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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

10/28(日)【速報】第87回日本音楽コンクール本選会《バイオリン部門》優勝:荒井里桜、 2位:佐々木つくし、3位:福田麻子、 入選:関 朋岳という結果に

2018年10月28日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
第87回 日本音楽コンクール 本選会《バイオリン部門》
THE 87th MUSIC COMPETITION OF JAPAN "VIOLIN"


2018年10月28日(日)15:00~ 東京オペラシティコンサートホール S席 1階 4列(2列目)15番 3,150円(会員割引)
指 揮:高関 健
管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

 昨日に引き続き、「第87回 日本音楽コンクール 本選会《バイオリン部門》」を聴く。最近は毎年聴いているが、このところ高校生の優勝が続いており、コンクール年代も若年化が進んでいるように感じられていた。今年はどうなるかと興味津々であった。今年のバイオリン部門には110名の応募があり、棄権3名を除く107名が第1予選(8月27日〜29日/トッパンホール)に参加、内31名が通過した。第2予選(8月30日・31日/トッパンホール)を通過したのは12名。第3予選(9月1日/トッパンホール)で本選に進む4名が選出された。4名の内3名は大学生、高校生は1名である。
 今日の席は昨日とほとんど同じ、2列目のセンターである。あとひとつかふたつ左寄りだとソリストの正面になるのだが、バイオリン部門の本選会ではソリストの正面位置にNHKのテレビ・カメラが設置されるため1〜2列目のその位置の席は販売されていなかった。
 さてこの聴く席の位置については色々な考え方もあろうが、ことヴァイオリン協奏曲に関してはソリストに近い方が良いと考えている。演奏者のナマの音を最も近い位置で聴けるので、微妙な音色の変化や細やかなニュアンスの表現もハッキリと聴き取れるし、弦の振動するエネルギーもリアルに伝わって来るからだ。いつも気になっていることだが、2階センターの審査員席はステージからかなり遠く、しかも響きの良い東京オペラシティコンサートホールでは、独奏ヴァイオリンとオーケストラの音が渾然一体になってしまい、奏者の意志がどれくらい伝わるものなのか。心配してしまう。もちろん、通常のコンサートでも2階のセンターはS席機になるので、そこでの聞こえ方で評価すべきという考え方もある。正解はないことだと思うが・・・・。
 それでは、演奏順に簡単にレビューしてみよう。

●荒井里桜(あらいりお/1999年生まれ/東京藝術大学2年在学中)
【曲目】ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
 荒井さんは昨年2017年の「第15回 東京音楽コンクール・弦楽部門」で優勝している。その時の本選会でチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」と、今年の1月に開催された「第15回 東京音楽コンクール 優勝者コンサート」でメンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲」を聴いている。いずれもヴァイオリン協奏曲の名曲中の名曲であったが、コンクールでのチャイコフスキーでは押し出しの強い演奏をし、コンサートでのメンデルスゾーンは端正な演奏をしていたと記憶している。今日はコンクールなので・・・やはり前者のタイプの演奏になっていた。
 第1楽章、主題提示の後ヴァイオリンが入って来るところからガツンとしたインパクトを放つ。立ち上がりの鋭いボウイングで、くっきり明瞭な音を出し、おそらくは音量を出すためにかなり強く弾いている(第1楽章が終わったところでチューニングし直しているくらい)。そのため、ひとつひとつの音が明瞭で、しかもキレが良い。明らかにコンクール用の演奏スタイルだ。遠くの審査員席まで、思いを届けたい、という意志の強さが感じられる。それでいて、旋律には豊かにニュアンスが込められていてよく歌っている。それは第2楽章に現れていて、静かでロマンティックな主題を自由度も高くたっぷりと歌わせながら、結構音量も出している。この辺りはかなり心得ている感じ。第3楽章は再びインパクトの強い演奏でグイグイと押し出して来る。リズム感も良いが、自由度も高く、オーケストラと合わなくなるところも散見されたが、自身の強い意志で前へ前へと進んでいく。オーケストラに迎合せず小さくまとまらないその姿勢が素晴らしい。協奏曲の魅力をよく分かっているようだ。

●福田麻子(ふくだあさこ/1996年生まれ/東京音楽大学4年・特別奨学生として在学中)
【曲目】バルトーク:ヴァイオリン協奏曲 第2番
 福田さんは選曲がマニアックというか、評価の難しい曲を選んでしまったような気がする。審査員の先生方は専門家だから良いが、私などはこれだけオーケストラのコンサートを聴いていても、バルトークの「ヴァイオリン協奏曲 第2番」を聴く機会はほとんどない。つまり曲自体をよく知らないわけで・・・・。その前提でのお話になるが、福田さんの演奏はなかなか素晴らしい。まず音が柔らかく艶やかで、低音から高音まで均質に安定している。この曲は旋律がどちらへ進んでいくのか分からないような不思議な曲想で、様々に変化する旋律やリズムに対して、安定した音で演奏するというのは高度な技術だと思う。均質な音質で演奏すればこそ、楽曲自体の多様性、多彩な造型を鮮やかに表現出来るのではないだろうか。

●関 朋岳(せきともたか/1998年生まれ/東京音楽大学2年・特別奨学生として在学中)
【曲目】ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
 関さんは、今年2018年の「第16回 東京音楽コンクール・弦楽部門」の優勝者。つい2ヶ月前のことだ。このわずかな期間に日本のメジャー音楽コンクールに連続してファイナリストになるということは、実力はもちろんのことだが、調子も良く、乗っているということだろう。
 奇しくも、同じ「東京音コン」の優勝者である荒井さんと同じ曲目となった。関さんの演奏は、前回の時も感じたのだが、ちょっとクセがある。深みのある表現を追い求めているようで、ダイナミックレンジが広い。弱音の繊細さから、強音のキーンと張り詰めた感じまで、音量の幅が広いのである。そのため、弱音時にはオーケストラに飲み込まれてしまってよく聞こえない。また、装飾的な速いパッセージで急に音量が下がってしまう。これは2列目の正面で聴いていてもそうなのだから、遠い2階の審査員席までは届かないのではないだろうか。表現力は豊かだと思うのだが、それが聴く側に伝わらなければ、非常にもったいない。
 また、音質が硬質で尖っている印象で、個人的な好みでいうと、聴いていても心にグサグサ刺さってくる感じで、あまり心地よくない。

●佐々木つくし(ささきつくし/2000年生まれ/東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校3年在学中)
【曲目】チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
 佐々木さんは今回のファイナリストの中でただ一人の高校生。しかし、驚くべきほど雄弁で鮮やかなチャイコフスキーを披露してくれた。教科書的なレベルを超えて、この曲のスタンダードの理想像に近い演奏ではなかっただろうか。速めのテンポでも揺るぎない技巧を持ち、丸みを帯びた艶やかな音色で、聴く者の心を共鳴させる。旋律は細やかに歌わせていて、瞬間瞬間に鮮やかな音楽性を見せ、全体の造型もシッカリしているので、聴いていて安心感もあり、ここぞというところで感動的な爆発を見せる。何より良いのは、「弾ける」「弾かされている」感がなく、この名曲を完全にモノにしていることだ。今これだけの演奏が出来るのだから、将来が楽しみな逸材だと思う。

 さて、4名の演奏を聴いた上での感想は、今回は4名とも甲乙つけがたく、誰が優勝してもおかしくないし、おそらくは評価点は僅差ではないかと・・・そんな風に感じた。それでも、個人的な好みで順位を付けてみたりもしたのだが、ピアノと違って、ヴァイオリンはほぼ的中。ただ、何となく感じたのは、「東京音楽コンクール」と「日本音楽コンクール」では評価の基準が違うのではないかということ。まあ、主催者が違うのだから当たり前のことではあるが・・・・。
 というわけで、最終結果は以下の通りとなった。

《第87回日本音楽コンクール バイオリン部門本選結果》
  1位  荒井里桜(画像)
  2位  佐々木つくし
  3位  福田麻子
  入選 関 朋岳
  ※岩谷賞(聴衆賞)佐々木つくし


 最後にひとつ付け加えておきたい。本日の本選会でのオーケストラの演奏についてだが、高関 健さんの指揮が実に素晴らしく、教育者でもあるわけで、ソリストを見つめ、彼らに寄り添うように真剣な眼差しでオーケストラをコントロールしていたのが印象的だった。高関さんは東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の常任指揮者でもあるので、オーケストラ・ドライブも見事なもので、どの演奏も素晴らしかった。ファイナリストの4名も、この指揮者&オーケストラと共演できたことだけでも、大変有意義で幸せなことだったと思われる。

※筆者注:本文中、「バイオリン」と「ヴァイオリン」の表記が混在していますが、「日本音楽コンクール」で使用されている正式名称が「バイオリン部門」となっており、名称を記載する箇所だけは「バイオリン」表記を採用しました。

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