手術の主な目的は3つです。
一つは病理検体を取ることで診断をつけること、
二つ目は腫瘍を摘出することで周囲の脳への圧迫をなくすことです。
三つ目は、腫瘍を取りきることで再発をなくすことです。
一つ目と二つ目の目的を達成するのはそう難しいことではありません。
しかし、三つ目に関しては、これは腫瘍の性質にほぼ依存します。
腫瘍と脳の境界が明瞭であれば、
腫瘍を全摘出することも十分に期待できます。
しかし、
脳の中に腫瘍細胞が染み込んでいくようなものの場合、
これは実際に腫瘍が脳の中でどこまで広がっているか正確に把握するのが難しいため、
腫瘍の全摘出は極めて困難となります。
悪性脳腫瘍の場合、
造影剤を使用したMRI検査などで、腫瘍の本体部分や、ある程度の広がりまではわかるのですが、
細胞レベルでどの範囲にまで腫瘍が存在するかを術中に判断するのは現実的には正確には不可能です。
一応、5-ALAという物質を術前に患者さんに飲んでもらい、術中に特殊な光線(紫外線)をあてて、
可視化するというような技術もあるのですが、実際に使ってみた感想として、
ある程度の腫瘍の塊は赤く光って見えるものの、とても細胞レベルのサイズの腫瘍を可視化できるようなものではありません。
今回のBさんの腫瘍が脳に染み込んでいくようなタイプの極めて悪性度の高い腫瘍の場合、
この三つ目の目的を達成するのは現実的には困難ということになります。
診断をつけ、大部分の腫瘍を摘出することで、脳への圧迫症状を緩和することが目的となります。
腫瘍サイズが4-5センチ程度と大きかったのですが、
手術の予定時間は5時間程度だろうと予測されました。
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