新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)をめぐってマスコミや行政が大騒動である。新型コロナウイルスというのは、非常に恐ろしいものなのだろうか。
日本感染症学会のサイトが一番信頼できるものとして、議論を進めたい。
このサイトでは新型コロナウイルス感染症の現状と対策 水際対策から感染蔓延期に移行するときの注意点というpdfファイルが掲載されている。この中で、次のようなものがある。
中国湖北省武漢市での死亡率が高いため、致死性が高めに出ていると思われるが、感染しても発症していない又は軽症のために診察を受けていない、あるいはウイルス検査を行っていない場合は、感染者の母数にならないため、実際は季節性インフルエンザと致死性はあまり変わらないのではないかという疑問も湧く。日本感染症学会の資料では、「現時点の解析では、新型コロナウイルス感染症はインフルエンザよりは感染性・致死性が高いのではないかと考えられており」としているが、この現時点というのは2020年2月28日である。
リスクを抱えている高齢者や基礎疾患を有する者などは厳重に警戒する必要があるのは当然であるが、日本感染症学会の資料には「感染症一般に言えることですが、未知の病原体が出現した場合にはその重症例、死亡例がクローズアップされがちです。しかし多くの場合には、死亡例よりも重症例、重症例よりも軽症例が多く存在することが知られています。新型コロナウイルス感染症において、軽症例が80%前後であることが報告されていますが、感染をしても無症状である無症候性キャリアの数がどのくらい存在するのかが明らかになっていないことが問題です。」と書かれている。
科学的なエビデンスによって政策を立案するというEBPM(Evidence Based Policy Making)が行政でも求められており、各省庁でもこのEBPMに取り組んでいる。内閣府におけるEBPMへの取組
「EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)とは、政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づくものとすることです。
政策効果の測定に重要な関連を持つ情報や統計等のデータを活用したEBPMの推進は、政策の有効性を高め、国民の行政への信頼確保に資するものです。
内閣府では、EBPMを推進するべく、様々な取組を進めています。」(内閣府のサイトから)
今回、安倍首相は全国の小中高校の一斉休校を要請し、多くの小中学校がそれに従い一斉休校を行った。さらに、中国や韓国からの訪日者について2週間の隔離(待機)を行うことも発表した。
小学生、中学生、高校生の登校を禁止した場合に、どのような効果が見込まれているのであろうか。日本小児科学会のサイトでは、新型コロナウイルス感染症に関するQ&Aについてを掲載している。この中で、「今のところ、成人が感染し、呼吸不全を呈し、重症化した報告はありますが、小児患者が重症化したという報告は稀です。」という事実が記載されている。また、「現時点では、国内の小児の患者は稀で、成人の感染者からの伝播によるものですので、保育所、幼稚園、学校などへの通園、通学を自主的に控える理由はありません。しかしながら、地域で小児の患者が発生した場合、またはそれが想定される場合には、一定期間、休園や休校になる可能性があります。」ということが書かれており、これは通常の季節性インフルエンザ対策と同じような対策を記載していると考えられる。
どういう理由で安倍首相が全国の小中学校に対し一斉休校を求めたのか、全くエビデンスに基づいていない判断と言わざるを得ない。
イベントやスポーツ観戦なども自粛が続き、さらに感染が蔓延し始めている日本への入国制限についてもどれだけの効果があるのかわからない。
新型コロナウイルス感染症の危険性について、行政ははっきりとしたエビデンスに基づいて周知すべきであるが、危険性について明確にしないままその場しのぎの対応をしていると言わざるを得ない。
厚生労働省や保健所は、発生当初、新型コロナウイルス感染症の危険性が季節性インフルエンザとあまり変わらないために大規模な対策を行わなかったとすれば、そういう点について国民に情報提供すべきであるし、致死性が高く、危険な感染症なのであれば、人の移動を制限し、都市を封鎖するような対策を講じるよう地方公共団体等に対し要請するような対応が必要であろう。
現時点でも経済的に大きな影響を与えているが、今の状態が継続すれば、経済へのマイナスの影響は拡大し、国民の所得の減少や景気の長期的な悪化が進むだろう。その場合の対策まで考えた上で、新型コロナウイルス感染症対策を行っているのだろうか。
余談であるが、世界各国でも日本と同じような大騒動になれば、人々の「恐怖」によって世界的に景気後退に陥る可能性もある。アメリカのダウ平均株価のみでなく、欧州各国の株価や日経平均株価も大きく下げているが、今後も下げ続くことも予想される。新型コロナウイルス感染症への「恐怖」が不確実性を世界各国にまき散らしているようにも思える。
Coronavirus COVID-19 Global Cases by Johns Hopkins CSSE(ジョンズ・ホプキンズ大学システム科学工学センター)
最も重要な新型コロナウイルス感染症の危険性について広報せず、パニック的な対応に終始するのが最悪の対応である。マスコミの報道も感染拡大についてばかり報道することなく、この新型コロナウイルス感染症がはしか(麻疹)や季節性インフルエンザなどと比べて危険性がどうなのか、それをはっきりさせた上で報道を行うべきである。
また、感染拡大を抑止するためには、症状が疑われる人が通常どおりの行動を取らないよう求めることが重要である。「仕事の都合上、会社を休めないために出勤した。」「友人との約束があるから外出した。」「家にいても暇だし、軽症なのでショッピングモールに行った。」などという行為が感染症を拡大させるのは当然であるので、そういう行為は一切慎むようマスコミが働きかける必要があるだろう。感染の疑いがある者とその同居家族等が外出しなければ感染は拡大しない。病院への診察や日用品の購入のために外出し、感染症は拡大するが、季節性インフルエンザと同等であれば、これは許される行為であろう。やはり、新型コロナウイルス感染症の危険性がどの程度なのかを把握することが最も重要なのである。
エビデンスに基づき、今後予測される事象に的確に対応していく先見性を持って新型コロナウイルス感染症対策を行う必要がある。