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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

9/13(木)ロシア国立交響楽団/西本智実/豪放で抒情的ロシアン・サウンドでチャイコフスキーの交響曲第5番・第6番「悲愴」

2018年09月13日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
スヴェトラーノフ記念 ロシア国立交響楽団 来日公演2018
The State Academic Symphony Orchestra of Russia "Evgeny Svetlanov" Japan Tour 2018


2018年9月13日(木)19:00〜 サントリーホール S席 2階 LB2列 8番 12,000円
指 揮:西本智実
管弦楽:ロシア国立交響楽団
【曲目】
チャイコフスキー:交響曲 第5番 ホ短調 作品64
チャイコフスキー:交響曲 第6番 ロ短調 作品74「悲愴」
《アンコール》
 チャイコフスキー:バレエ音楽『白鳥の湖』より「マズルカ」

 1936年に設立されたロシアの名門オーケストラ、「スヴェトラーノフ記念 ロシア国立交響楽団」が来日ツアーを行った。全国で14公演を行う。このオーケストラは、かつてはソヴィエト国立交響楽団と呼ばれていたもので、エフゲニー・スヴェトラーノフが音楽監督を務めていた時期に世界に名だたるオーケストラへと変貌を遂げた。そのため「スヴェトラーノフ交響楽団」などと呼ばれることもある。ロシアのオーケストラの名称は似たようなものがあり、日本語への翻訳のしにくさもあるようで、紛らわしくなっている。昨年2017年11月に来日して私も聴きに行った「ロシア国立交響楽団《シンフォニック・カペレ》」とは別団体である。
 今回の来日ツアーには指揮者は2名同行しているが、本日は2010〜2011年のシーズンに首席客演指揮者を務めたことがある西本智実さんである。ロシアに留学した後、ロシアを中心としたヨーロッパ各国で指揮者として幅広く活躍しているのはご存じの通り。日本でも2012年から日本フィルハーモニー交響楽団のミュージック・パートナーというポストに就き、年に一度は日本フィルを振っている。他にも、彼女のために作られたイルミナートフィルハーモニーオーケストラの芸術監督兼首席指揮者に就任し、定期的に公演を行っている。録音(CD)や映像素材(DVD)も多く、テレビ番組やCMにも出演したりして、活躍の幅は広い。本日のサントリーホールの公演では、得意のチャイコフスキーを振るということだったので、久し振りにロシアのオーケストラと西本さんの組み合わせで聴いてみたくなった。
 西本さんはその経歴を見ると分かるように、ロシアやヨーロッパで15年間以上にわたって数多くのオーケストラに招聘されている事実から見ても、海外での評価は高いようである。一方で日本国内においてはやや変わったポジションに受け入れられているようである。ヨーロッパ各地のオーケストラの来日公演に指揮者として同行するケースが多く、クラシック音楽業界ではかなり良い仕事をし続けているのだが、クラヲタ系の人たちにはあまり評判は良くないようである。私も10年以上前に聴いた時は、とくに感銘も受けなかったのだが、先日(2018年7月14日)、日本フィルの「横浜定期演奏会」で聴いたラフマニノフはけっこう良かった。ヨーロッパの第一線で15年間もキャリアを重ねているのには、やはりそれなりの実力は備わっているはず。だから、今日も期待して来たというわけだ。

 ところで西本さんは、誰もが認めることだと思うが、美人女性指揮者である。しかも日本から世界に飛び出して国際的に活躍しているし、テレビ等のマスコミにも採り上げられることが多いので、一般的な知名度が高く、とても人気がある。やっていることは純然たるクラシック音楽の正統派の指揮なのであるから、男性ファンが多いのかと思えば、それがまったくの逆。日本フィルの時もそうだったが、今回のロシア国立交響楽団のコンサートでも、圧倒的に女性ファンが多く来場している。いつものオーケストラのコンサートとは全然違う男女比なのである。2階席から見るとホールの全体が見渡せるのでよく分かるのだが、1階のセンターブロック前方はほとんど着飾った中高年の女性客が座っている。P席にはオペラグラスを持った女性客の姿も見られる。西本さんの「男装の麗人」風のタカラヅカ的な容姿に惹かれるのは分かるが、どうもいつも見かけられるクラシック音楽ファンとは雰囲気の異なる女性達が多く集まっている。だからといって、マナーを守って聴いているだけなので、何も問題はないのではあるが・・・・。いつものクラシック音楽ファン(還暦過ぎの男性が圧倒的に多い)が少なく、知った顔ぶれの人たちがまったく見かけられないというのも不思議な現象なのである。

 さて肝心の演奏の方について。ロシアのオーケストラといえば、荒々しく野性的で馬力があるという面と、甘美なロマンティシズムが共存としているようなイメージがあるが、このロシア国立交響楽団もご多分にもれず、そんな雰囲気が漂っている。演奏はあまり緻密とはいえず、荒々しいというか、雑なところもあるようだ。弦楽のアンサンブルは強奏の際はガシガシと荒い音を出すが、金管にも負けない馬力はある。木管や金管は縦の線が合わずに、フレーズのアタマがバタバタしたりもする。アンサンブルは今ひとつだが、それぞれのパートはなかなか味わいがある。質感も良いし音量も豊かに堂々と鳴らせる。こういったところは、長い伝統も手伝っているところかもしれない。打楽器はかなり思い切って打ち鳴らしている。ティンパニや太鼓が地響きのように轟くと、いかにもロシアのオーケストラといった風情があって良い。オーケストラの演奏は85点といったところだろう。
 一方、西本さんの指揮はねちっこい。今回のチャイコフスキーの交響曲第5番と第6番「悲愴」は、指揮棒を持たず、両手を巧みに動かして、オーケストラに細やかなニュアンスを伝えている。そこでは、常に旋律を大きく歌わせている。数小節単位のフレージングをレガートを効かせて丸く膨らませる。強弱のコントラストも鮮やかに描き出しているし、全合奏は迫力ある押し出しが見事だし、甘美なロマンティシズムはねちっこく美しい。このような西本さんの音楽の描き方は、そのロシア的なサウンドの中から荒々しさを取り除き、しなやかで繊細な面を引き出していた。余計な先入観を取り除いて考えれば、普通に聴きやすく美しいチャイコフスキーであったといえそうだ。私が期待していたものとはちょっと違っていたようだが、これはこれで素敵な演奏だったのだと思う。

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