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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

9/8(土)東京フィル/響きの森/オール・ベートーヴェン・プロ/吉田 南、渾身のVn協奏曲/コバケンの交響曲第7番は20世紀の巨匠風

2018年09月08日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
東京フィルハーモニー交響楽団 響きの森クラシック・シリーズ Vol.65
フレッシュ名曲コンサート

2018年9月8日(土)15:00〜 文京シビックホール A席 1階 2列 23番 3,700円(セット券割引)
指揮:小林研一郎
ヴァイオリン:吉田 南*
管弦楽:東京フィルハーモニー管弦楽団
【曲目】
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品65*
《アンコール》
 イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番 作品27-1より第3楽章
ベートーヴェン:交響曲 第7番 イ長調 作品92
《アンコール》
 アイルランド民謡:ダニーボーイ

 東京フィルハーモニー交響楽団が文京シビックホールで開催する「響きの森クラシック・シリーズ」の Vol.65を聴く。このシリーズは東京都文京区と公益財団法人文京アカデミーの主催だが、今回は公益財団法人東京都歴史文化財団(東京文化会館)との共催で「フレッシュ名曲コンサート」シリーズを兼ねる。そのため、ゲスト出演する若手の演奏家は、ヴァイオリンの吉田 南さん。奈良県出身で現在20歳。2014年の「第83回日本音楽コンクール」で優勝、2016年の「モントリオール国際音楽コンクール」で最年少参加で第3位に入賞するなど、期待の若手のひとりである。

 吉田さんの演奏を聴くのは「日本音楽コンクール」の時以来だか、この4年間の成長は著しい。荒削りのところがなくなり、丁寧で緻密な構成力を持ちつつ、スケール感が大幅にアップして、実に堂々たる演奏になっていた。音の線が太く、ひ弱さがなくて質感も濃厚に感じられる。音量も豊かで、押し出しも強い。なかなか見事な演奏だ。
 おそらくはコバケンさんが指揮する時の常で、テンポは遅め。しかもフレージングの合間にタメが入る重厚な造形だ。ちょっともどかしく感じるテンポ感なので、ソリストとしてははやる気持ちを抑えながらの演奏になるのではないかと、いらぬ心配をしてしまうところだ。もっともテンポが遅い分だけ、吉田さんのヴァイオリンはひとつひとつの音符にしっかりと音が乗っていて、造形がハッキリとしているし、大きな主題も雄大に歌わせることができていた。全体が大らかで力強い印象もある。要するに押し出しが強いのである。一方、カデンツァではテンポ感が少し速めになり勢いと疾走感が生まれる。速いパッセージ部分では安定した技巧性を発揮していたし、濃厚なサウンドでスケールの大きなソロを聴かせてくれた。
 アンコールはイザイの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番」より第3楽章。たっぷりと聴かせることのできる豊かな表現力を持ち、濃厚なサウンドと美しい重音とレガートが印象に残る。思いの外、大人っぽい演奏をするのでビックリした。吉田さんの弾くイザイをもっと聴いてみたくなった。

 後半はベートーヴェンの「交響曲 第7番」。コバケンさんの音楽は、最近特に感じるのだが、テンポが遅い。「リズムの権化」とも呼ばれるこの曲に対して、テンポが遅めだとリズム感のノリが悪くなってしまい、聴いていてもいささかダルイ感じがする。第1楽章などは、序奏も遅めで、堂々たる佇まいを見せているといえばその通りだが、鈍重な感は否めない。ソナタ形式の本体に入っても、遅めのままで、これはさすがにVivaceとはいえないのではないか? 逆にこの遅さの中であればこそシンフォニックな響きはしっかりとした造形を持っている。東京フィルも手慣れたもので、濃厚で質感もたっぷりのサウンドを轟かせていた。
 ただ、やはり言えることは、この曲は遅めのテンポで、フレーズの間にタメを入れたりすると、リズム感がおかしくなってしまい、独特の熱狂的な雰囲気が出なくなってしまう。私の個人的な好みとしては、高揚するリズムと熱狂的なエネルギーが欲しいので、許売るコバケンさんの指揮はまったくいただけない。また好みは別としても、最近の趨勢とてもこの曲の解釈はもっと速いのが一般的で、前のめり気味のリズム感で疾走するように、熱狂するようにエネルギーを発散させていくのが主流だと思う。コバケンさんの演奏を聴いていると、どうしても20世紀後半の巨匠たち時代の音楽を思い出してしまうのである。

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