<尾根上に大小の天然洞門>
当方は四国に於いてはこれまで、裏見の滝や本土のエンジェルロード等、特異な自然景観の地を探訪・探索してきたが、今年から九州に於いては、「山上の洞門」の探索を始めている。
きっかけは今年初頭、以前紹介した大分県の耶馬渓の中の裏羅漢を探訪したこと。裏羅漢は九州最大の天然の山上洞門だが、机上調査で九州の最低三つの県に於いて、10以上の山上洞門が存在することが判明した。この数は全国的に見ても屈指、いや、随一だろう。
九州にはフェリーを利用して行くことから、最低三連休以上の好天気の期間でないといけないが、今年のGWはコロナの影響により、行けなかったから、盆期間から本格的に探索を開始した。
まず、三県の内、最も山上洞門の数が少ない(と思われる)福岡県をターゲットにした。一つ目は地元の者でも知る者が少ない「針の耳」。針の耳とは九州で多く使用される言葉で、細長い岩の割れ目や洞穴の名称として使用される。しかし今回のものはそんな穴ではなく、堂々たる洞門である。
場所はみやこ町犀川伊良原岩屋河内にある鷹崛権現(鷹窟神社)から、南の尾根を15分ばかり登った所の標高550m地点(下の地図)。鷹崛権現は福岡屈指の霊山、英彦山関連の修行場の岩屋「彦山四十九窟」の11番目で最大の岩屋「鷹窟」に鎮座する神社(祠)。
この鷹窟のある岩盤沿いに、針の耳がある尾根に向けて踏み跡のあった痕跡が認められることから、昔は針の耳も修行場だったことが想像される。
観光協会のサイトでは、鷹崛権現参拝の際は地元のガイドが案内する旨、記述されているが、現在は権現直下まで車道が通じているから、その必要はない。
車道からは急角度の石段が続くが、迂回するコンクリート歩道があるため、苦労なく権現に到着する。柵があるため、岩屋内部には入れないが、頭上を覆う巨大な岩の庇は迫力がある。
元々は権現の南の岩盤に沿って踏み跡が続いていたのだが、倒木等でヤブ化しているため、迂回参拝歩道の一番上の急カーブまで戻り、そこから適当に草地に入る。
そしてその岩盤と尾根が直角に接する箇所を目指して適当にヤブの斜面を上がる。尾根と接する地点(上の写真)には虎の子ロープが張られているので、それを掴みながら、尾根に上がるが、鹿除けネットが張られているため、ネットに引っ掛からないよう、下をくぐる。
最初、勾配がきつい箇所にはロープがあったかも知れないが、コースは未整備のため、忠実に尾根を辿るのみ。
上りが一旦下りに転じると踏み跡は尾根を北側に逸れ、植林帯に突入する。尾根を逸れるのは、尾根に巨大な針の耳があるからである。
踏み跡は針の耳の北側に出る。岩盤の東側にメインの洞門があり、西側に猪が通過できる程度の小さな洞門が開いている。裏羅漢と比べると比較にならないほど小さいが、洞門は立って通り抜けることができる。それに山中にいきなり、こんな洞門が現れると誰しも驚くだろう。それ位の迫力はある。
尚、針の耳には距離は短いとは言え、登山未経験者は行くべきではない。それは、往路は気づかなかった尾根の分岐が復路、複数あるため、コンパスで方角を確認しながら下山しないと道迷いを起こしかねないからである。
自治体はこれを最も恐れているが、民地のため、道標等も設置できない。また、鹿除けネットの破損やゴミの廃棄等があると、地権者が立入禁止措置を取ることも考えられ、これも自治体が心配しているところ。
実際に行く際はくれぐれも「探訪させて戴く」という謙虚な気持ちで入山されたい。
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