太田記念美術館で開催されている、『小原古邨』の前期展示を鑑賞してきました。

 

 

太田は久しぶりでしたね。さて、今回の展示テーマは小原古邨。明治期から昭和にかけて活躍した版画家です。詳しくは知りませんでしたが、海外では比較的著名のようですね。

 

じっくりと鑑賞するのは初めてかもしれませんが、まず全体として印象に残ったのは「本当に木版画なのか…」と思ったことです。対象物が非常に美しく、かつリアルに描かれています。動物の毛並みなども非常に細かく、その繊細な作風に驚かされました。まるで油彩画です。

 

しかしながら、単に動物が精緻に描かれているだけでなく、非常に愛嬌があり、どこか愛らしい感じで写し出されていることですね。おそらく、古邨自身が動物に対して愛情と親しみを感じながら描いていただろうことが伝わってきます。

 

『踊る狐』など、実際にキツネはこんな動きはしないでしょうが、でも本当に踊っているように感じ癒されますね。『猿と蜂』の猿の表情もなんともいえずかわいらしいです。また、植物でも、『目白に柿』の柿の色合いが美しかったですね。

 

ほとんどが花鳥画でしたが、風景画も数は少ないものの展示されていました。こちらも味わい深かったですね。木版画といえば墨で下絵を書き、彫師や摺師に指示をするものというのが一般的ですが、古邨は絹本に肉筆で描き、それを湿版写真で撮影したものを用いていたようですね。

 

実際に下絵も展示されていましたが、こちらがまた非常に素晴らしい出来栄えで、日本画家としても高い技術を持っていたことがわかりました。彫師や摺師にとっても高いスキルが求められることになります。それがよりリアルな木版画作品につながるわけですが、こうして、極めて質の高い芸術作品が生み出されたわけですね。

 

『月夜の桜』のように、下絵と出来上がったものでは色がまったく違うものもありました。こうして併せて見ると、版元の意向なども感じて興味深いですよね。

 

歴史に埋もれていたものの、近年注目を集めている画家の作品を集めて展示した今回の展覧会。美術館の意欲を感じます。人気の芸術家ばかりでなく、各美術館にはもっとこうした試みに取り組んでほしいなあ、と思いますね。名品をじっくりと堪能させていただきました。

 

可能なら、後期にも足を運びたいですね。2年ぶりに年間パスポートも購入したいですし。

 


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