liverpoolfc.comより。

 

フットボール・アナリティクスは現在では主流となっている為、スタンドやパブで行われる議論で“ローブロック”や“ハイプレス”といった用語を耳にすることは珍しくありません。

 

ですが、今世紀の変わり目では、このアートはまだ少数のパイオニアによってのみ実践されているだけでした。

 

ティム・ジェンキンスのような人たち。現在はリヴァプールFCアカデミーの分析部門の責任者であり、レッズU23チームの個人コーチでもありますが、彼は2001年に20代前半で大学を卒業すると、プレミア・リーグ降格を避けようとするダービー・カウンティのチームにアナリストとして招かれ、いきなり難しい仕事に臨みました。

 

「マンデーナイトフットボールにはたくさんの答えがあるんだよ!」かつてニッチだった彼の職業がツァイトガイスト(時代思潮)に浸透していったことについて尋ねられると40歳のジェンキンスはそう言って笑いました。

 

ゲームにおけるジェンキンスの旅は、スポーツ分析における最大のグローバル・プレイヤーの1つとなる企業で始まりましたが、そこは2000年代初頭では駆け出しの新興企業に過ぎませんでした。

 

リーズの古い倉庫に拠点を置いていたかもしれませんが、ProZoneにはシリコンバレーの雰囲気があり、志を同じくする熱心な若き従業員たちがいました。そのほとんどはその後フットボールにおいて尊敬される思想家となり、何人かは現在メルウッドやカークビーのアカデミーで雇われています。

 

 

「今じゃProZoneは間違いなく分析の分野ではとてもよく知られた名前だけど、私がそこに行った頃は小さな集団、7、8人のスタッフがいるだけでね。それで私たちは強力して、その分野のフロントランナーとなった分析システムの構築を手助けしたのさ。」とジェンキンスは振り返りました。

 

「それ以前は本当に何もなかったからね。だから、それがフットボールクラブのサポート構造の中で独立したディシプリンとしての分析のある種の始まりだったんだ。あの頃私たちの何人かがいてね。デイブ・ファローズ(リヴァプールのスカウティングとリクルートメントのダイレクター)やジュリアン・ウォード(メルウッドのローン進路兼フットボール・パートナーシップ・マネージャー)-マイケル・エドワーズ(レッズのスポーツ・ダイレクター)もその辺にいたね。彼らと一緒になって製品を開発して、それからの私たちの役割はそこを出て、市場に製品を持ち出すことだったんだ。」

 

そのように言えば簡単に聞こえます。ですが、ラップトップ上で動くドットだけで武装してプレミア・リーグのクラブへまっすぐ向かって行くのは、分析が依然として疑念の空気に包まれて見られていた時代には困難だったに違いないのでは?ダービーではなく、ティムの意見はジョン・グレゴリーやジョージ・バーリー、特にジム・スミスによって温かく迎えられましたが、悲しいことに彼は12月初旬に亡くなりました。

 

「とても良く迎え入れてくれたね。特にジムはそうしてくれたよ。多分、ステレオタイプがそうしたものを提案させてこなかったんだろうけど、彼は実際には新しいコンセプトを試すことにとてもオープンだったし、ProZoneテクノロジーを採用した最初の監督の1人だったんだ。」

 

「当時は本当に試行錯誤だったね。選手が試合中にどれくらい走ったか、パスを出した本数を知ることは素晴らしいことだった。でも、それが出てくると“じゃあ実際にパフォーマンスについて何を教えてくれるんだ?”ってことになったんだ。本当に基本的なことさ。」

 

「おそらくこの仕事の一番難しい部分は数字に文脈を加えることで、自分自身はもちろんそれを操作する人たちを教育しようとしていたんだ。プレミア・リーグがあって、降格して、チャンピオンシップでプレイするというかなり波乱万丈の2年間だったね。でも、ダービーにいた時が私にとっての始まりで、分析-特にビデオを用いた作業だね-が選手の成長にどういった影響を与えるものなのかが分かってきたんだ。」

 

「そうしたアイデアのいくつかを取り入れて、グロスターのハートプリー・カレッジの選手たちともっと実践的な仕事をしていく上で活用したんだ。そこでアカデミー・マネージャーになって、コーチング・バッジとUEFA“A”ライセンスを取得したよ。チームで成し遂げたこと-7年間で国内チャンピオンに3度-に関しては、かなり成功した時間だったけど、主に成功したと言えるのは選手個人に関してだね。」

 

「1人の子を挙げると、アブドゥル・マジード・ワリスは、カレッジ・プログラムからガーナ代表としてワールドカップでプレイするまでになった。彼は2017-18シーズンのチャンピオンズ・リーグでポルトの一員として私たちとアンフィールドで対戦したんだよ-彼が16歳の頃にはもう知っていたんだけど、あちこちのカウンシルのピッチでプレイしていたね!」

 

 

ジェンキンスは2012年後半にリヴァプールへ移籍しました。

では、過去7年間でティムの役割はどのように進化してきたのでしょう?そして普段の仕事はどのようなものなのでしょうか?

 

「当初は分析部門の責任者とU23チームのアナリストとして加わったんだけど、それらの年代のピッチでのコーチングの経験を積むようになると、かなり急速に発展していったね。」

 

「その役割はそれ以来、発展を続けていて、現在の私はU23チームの個人コーチをしている。つまり、基本的にはヘッドコーチのニール・クリッチリーをサポートする為にピッチに出ている訳だね。その中でグループを2つの小さなグループに分けて、具体的な作業を行うんだけど、エクササイズやセッションを行うという面で私が入っていくところだね-選手個人のニーズにあわせてデザインされた小さなグループワークなんだ。」

 

「試合当日は、通常はダッグアウトよりも高いところ、スタンドの後方やガントリーで試合を観ることになるね。試合の戦術的な概要を把握して、ラジオを使ってニールとそれを共有しようとするんだ。それかガントリーがダッグアウトの近くにある場合は、直接彼と話をする。彼が目にしているものとは少し異なる視点を彼に与えられるという訳さ。」

 

「だけど、仕事の主な任務は育成だよ。私たちには選手ごとに個別の育成計画があって、特定の分野に注目する為にビデオ作業やいくつかの統計を中心にそれぞれに計画を作成するのが-ニールや他のコーチたちと一緒にやっていく-私の仕事さ。それから、用意したものを彼らに提示して、トレーニング場での作業を始めて、試合での彼らを一定期間モニタリングしていくんだ。」

 

「期待しているのは、時間の経過と共にそうした分野が好転してくれたらってことだね。それと私たちが目立たせることができるのは、必ずしも技術的な問題だけじゃない。それは特定のタイプのフィニッシュかもしれないし、ヘディングのあるディフェンダーかもしれない。トランジションにおける特定の選手のリアクションやカウンター・プレスのやり方かもしれない。試合の中で躓いたり難しい場面にあった時にどう対処するかという点でのメンタリティかもしれないね。」

 

「例えば、ルイス・ロングスタッフが最近のウルヴズ戦でインサイドに入って、左足でクロスを蹴り、リアン・ブリュースターがそれを近距離からヘッドであわせたというのがあったけど、彼が私やニールと一緒にピッチで何百回もその動きを練習したものだったんだ。」

 

 

リヴァプールU23チームはシーズンの難しいスタートから順調に復調し、3つのコンペティションで戦い続けています-プレミア・リーグカップ、プレミア・リーグ・インターナショナルカップ、そしてプレミア・リーグ2では8月以降敗れたのは2度だけです。

 

しかし、クリッチリーとジェンキンスは選手個人の育成に熱心に取り組んでおり、ネコ・ウィリアムズやカーティス・ジョーンズ、ハーヴェイ・エリオットといったU23チームのレギュラーが、ファースト・チームのカラバオ・カップでの戦い-リヴァプール史上最年少となるスターティング11がクリスマス直前にアストン・ヴィラと勇敢に戦った末に敗退しています-や今月初めに行われたFAカップでジョーンズが決めたワンダーゴールによって勝利したエバートン戦において務めた役割に非常に満足しています。

 

「そうしたものを見るのは素晴らしいことだね。何より楽しいのは、選手たち自身が費やしたハードワークしたものが見られることだね。私たちは選手たちをサポートする為にここにいるんだけど、それは本当に私たちにかかっている訳じゃなくて、彼ら個人にかかっているんだ。」

 

「ネコなんかは本当に好例だと思う。ネコは成長していく過程でたくさんの失望に対処してきたんだ。彼はいつもメルウッドの現場にいた訳じゃないんだけど、彼は自身のプレイに熱心に取り組み続けているし、メンタリティを強く保っている。私たちは彼のことをサポートしただけだけど、彼は毎日ハードワークしているし、彼は成功するに値しているよ。」

 

「カーティスは今シーズンのU23のリーグでは、私たちにとって際立った存在だし、本当に才能のある子だね。特に今シーズンで彼が自分を適応させたやり方は素晴らしい。昨シーズンのU23では彼は苦労していたんだけど、今シーズンの彼のメンタリティはチームのキャプテンとして優れたものだよ。そして繰り返しになるけど、彼の観点から、そうしたことがメルウッドで認められているのを見るのは楽しいものだね。」

 

「ハーヴェイに関しては、ここにやって来てからの、彼のメンタリティには皆が本当に圧倒されたし、日々のトレーニングでの彼の取り組みや努力は-それがU23チームであろうとメルウッドであろうと-素晴らしいものだよ。彼は素晴らしい子だし、試合を本当に愛している。フットボールをするのが大好きなだけなんだ。」

 

「選手たちは皆、今週も様々な経験を積んでいる。何人かはメルウッドに行って、ファースト・チームと一緒にトレーニングをすることで恩恵を受けているし、私たちの選手たちはここで小さなグループで特定の取り組みをすることになるね。試合当日にこういったグループをまとめるんだ。実際に以前よりも多くの準備期間がある訳じゃないけど、私たちにとっては問題じゃないんだ。」

 

「そうだね。例えば、ハーヴェイがグループと一緒にトレーニングを行わずに試合でプレイすることもある。彼はメルウッドでファースト・チームと一緒に3日間取り組んだばかりだとしても、それは彼が必要とするものには最適なんだからね。」

 

アカデミーとファースト・チームの間の結びつきは、今年後半にカークビーに完成する新しいトレーニング施設で2つのオペレーションが統合されることで大幅に強化されますが、エリート育成コーチのヴィトール・マトスの影響により既存の関係は既に強固なものになっています。ヴィトール・マトスは昨年10月にポルトガルからやって来て以来、ジェンキンスに大きな感銘を与えています。

 

「ヴィトールの影響力は本当にポジティブなもので、2つのサイト間で作業を調整する上で助けになってくれているんだ。私たちがここの選手のことを話している時にその子たちがメルウッドにいる時に誰かが彼らに目を光らせ続けてくれることで、アカデミーで行っている取り組みを続けていることが分かるのは素晴らしいことだよ。」

 

「そうだね。例えば、セップ(ファンデンベルフ)がチームとのトレーニング・セッションに参加した場合、ヴィトールは20分間彼と一緒にディフェンス・テクニックやヘディングに取り組むことができるんだ。」

 

「その一方で、彼は私たちのトレーニング・セッションを見る為にここに来て、メルウッドで用いられているコンセプトのいくつかを再現するのを手伝ってくれたりもする。彼は2つのサイト間で働く選手たちのグループに本当に関心を持っていて、次のグループが誰が来るのかを見ているんだ。選手たちはある時点でローンに出て行く可能性もあるし、次のグループがメルウッドの環境で彼らの代わりに場所を掴む為の準備ができているはずだからね。」

 

ジェンキンスには彼の下でカークビーでフルタイムで働く3人のスタッフがいますが、8歳から18歳までのすべての年代を担当しています。

 

プライド・パークでの初期の頃やリーズでの倉庫とはまったく違っていますが、オックスフォード出身のジェンキンスはそれがどんなに主流になろうとも、フットボール分析は基本的に以前と同じままだと信じています。

 

「一定期間にわたって外国人監督の流入と共にやって来るものだけど、いろんな人が新しい用語を開発していくのをいつだって目にしていくことになるだろうね。だけど、一般的には試合はそれほど大きく変わってはいないんだ。分析はいつだって試合のコアな原理原則を理解することに立ち戻っていくものなのさ。」

 

リヴァプールFCで普段注目を集めない仕事をしている人たちにフォーカスを当てるシリーズ。
久々の今回はアカデミーで分析部門の責任者と個人コーチを兼任するティム・ジェンキンスです。

 

ProZoneというのは(私もそんなに詳しくはありませんが)世界中のフットボール、ラグビー、ホッケーやハンドボールのクラブやリーグにサービスが提供されているデータ分析ソフトですが、まさかその開発に携わった人がリヴァプールで仕事をしているとは思いませんでした(しかも何人も)

まぁ意外とさほど広くない業界のようですし、こういった人は結構いろんなクラブで仕事をしているのかもしれません。

 

フットボール・アナリティクスの重要性は年々増してきていますが、アカデミーにおいても選手の成長を助ける力となっていることはこの記事からも伺えます。
彼らの存在感は今後さらに増していくんでしょうね。

 

注)ご紹介した記事の中でプレミア・リーグ2の負け数に触れられていますが、実際にはもうちょっと負けているので、ライターのミスと思われます。

 

 

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