case2: 悪性脳腫瘍と診断された40歳男性 7 | ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」

悪性神経膠腫の摘出は、ある意味ではシンプルです。

肉眼で腫瘍と正常脳の見分けがつきにくいので、基本的には画像を頼りに腫瘍部分を切除するしかありません。

 

つまり、術中ナビゲーションシステムを利用し、手術開始時に決めた範囲の脳を腫瘍ごと摘出するような形です。

具体的には、まず脳の表面が見えた時点で、ナビゲーションシステムを利用し、

脳の摘出範囲の四隅などにマーカーとなる何かを刺していきます。

 

これをフェンスポストと呼んでいますが、

腫瘍が存在する深さに長さを合わせたチューブなどを腫瘍を囲うように刺していくのです。

 

この作業が終わった後は、このフェンスの間を繋げるように脳を切断していきます。

そうしてブロックごと脳と腫瘍を摘出します。

 

この方法で腫瘍が丸ごと摘出できればよいのですが、

これを行うためには一つの前提が必要になります。

 

それは、切除する脳の範囲にeloquent areaが含まれていない、もしくは含まれていても既に症状が完成してしまっている場合です。

 

eloquent areaとは、障害することで麻痺や失語などのはっきりとした神経症状を起こしてしまう脳の領域です。

たとえば、運動野などがこれにあたります。

 

Bさんの場合は、幸い、腫瘍が前頭前野にありましたので、

eloquent areaにはかかっていなかったため、この方法で腫瘍を脳ごと一塊に摘出することができました。

 

もちろん、前頭前野にも脳の機能はあります。

Bさんの場合はそこに腫瘍ができたことによって、注意障害や遂行障害など、様々な高次脳機能障害が起きていました。

 

したがって、この部位は切除しても問題がない脳の領域、ということではないのですが、

麻痺や失語、視野障害をきたすようなeloquent areaと比べると、切除しても症状が日常生活に与える影響が少ないということはできます。

 

今回の場合は腫瘍が大きく、すでにかなり強い高次脳機能障害が表面化していたため、

腫瘍を若干周囲の脳ごと摘出しても新しい症状はでないと見込みました。

 

摘出は予定通りに終えることができました。

 

 

 

 

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