Case 1. 突然の頭痛で来院した中年男性 10 暗転 | ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」

無事に治療を終えたかに見えた男性でしたが、

全身麻酔から覚めると、片側上下肢の麻痺が生じていました。

 

頭部MRIを確認すると、内包と呼ばれる領域に脳梗塞が生じており、

これは例の前脈絡叢動脈の栄養領域でした。

 

治療中にはしっかりとその血流が確認できていたはずの前脈絡叢動脈でしたが、

手術後、全身麻酔から離脱中に閉塞したものと考えられたのです。

 

MRIではMRAといって血管を撮像することもできますが、

前脈絡叢動脈の血流がほとんど認められない状態となっていました。

 

早期の再開通を期して、

急ぎ抗血小板剤を急速投与しましたが、残念ながら速やかな症状の改善は得られませんでした。

 

通常、こういった前脈絡叢動脈のような、脳の深部を上行していく穿通枝と呼ばれる類の血管は、

一旦閉塞がおきるとただちに脳梗塞を生じ、その後血流が改善したところで、出来てしまった脳梗塞自体が回復することは稀なのです。

 

この方の場合も結果としてはその後に前脈絡叢動脈は再開通したのですが、

脳梗塞の症状としての麻痺はしっかりと表れてしまいました。

 

原因はなんだったのかというと、

遅発性の血栓化と考えられました。

 

どういうことかというと、術中の段階では生じていなかった血栓が、

術後のあたりから塞栓したコイルの周りに生じ始め、前脈絡叢動脈の起始部を閉塞してしまったと考えられたのです。

 

いくら術中に開存を確認していても、

終わった後のタイミングで閉塞してしまったら、もはや投薬するくらいしか対応はできません。

 

再度カテーテルをあげて確認しにいったとしても、

大抵はその間にこういった細い血管の領域の梗塞は完成してしまうことが多いからです。

 

全身麻酔から覚めて、MRIを行ったときには、

すでに画像上もはっきりと脳梗塞が表れていました。

 

それでは、

この脳梗塞を防ぐ手立てはあったのでしょうか?

 

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