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 旅行中のエルサレムで、ポアロは不審な話し声を聞いた。

 「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ」

 その後、旅行中のボイントン一家の母親が死んでいるのが発見されて・・・という話。

 

 ポアロの中近東シリーズもののひとつ。

 いやー、これはおもしろかったです。あっという間に、一気に読んでしまいました。たぶんこれまでで、ポアロの長編で読み終わったの最短日数じゃないでしょうか。

 

 ごちゃごちゃしてなくてすっきりした設定が読みやすかったし、支配的な母親にがんじがらめに自由を奪われた家族という病的で異質なテーマに、いやがおうにも惹きつけられました。

 

 犯人もめちゃくちゃ意外な人物でしたね。みんながみんな怪しく見えるなか、これは完全にノーマークでしたわ。

 真相解明のシーンでも、ポアロがなかなかもったいぶってて、「ポアロ、ためるなぁ」とドキドキハラハラしました。いざ犯人が告げられると、「・・・は?・・・え・・・えっ? ・・・あの人なの!?」とまさに不意打ちをくらった気分になりました。

 ちょっと賛否両論分かれそうな犯人かもしれませんが、意外性という点では大成功ではないでしょうか。犯人の最期もちょっとビックリしましたからね。

 

 そしてエピローグは五年後に飛んで・・・というのも、ポアロではあんまりないパターンかも。しかし、絵に描いたような美しいハッピーエンドで読後も良く。

 これはポアロの長編シリーズの中でも、かなりおもしろく読めました。