case2: 悪性脳腫瘍と診断された40歳男性 5 | ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」

手術は全身麻酔の導入から始まります。

通常、総合病院では麻酔導入は麻酔科医師が担当するため、

脳外科医は麻酔導入に関わることはあまりありません。

 

麻酔導入の間、脳外科医は手術準備をしています。

 

悪性脳腫瘍の手術では脳そのものに切り込み、

腫瘍で侵されている脳の部位を必要十分な範囲で切除しなければなりません。

しかし、脳の深部は通常一様にクリーム色をしており、当然ながら部位を示すような標識はありません。

 

腫瘍の外観が明らかに脳と異質であれば良いのですが、見た目ではほとんど見分けがつかないこともしばしばあります。

つまり、術中の肉眼所見というのがあまり当てにならないことが多いのです。

 

術前の造影剤を使用した画像検査では腫瘍と脳の境界が見えていても、

手術中の肉眼所見ではその境界がわからない、ということが多いのです。

 

そこで、術中ナビゲーションという機器を用いることが今では一般的になっています。

しかし、この機械、導入にざっと1000~2000万はかかるような代物です。

どこの病院にでも常備されている、というわけではありません。

 

とはいえ、最近ではかなり導入されている施設は増えてきています。

少なくとも脳の悪性腫瘍手術を行うのであれば、あった方がいい機械です。

 

麻酔導入中、悪性脳腫瘍の手術の場合、我々脳外科医はこのナビゲーション機器のセッティングを行っていることが多いです。

手術計画の最終確認も同時に行うことができます。

 

患者さんに麻酔薬が導入され、気管挿管が終わり、人工呼吸器に接続された後にまず行うことは、

患者さんの体位のセッティングです。

 

いわゆる仰向けの、仰臥位の体位ならば最もシンプルです。

今回の患者さんの場合は腫瘍が頭の前方にあったので、この仰臥位で手術を行うことができます。

 

ただ、一方で、腫瘍が脳の後方にある場合にはそうはいきません。

腹臥位といって、うつぶせの体制にしなければなりません。

 

この体位取りの際に、同時に頭部の固定も行います。

 

頭部固定には通常、3本か4本のピンを頭皮にねじ込み、骨までピンを固定します。

要は、頭蓋骨にまで金属の杭を4本刺して、頭を手術台に固定するのです。

 

日本では杉田式と呼ばれる頭位固定フレームと、

あとは世界共通のメイフィールドという名前のフレームがあり、

この2種類のいずれかが導入されている施設がほとんどです。

 

頭位固定と体位取りが終わった後は、

ナビゲーション機器と頭位のレジストレーションを行います。

 

ナビゲーション機器に実際の頭部の位置を読み込ませるための作業です。

 

このレジストレーションが正確に終了すると、

ナビゲーション機器はポインターの先が頭部の、頭蓋内の、脳内の、どの位置にあるのか、

手術前に撮影した画像上で教えてくれるようになります。

 

ここまで準備が進むと、ようやく実際の手術へと駒を進めることになります。

 

 

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