生物の大量絶滅

 生物の大量絶滅といえば、6500万年前中生代白亜紀末期に絶滅した恐竜を思いだす。あの時はユカタン半島に落ちた小惑星の衝突によるものとされている。

 1977年、ウォルター・アルヴァレス(米国地質学者)がイタリアにおいて、の地層でK-Pg境界を発見。K-Pg境界は世界各地でその後発見されるが、この地層を境に恐竜を始めとして発見される化石の種類が激変することが分かった。また、K-Pg境界では多量のイリジウムが含まれ、小惑星の衝突によってK-T層ができたという説が浮上した。

 1978年にグレン・ペンフィールドがユカタン半島で発見したクレーターがK-T層を形成したときに出来た小惑星の衝突跡ではないかという仮説を発表。当時、ペンフィールドはメキシコ国営石油で油田発見のため地磁気の調査を行っていた。ペンフィールドは磁気データが綺麗な弧を描いていることに気付いた。

 そこで彼は、ユカタン半島付近の重力分布データを地図に起こした。するとチクシュルーブ(Chicxulub)の村を中心として円を描いていることに気付く。それは紛れもなく白亜紀末、約6550万年前に落下した小惑星のクレーターであった。

 大量絶滅はこのときだけでなく、過去に何度も起きておりこれをもとに古生代・中生代・新生代などの時代区分がされている。特に規模の大きな5回の絶滅イベントをまとめて、ビッグファイブと呼ぶことがある。しかし、大量絶滅はこれだけではなかった...。

 1160万年前の謎の大量絶滅

 今回、JAMSTEC(海洋研究開発機構)などの研究チームは、約1160万年前、海に巨大な隕石(いんせき)が衝突したとみられる痕跡を発見し、11月20日付の英科学誌に発表した。ちょうど同じ時期に生物が大量絶滅したことが分かっており、この隕石衝突が原因だった可能性があるという。

 チームは太平洋の南鳥島の沖合で、レアアースを含む泥がどうできたのかを調べていたところ、水深約5600メートルの1100万年前ごろの地層に、オスミウムという貴金属が極めて高い濃度で含まれているのを見つけた。イリジウムなどもあり、同位体の比などから、もともと宇宙にあったものが隕石として落下して降り積もったと推定した。

 地球では過去に何度も生物の大量絶滅があり、特に大きな5回は「ビッグファイブ」と呼ばれる。1160万年前の絶滅はこの5回には含まれないが、過去3億年に11回あった絶滅の一つで、原因が分かっていなかった。チームは、今回見つかった隕石衝突がこの絶滅を引き起こした可能性があるとみている。

 地上ではクレーターが見つかっておらず、隕石は海に落ちたとみられる。海洋機構の野崎達生グループリーダー代理は「複数の地点の地層を調べて衝突の規模や場所、地球環境への影響などを解明したい」と話した。

 過去11回の大量絶滅の年代と原因
 主な大量絶滅の年代と推定される原因は次のとおりである。

 2億5980万年前 火山活動など 2億5220万年前 火山活動など 2億1500万年前 隕石衝突 2億130万年前 火山活動など 1億8270万年前 火山活動など 1億4500万年前 隕石衝突 1億1600万年前 火山活動など 9420万年前 火山活動など 6600万年前 隕石衝突、火山活動など(恐竜絶滅を引き起こした) 3600万年前 隕石衝突 1160万年前 隕石衝突?

 過去の大量絶滅とは何か?

 大量絶滅とは、ある時期に多種類の生物が同時に絶滅すること。大絶滅ともよばれる。顕生代において起こった、特に規模の大きな5回の絶滅イベント(後述)をまとめて、ビッグファイブと呼ぶことがある。

 大量絶滅は、地質時代において幾度か見られる現象である。そもそも地質時代の「代」や「紀」の区分は、化石として発見される動物相の相違によるものである。原生代・古生代・中生代・新生代の「代」の時代区分は、大量絶滅により従来の動物の多くが絶滅し、新たな動物が発生したことによる区分である。「紀」の時代区分は「代」との比較では動物相の相違は小さいが、大量絶滅による場合もある。

 多細胞生物が現れたエディアカラン以降、5度の大量絶滅(オルドビス紀末(O-S境界)、デボン紀末(F-F境界)、ペルム紀末(P-T境界)、三畳紀末(T-J境界)、白亜紀末(K-Pg境界))と、それよりは若干規模の小さい絶滅が数度あったとされる。大量絶滅の原因については、K-Pg境界のように隕石や彗星などの天体の衝突説が有力視されている事件や、P-T境界のように超大陸の形成と分裂に際する大規模な火山活動による環境変化(プルームテクトニクスも参照のこと)が有力視されている事件などさまざまであり、その原因は一定しているわけではない。

次の大量絶滅を人類はどう超えるか

 大量絶滅の直後には、空席になったニッチ(生態的地位)を埋めるべく、生き延びた生物による急激な適応放散がおきる。例えば恐竜が絶滅したことにより、白亜紀以前には小型動物が中心であった哺乳類は、急速に多様化・大型化が進み、生態系の上位の存在として繁栄を享受することとなる。

 オルドビス紀は地質時代、古生代前期における区分で、約4億8830万年前から約4億4370万年前までの時代を指すが、オルドビス紀末(約4億4400万年前)には大量絶滅が発生し、それまで繁栄していた三葉虫、腕足類、ウミリンゴ、サンゴ類、筆石、コノドントの大半が絶滅した。

 当時生息していた全ての生物種の85%が絶滅したと考えられている。 この時期、大陸は南極域にあり、短い期間であるが大陸氷河が発達した。絶滅は、氷床の発達に伴う海水準の低下時及び氷河の消滅に伴う海水準の上昇時の2回確認されているが、海水準の変動をもたらした環境の変化と大量絶滅との関係は不明である。

  2005年、NASAとカンザス大学の研究者により、近く(6000光年以内)で起こった超新星爆発によるガンマ線バーストを地球が受けたことが大量絶滅の引き金となった、という説が出されている。

 今回、東北大学大学院などの研究チームは、火山噴火による地球寒冷化が原因とする仮説を発表した。論文によると、オルドビス紀末の地層から高濃度の水銀を採取しており、これは火山の大噴火によるものだという。

 最初の生物大絶滅の原因は大火山噴火による寒冷化

 生物の「5大大量絶滅」のうち、4億4,500万年~4億4,300万年前に起きた最初の絶滅は、火山の大噴火で引き起こされた寒冷化が原因だったとみられる、と東北大学と米アマースト大学の研究グループが11日発表した。地球上では多様な生物の大絶滅は5回あったとされているが、このうち最初の原因ははっきりしていなかった。興味深い研究成果は米地質学会誌電子版に掲載された。

 地質時代に起きた5大大量絶滅は「ビッグファイブ」とも呼ばれている。最後の絶滅は約6,600万年前の白亜紀末に起きて恐竜が大量絶滅したことで知られている。この原因については隕石(いんせき)衝突説が最有力になっている。3回目と4回目の大絶滅時にも大噴火があったとされ、原因は大火山噴火説が有力。

 しかし、4億4,500万年~4億4,300万年前のオルドビス紀末に起き、三葉虫やサンゴ類などの海洋生物が大量に絶滅した最初の大絶滅の原因については、2回目の約3億7,400万年前の大絶滅原因とともに未解明だった。

 東北大学大学院理学研究科の海保邦夫(かいほ くにお)教授と米アマースト大学のデイビッド・ジョーンズ博士らは、中国と米国にあって最初の大絶滅の記録を残すオルドビス紀末の地層から高濃度の水銀を採取して分析した。

 オルドビス紀と異なる時代の3回の大噴火でも高濃度の水銀が見つかっており、中国と米国で採取された水銀も火山の大噴火により地下のマントルに含まれていたものが空高く放出されて世界中に広がり堆積したと考えられたという。

 これらのことから研究グループは、オルドビス紀末の大噴火で水銀とともに二酸化硫黄ガスが大量に放出されて成層圏で硫酸に変化。この硫酸が浮遊微粒子(エアロゾル)になって太陽光を遮断し、寒冷化して大量絶滅に至ったーというシナリオを導き出した。

 従来の仮説「ガンマ線バースト」

 研究者の中には、近距離のガンマ線バーストによって地球がガンマ線の放射を受けた場合の影響について調べている者もいる。この研究は、地球で起きた大量絶滅の原因を説明し、また地球外生命の存在の可能性を評価するという動機に基づいている。

 恒星が終わりを迎えるとき、ブラックホールができることがあるが、ブラックホールには、周囲の物質が円盤状に落ち込む(降着円盤)ができる。その際、円盤面に垂直な二方向に「ジェット」と呼ばれる細く絞られた質量放出が起こり、それらが星の外層を突き破った時にガンマ線が放出されると考えられている。

 このジェットは大変な速度で、ほぼ光速(99.99%以上!)に達する。ガンマ線の放出はジェットの方向に細く絞られており、我々がたまたまそのジェットの方向にいる時だけ、ガンマ線バーストとして観測される。これが直接、近くの天体にぶつかると大きな影響が出る。

 ガンマ線バーストによる被害はバーストの継続時間が短いために限定されたものに留まるが、十分に近い距離でバーストが起きた場合には地球大気に深刻な被害をもたらし、オゾン層が破壊されて大量絶滅を引き起こす可能性もあるとされている。

 2005年、NASA とカンザス大学の研究者が、約4億5000万年前のオルドビス紀−シルル紀境界での大量絶滅がガンマ線バーストによって引き起こされたことを示唆する研究結果を発表した。

 研究者達はこのようなバーストが古代の絶滅を引き起こした直接的な証拠を持っているわけではないが、彼らの研究の特色は、大気のモデリングによって、「そのようなバーストがもし起きたとしたらどうなるか」というシナリオを描いている点である。

 わずか10秒でオゾン層破壊

 彼らは比較的地球に近い恒星の爆発によるガンマ線放出の計算を行い、この爆発で地球にはわずか10秒間しかガンマ線は降り注がないものの、これによって地球大気のオゾン層の約半分がなくなる可能性を示した。消滅したオゾン層の回復には少なくとも5年を要するとされている。オゾン層の破壊によって、太陽からの紫外線が地上や海・湖沼の表面近くに生息する生命の大半を死滅させ、食物連鎖も破壊される。

 我々の銀河系内でガンマ線バーストが起こる可能性は非常に小さいが、NASA の研究者は過去数十億年の間に少なくとも1回は地球にガンマ線が降り注ぐほど近い距離でバーストが起きたと考えた。

 カンザス大学の古生物学者であるブルース・リーバーマン博士は、ガンマ線バーストがオルドビス紀の大絶滅の原因となった可能性があるという具体的なアイデアを提唱した人物である。

 「我々はそれがいつ起きたか正確には知りませんが、それが過去に起こり、その痕跡を残したこと自体には確信を持っています。最も驚くべきことは、たった10秒間のバーストでオゾン層に数年にわたる破壊的な被害がもたらされるということです」と彼は述べている。

 オルドビス紀(5億〜4億5000万年前)の終盤、繁栄していた海洋生物の70%が大量絶滅したのはこういった天災が原因だったかもしれない。

 新生代の時代区分

 新生代(Cenozoic era)は、古生代・中生代・新生代と分かれる地質時代、顕生代の大きな区分の一つである。約6,500万年前から現代までに相当し、恐竜、海中ではアンモナイトと海生爬虫類が絶滅した後、哺乳類と鳥類が繁栄したことで特徴づけられる。

 新生代は、第四紀・新第三紀・古第三紀の3つの紀に区分される。また、新第三紀と古第三紀を合わせた地質時代を、非公式な用語として第三紀と呼ぶことが許されている。

 古第三紀(Paleogene period)は地質時代の区分の一つで、6,600万年前から2,303万年前までの時代を指す。新生代の最初の紀であり、白亜紀から続き、新第三紀へ繋がる。 古第三紀はさらに、暁新世・始新世・漸新世の3つに時代区分される。

 暁新世末の約5500万年前に突発的な温暖化が起こり、海洋の中層から低層に生息していた有孔虫の35-50%が絶滅した。この時海洋深層水の温度は5-7℃、気温は6-8℃上昇し5万年から10万年かけて元に戻った。

 原因として当時の海底に大量に存在していたメタンハイドレートが融解し、数千年の間に炭素量換算1500ギガトンのメタンガスが大気中に放出され、メタンによる温室効果と その後メタンが酸化されてできる二酸化炭素による温室効果が想定されている。

 またこの時メタンが放出されたとされる地形が北大西洋のノルウェー沖で見つかって2004年に発表されている。1500ギガトンという温室効果ガスの量は、産業革命以来人類が発生させてきた二酸化炭素量と今後発生させると予想される二酸化炭素量の合計に匹敵するとされている。

 また、古第三紀の中期3600万年前にも隕石衝突があったとされている。

 新第三紀(Neogene period)は地質時代の区分の一つで、2,303万年前から258万年前までの時代を指す。新生代の第2の紀であり、古第三紀から続き、人類の出現する第四紀へ繋がる。新第三紀はさらに、中新世・鮮新世の2つに時代区分される。新第三紀の前半の中新世には、現代の哺乳類のほぼすべてのグループが出現した。

 第四紀では南極に氷床が発達し第四紀は北米やヨーロッパの大部分が氷床に覆われる寒冷な「氷期」と、現在のように比較的温暖な「間氷期」が交互に訪れ非常に短期間に大きな環境変化が繰り返し起こっている。

 今回の大量絶滅の時期は1160万年前、新生代・新第三紀中新世の時代区分、1382万年前 - 1162万年前までの期間を指す「サーラバリアン(Serravallian、セラヴァッレ期)」の末期にあたる。この時期に隕石の衝突があり、この隕石は海の部分に衝突したため、これまで発見されなかった。

参考 JAMSTEC: http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20191120/

  

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