7月中旬のことですが、パナソニック 汐留ミュージアムで開催されている『没後50年 河井寬次郎展-過去が咲いてゐる今、未来の蕾で一杯な今-』を鑑賞してきました。

 

 

陶芸家として、また民芸運動の中心メンバーとしても知られている河井寬次郎の、没後50年を記念した展覧会です。寬次郎については約7年半前に、日本橋高島屋で開催された『河井寛次郎 生命の歓喜』を見ていますが、そのときに、作品と本人の人となりに感動した思い出があります。

 

寛次郎は陶芸家として著名です。東京高等工業学校窯業科や京都市立陶磁器試験場で基礎的な知識や技術をしっかりと学び、美しい作品を数多く残しています。本展でも山口大学で発見された初期のモノを含め、多くの作品が展示され、寛次郎の美の世界を堪能することができます。

 

文化勲章や人間国宝などの勲章を固辞し、在野の一陶工として晩年まで制作に没頭した寛次郎。世界的な展覧会への出品にも関心を示さなかったようですが、コレクターの川勝堅一がパリ万博やミラノ・トリエンナーレ国際工芸展に勝手に出品すると、グランプリを受賞。「賞を取ったのは作品」と、どこまでいっても自然体を貫きます。

 

パナソニックの創業者である松下幸之助が寛次郎を文化勲章に推挙し、拒否されたもののそのときに渡したトランジスタラジオ(と同じ型のもの)なども展示されていました。このときのエピソードも芸術家の粋のようなものを感じます。

 

また、木彫りの作品やデザインした家具、キセルなども展示されており、芸や美、創作に対する意欲の高さが伝わってきました。飼っていた猫がいなくなって悲しんでいた娘さんのために、彫った猫の木彫りが展示されていましたが、これが可愛いんです。

 

後半では、寛次郎の短い詩のような文章が紹介されていますが、非常に味わい深く、胸に染み入るような感覚を受けました。まったく無駄がなく、読み手にストレートに訴えかけてくるようです。多芸多才とはこういう人物のことを言うのでしょう。

 

最後に、生い立ちから晩年を写真パネルで振り返るコーナーがありましたが、いい年の取り方をしていったことがわかります。民芸運動の仲間とは頻繁にコミュニケーションを取っていたこと、家族を大切にしていたことも伝わりました。温かい人柄が伝わり、見る側も幸せな気分にさせてくれます。

 

興味深い展覧会でした。

 


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