の各林道から南下して上り、スーパー林道に出て更に南へ下ることになる。

 

ゲートのある地は百間滝(下の写真以降の写真)駐車場の奥だから、鳥居の滝探訪前に名瀑を鑑賞すると良い。滝の規模は鳥居の滝の2.5倍はあり、更に滝壺のすぐ下流が深いV字峡となっており、滝壺的甌穴を複数形成している。この景観が名瀑と言われる所以である。

 

駐車場から滝までは数分以内。途中のV字峡の景観が優れた場所には展望所がある。ここからの景観はまさに秘境。

滝壺のすぐ手前にも行くことができる。谷が深いため、滝壺にあまり日光が当たらず、エメラルドの輝きはないが、滝壺からその下の滝壺的甌穴へと滝状の激流が落下する様は迫力がある。当然滝自体も豪快。

 

鳥居の滝へは、スーパー林道のながお橋を渡って1.5kmほど北上した所の三差路を右折する。樹林の奥に「林道カジヤ谷線」の標柱が建っている。

林道はすぐ二手に分かれるが、左の林道の方に指差し道標(遍路道標によくある)が出ている。ここからは悪路になるので、車の腹を擦りたくなければ(冬期以外)、左折した先の路肩にでも駐車すれば良い。そこから歩いても僅かな距離。

 

「鳥居・自然の造形」という道標が現れると、少し引き返し、フェンス(ネットだったかも)の端から北東に下りる踏み跡を辿る。

すぐ川に出るが、そこから既に鳥居の滝は見えている。

 

鳥居洞門(下の地図)のベストショットを狙うなら、東岸の斜面を上がれば良い。身体の大きい者には無理だが、その斜面から滝天辺横の崖に上がれるようになっており、滝天辺の側に立つこともできる。

 

西側の滝の横からは林道に上がれるから回遊できるのである。非常に短い距離故、地形図にルートを記すこともできない位。

次回、鳥居の滝よりも遙かに見応えのある洞門滝を紹介する。

今後も川と海のマイナー洞門を紹介してほしい、という方は下のバナーを。