駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

臨床医は職人

2020年02月24日 | 医療

                

 

 秘かな小さな工夫の積み重ね。医師が職人に入るかどうかわからないが、診察は明らかに一つの技術で、経験を重ねいつの間にか細かい工夫をしている。内科医にはありふれた病気と思われている風邪の診療に研鑽の結果が出るように思う。微妙な違いが殆どだから独りよがりの部分もあるだろうが、患者さんの個性を診て指導や薬を変えている。

 患者さんにそれが分かるかどうか疑問だが、繰り返し同じ患者さんを見る機会に恵まれている市井の医者を続けているうちにそうした工夫を凝らすのが習い性となった。

 外から病原体が感染して起こる病気の中では上気道感染の所謂風邪が一番数が多い。風邪の八割ほどがウイルス(細かく分ければ200種類ほど)によるのだが、その経過には一定のパターンと個体差がある。漢方では個体差を重視するのだが、漢方を習わなくても数多く見ているうちに若くがっしりした男性と華奢なおばあさんでは薬の配合を変えた方が良いのが分かってくる。

 感染症(感染症には限らないが)に対して身体は個体を守ろうと防御反応を起こすのだが、それが却って身体を痛めつけることもあるので、その辺りを勘案見極めてさじ加減が必要になるのだ。そのためにどうしても臨床ではある程度の数の経験が必要になる。才能の多寡もあるが、最低でも五、六年、普通は十年の臨床経験がないと一人前になれない。ある程度教えることも可能だが、それはできちんとした経験にならない。優れた指導者で伸びることはあっても時間を短縮経験を端折ることは難しい。そうかといって経験が長ければ長い方が良いともいえない、五感は衰えるし脳力は落ちる。職人仕事(人生)の難しい所だ。

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