広告する日記

詩人・絵詞作家・内田麟太郎オフィシャルブログ

絵本「りすとかえると かぜのうた」 うえだまこと

2020年06月29日 19時16分58秒 | 日記

 BL出版 1600円+税

 川辺の木々と、川面を渡る風と光が、言葉の調べと色になったのでしょうか。きっとそうにちがいありません。
 木々も川も風と光になり、光は美しい色のストロークになり、木々と川を偲ばせます。そこにある以上にあったものを。たぶんボートが好きなうえださん(植田真)の印象に残っていた、木々や川面の輝きだったのでしょう。
 ふと「新印象派」とつぶやいていました。後期印象派の言葉は聞きますが、光の印象だけではなく、こころに残っている印象も感じさせた絵を、私はそう呼んでいました。むろん物語はあります。リスがボートで一緒に海に行こうとカエルをさそいにいきます。友だちの約束でしたから。でもカエルはカエルでリスを訪ね……。ふたりが出会ったときは夜がせまり、二人は空の色が変わっていくのを見つめます。それはまるで旅をしているようでした。
 物語絵本にありがちなリスとカエルのアップはありません。すべて遠景ですすみ、終わります。凡庸な編集者であれば「ここはカエルの表情が分かるように大きく描いてください」というでしょう。
 絵本は物語に寄りかからず、テーマーに寄りかからず、美しい言葉の調べを、光と風を描いていきます。絵本の新世代を感じさせる絵本です。

 ナンセンス絵本のテキストを仕上げ、某社へ送りました。1ページ1語の試みです。
  
コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 絵本「うみべのいす」 | トップ | なもねとは なもねや? »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
毎日、頑張っていますなあ (ひでちゃん)
2020-06-30 05:31:49
内田麟太郎さま
「遠景」の良さもありますよねえ。「凡庸な」・・なるほど。
1ページい語、おもしろそうですね。楽しみです。「ボートが好きな」はその昔、日本船舶振興会ですねえ。
遠景 (内田麟太郞)
2020-06-30 07:45:35
ひでちゃんさま
 近景は、花の八十代です。(^0^)
遠景 (木枯らしモンジャロウ)
2020-06-30 09:18:59
遠景だけで一貫させて絵本を創り上げるというのは、すごいセンスですね!!
詩とおなじような (内田麟太郎)
2020-06-30 10:02:18
木枯らしモンジャロウさま
 遠景だけで。
 今朝、散歩しながら植田さんの絵本を考えていたら「言い切らずして何かある」という言葉が浮かんできました。そのような世界でした。

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事