わたくしが今、もっとも注目している人物が2月に真打になられた、講談師の神田伯山さんです。

 

以前、たまたま伯山さん(当時は松之丞さんでしたが)がパーソナリティを務められているラジオを聞いたのですが、毒舌まみれの内容が痛快だったこともあり、興味を持ちました。

 

注目の講談師ということでいろいろなメディアで姿を見かけるようになったほか、動画サイトなどで講談を聞く機会もあり、その語り口の妙に惹かれ、すっかりファンとなりました。

 

そんな伯山さんが開設しているチャンネル「神田伯山ティービィー」。真打昇進の披露興行では、楽屋裏の様子などを配信するなどのっけからサービス精神旺盛です。3月中旬から、変わってアップされたのが講談の連続読み「畦倉重四郎」です。

 

 

1月に、5日間ぶっ続けで全19席完全通し公演されたもの。それを1席ずつ、連日アップするという気前の良さ。平日に毎日通わなければ話を追うことはできません。しかも「日本一チケットの取れない講談師」といわれるだけに、生で目にするのは極めて難しいのが実情。家に居ながらにして楽しめるというぜいたくさ。感謝しかありません。

 

内容はいわゆる大岡政談の一つ。主人公は、かの有名な大岡越前守をして「こいつだけは許せない」といわしめた、稀代の悪党・畦倉重四郎。次々と人を殺めていき、最後に服罪に至るまでのドラマチックなストーリーが、100年に一人の天才によって情感たっぷりに語られていきます。

 

殺気や凄み、柔らかさ。など、一人ひとりの登場人物について声色を変え、場面場面がまるで映像で見ているかのように、ありありと情景が浮かんでくるところがさすがです。講談と伯山さん個人の魅力、じっくりと堪能させていただきました。

 

伯山さんについては、以前から「声質がいいなあ」と思っていました。当たり前ですが活舌も抜群で、とにかく「聞きやすい」んですね。講談師といえば女性というイメージがありますが、例えばドスの効いた声などは、高音の女性の声より男性の方がいいですね(決して女性の講談師がいけない、というわけではありません。念のため)。

 

伯山さんご自身は、芸に対して非常にストイックに向き合われているとのこと。まだ30代後半ですし、今後の精進によっては、爆笑問題の太田光さんがいわれるように「未来の人間国宝」も夢ではないと思われます。講談というジャンルの再興・隆盛の担い手として、今後が楽しみですね。

 

 


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