駅前秘境・桜滝と道路下秘境・妃ヶ淵(大分と高知) | 次世代に遺したい自然や史跡

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毎年WEB初公開となる無名伝承地や史跡、マイナーな景勝・奇勝を発表。戦争遺跡や鉄道関連、坂本龍馬等の偉人のマイナー伝承地も。学芸員資格を持つ元高知新聞主管講座講師が解説。

《駅や道路から徒歩10分ほどの秘境》

2019年4月9日、「マツコの知らない世界」で放送された「滝の世界」コーナーの中で、「女性にオススメしたい滝3選」第1位に輝いたのは「楽をして秘境に行きたい」という見出しが付いた大分県日田市天ヶ瀬にある桜滝。落差25m、幅15mの規模。

 

当方はこの番組を見ていないが、「女性にオススメしたい」や「楽をして秘境に」というのは、整備された遊歩道を少し歩いただけで到達できる、という意図なのであろう。

実際、桜滝はJR天ヶ瀬駅から徒歩約10分で到達できる。当方も最初は「そんな駅前に本当に秘境があるのか」と訝っていたが、いざ訪れてみると「おおっ!」と感服してしまう。

 

滝は玖珠川支流の合楽川の黒光りのする岩盤に懸っており、二段になって落下している。昔から文人に愛され、「天瀬六瀑」の一つになっている。

滝壺は意外と浅いものの、岩盤が長大で圧倒されるような感覚がある。水量も多く、轟音を立てている。享保3年に刊行された「豊後国志」にも「砕け散ること花の如く、流下すること簾の如し」とあり、その瀑布が崖によって砕け散った飛沫が、桜の花弁が舞い落ちるようであることから、滝名が付いた。

遊歩道沿いに深山幽谷感はないが、この滝の周辺だけ、秘境感があるのである。

尚、滝の左奥の細い谷にも無名の細長い滝が懸っている。しかし天辺を見ると建物が。

 

一方、「いきなり秘境」的滝は高知県にもある。日本一人口が少ない(離島を除く)大川村の朝谷川にある妃ヶ淵である。にこ淵や姥ヶ淵のように、滝ではなく、滝壺を淵と見做して名称が付けられている。

 

こちらの滝も滝壺までは村道から徒歩10分もあれば行けたと思うが、遊歩道が整備されているのは展望所までで、そこからは急斜面を木々に掴まりながら下りなければならない。但し、登山やハイキングを行っている女性なら、いとも簡単に岸辺に下り立つことができる。

 

ここの滝は道路からある程度下った所にあり、それだけ渓谷がV字になっていることから、秘境感は桜滝よりある。とても車道下とは思えない光景である。

妃ヶ淵に落下する滝の落差は15mほどだが、V字峡だけにもっと落差があるように感じられる。滝壺である淵の深さは桜滝よりは深いが、それでも一見すると泳げる位浅そうに思える。

 

滝壺の下流は一旦低い滝となり、岩肌を滑るように流れるが、すぐまた断崖になり、滝となる(下の写真)。この滝は妃ヶ淵の滝より落差があるような感覚がするものの、周囲は絶壁故、下りることはできない。

その無名の滝の滝壺は下女ヶ淵と言い、妃ヶ淵同様、エメラルドグリーンが美しい。

この二つの淵には、以前紹介した大川村の落差約100mの小金滝に纏わる釈善伝説の「続き」が伝わっている。

 

古代、都の旱魃を雨乞い祈祷によって解消させた僧、釈善は朝廷から褒美に美女二人を贈られるが、自分は僧として心外であると、四国に渡り、大川村の三滝山に籠ってしまった。

 

しかし美女らは朝廷から釈善の世話をするよう、申し付けられていることから、大川村まで追ってくる。が、誰に聞いても釈善の行方を知る者はおらず、二人は悲観して年上の美女は妃ヶ淵に、年下の美女は下女ヶ淵に投身した、ということ。

尚、折角妃ヶ淵まで来たのであれば、朝谷川の本流にあたる大北川上流の大北川渓谷に注ぐ支流に懸かる翁の滝(上の写真)を訪れると良い。増水さえしていなければ大北川を渡渉して瀑布に直接ふれることができる。

落差は約30mで秘境感もないが、何段にもなって飛散するように落下している。その中には虹が懸かる箇所もある。

 

滝壺らしい滝壺もないように記憶しているが、水底に溜まった楓(紅葉)の葉の色が水面に反射し、水流によってその色合いが歪んで見える。カメラマニアは芸術的な写真を狙うといいだろう。

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