奇勝!滝による瀑食洞門(2)フイゴの滝[上勝町] | 次世代に遺したい自然や史跡

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毎年WEB初公開となる無名伝承地や史跡、マイナーな景勝・奇勝を発表。戦争遺跡や鉄道関連、坂本龍馬等の偉人のマイナー伝承地も。学芸員資格を持つ元高知新聞主管講座講師が解説。

[今でも滝が貫く洞門]

前回紹介した鳥居の滝は、古代以降、洞門を滝が通過することはなくなったが、太古から今日に至るまで、洞門を通り続けている滝がある。それが鳥居の滝上流に懸かるフイゴの滝である。この滝は名称が地形図(阿波寄井)にも記載されているので、名前だけは登山界でも知られているだろう。

 

鳥居の滝の洞門は、太古でも直接滝が通り抜けるような形ではなかったが、フイゴの滝の洞門は瀑布の途中にあるため、今でも滝がくぐっているのである。

上り口には道標も設置されている。鳥居の道標から徒歩1分半ほどの所、林道が堰堤で川を渡る地点の袂である。そこに駐車スペースもある。

 

踏み跡は上り口周辺については薄いが、山際の奥を見ると林業関係の看板が見えている。そこへ行けば踏み跡は明瞭になる。

沢の出合を右下にやり過ごし、北西の谷沿いを進む。道沿いには頭上に覆い被さるかのような切り立った断崖もある。

 

10分ほど歩けば、ロープが設置された滝の天辺へ向かう踏み跡と、滝壺へのルートの分岐点に着く。但し、滝壺への踏み跡は廃道に等しい。しかし既にその付近から滝の一部が見えているため、適当に下りるとすぐ滝壺手前の沢に下り立つ。

 

切り立った狭い崖の間を抜けるとこじんまりした滝壺が現れるが、滝の全容は滝壺に浸からないと分からない。滝壺は狭いものの水は澄み切っている。

 

ここではどこか洞門なのかよく分からないが、滝天辺へ向かう踏み跡を登るとすぐ滝の全容が現れる。思わず「おおっ!」と言ってしまうほど、異様な形をしている。過去、お目にかかったことのない形状である。

 

とても自然にできた形状には思えない。海岸なら兎も角、山奥の狭い谷でこんな岩に巨大な穴が開くほどの激流が浸食活動をしていたのかと思うと、畏怖の念さえ感じる。踏み跡から見る限りでは「洞門」という表現が正しいのか否か、やや疑問だったが、滝の天辺から見下ろすとその表現に納得する。

 

天辺にはいとも簡単に下り立つことができる。そこから滝を見下ろすと、踏み跡から見た直線的洞門ではなく、如何にも水によって浸食されたことが分かるように、洞門部の岩は丸みを帯びている。そして勢いよく、瀑布が落下してくぐっている。

このすぐ上流にも滝壺のような澄み切った勝浦ブルーの泉があるので憩える。

 

帰路、車か自転車等で林道カジヤ谷線起点の三差路まで戻ると、勝浦川支流沿いを遡る剣山スーパー林道を上り、最初の左ヘアピンカーブ先に駐車する。

 

カーブ部は橋になっているのだが、橋の北袂には「蛇渕」という道標が建っている。そこから沢に下りると、大蛇が這った跡のような川床の細長い岩の凹み部を激流が流れており、その上には、以前紹介した鳴呼渕のような美しい滝壺的蛇渕が現れる。ここに直射日光が当たれば、にこ淵や姥ヶ淵のように、エメラルドグリーンに輝くことだろう。

 

この上勝町にはまだまだいくつもの滝や美しい淵があるのだが、また機会があれば探訪したい。

 

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