Case 1. 突然の頭痛で来院した中年男性 9 治療終了 | ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」

ダブルカテーテルテクニックを用いて、

1本目のマイクロカテーテルからコイルを巻き、フレーミングを行いました。

フレーミングコイルの1ループが透視上動脈瘤から前脈絡叢動脈の分岐部にかかっていましたが、

他のコイルは概ね予定通り瘤の先端部付近でまとまる形となりました。

 

我々の業界ではこの状態を、1ループOK、とか、ハンドバック、とか呼びます。

これはどういう意味かというと、本来であれば重要血管である前脈絡叢動脈分岐部には、

異物であるコイルを近づけたくはありません。

しかしながら、そういった場所でも1ループくらいならOK、というのが1ループOKです。

また、ハンドバックというのは、ちょうどこの1ループOKの1ループが支えとなって、

いわばその部分がハンドバックの手提げ部分となって、本体部分にコイルがまとまる、という状態を指しています。

 

ちょうどこのフレーミングコイルはこのハンドバックの状態となっていたので、

それでOKとしました。

この形にするのにも何度もコイルのまき直しを要しましたし、

そもそも何度も破裂瘤の中でコイルの出し入れをすること自体も破裂のリスクだからです。

ベストではないが、それ以上は難しく、限りなくベストに近い状態がこのハンドバックだったので、OKとした。ということです。

 

そのまま次に2本目のコイルをもう1本のマイクロカテーテルから入れると、うまい具合に1本目のフレーミングコイルと絡み合って、

より安定化しているように見えました。

これで良しということでこの2本のコイルを切断し、さらに1本、この2本のコイルの形状を崩さないように、

非常に柔らかい種類のコイルを追加し、塞栓を終了しました。

 

この時点で動脈瘤内は基部と前脈絡叢動脈の分岐部こそ血流が残存しているものの、

破裂点と思われる瘤先端部から大部分はすでに血流が消え、閉塞していました。

 

20分程度そのまま観察し、造影で前脈絡叢動脈の血流が良好であることを確認して手術を終えました。

難しい治療だったが、なんとかなってよかった、というのがその時の感想でした。

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