開かずの金庫開けます!
皆さま、お変わりなくお過ごしでしょうか?
といっても、カプセルをプチっとやるだけのやつ。
そんな怠惰な態度で淹れた珈琲をズズッとすすりながら、メールチェックをする。
店のメールアカウントは7、8あるので、うんざりしながらの作業である。
迷惑メールはある程度振分けされて、迷惑フォルダに入るのだが、
それをすり抜けた奴らが日々10通やそこらは受信フォルダに入り込んでいる。
迷惑メールの完全シャットアウト一発設定というものはないものかと思う。
ところで、先日、そんな風にメールチェックをしていると、イタズラか?マジか?というメールが届いていた。
送信元は、「開かずの古い金庫開けます」という、あのTV番組の制作スタッフという事だった。
内容は、うちがインスタにアップした古い金庫の詳細を知りたい、事と次第によっては番組で取り上げさせてもらえないだろうか、リメールを頂ければ幸いです、というものだった。
2月頃、確かにそんなものをアップした。
「なんかマジっぽい気がするよなあ」と呟きながらも返信はせず、Webで映画の続きを観る事に。
え〜と、開店早々いきなり休憩するわけだが、まあほんの30分の事だ。
これが、仕事に取り掛かるまでの細やかな楽しみである。
そのあとは閉店まで、休む事なく仕事をする。
作業をしながら食事をとるという事も珍しくない。
と、のらりくらりとしたスタートを正当化したい僕である。
話を戻どす。
機嫌よく映画を観出した所に電話が鳴った。
おっ、本日1件目の買取依頼かと、明るくかつ清く正しく受話器を取った。
と、電話の向こうの声は、今朝メールで金庫の事を問い合わせました◻︎☆番組制作担当の◯△と申します、とうら若き女性だった。
どうやら、真面目な問合せのようだ。
しか〜し、肝心の金庫は既に処分してしまっている。
それを言う前に、先方が「いつの時代の金庫でしょう?鍵は開きますか?番組で取り上げさせて頂くことは可能でしょうか?」と、慣れた口調で仰る。
「大正時代ですね。鍵は開かないものでした」と。
「でした、と言いますと?開いたのでしょうか?」
「あっ、いえ、処分しましたわ。残念ながらありません」
「あ〜、あ"〜、ヴァ〜、ないのですか〜〜、マジっすか〜〜〜、ホンマでっか〜〜」と、電話の声が落胆しきった若者のトーンになった。
「御意」と、僕。
実はこの金庫、知人から倉庫整理を頼まれた時に出て来たものだ。
店に飾ろうかとも考えたが、兎に角、無茶苦茶重い。
と、いうよりリフトでもなければ持ち上がらない。
で、結局業者に頼んで廃棄した。
テレビで取り上げて貰えたら、かなりの宣伝効果があっただろうに。
娯楽の少ない田舎町の事だ。
噂はアッと言う間に町中に広がり、その金庫見たさに人々がやって来る。
そこで、僕は小さな鳥居をこさえ、その向こうに金庫を飾ったりなんかする。
忘れずに賽銭箱なぞも置いておく。
人々は本能的に賽銭を投げ入れる。
そんなニンマリするような事になっていたかも知れない。
今更、如何ともし難い。
僕もその番組は何度かみた事があり、
次から次に取材に来て欲しいと問合せが入るのだろうな、と思っていた。
まあ、そんな問合せもあるのだろうけど、実際はこのように若き裏方さんが目を皿のようにして、情報を探しているのか。
どんな仕事も大変なんだな。
若者よ、熱き血潮に燃え、茨の道を突き進め!
あなたの前に道はない。あなたの後に道は出来る。
僕は、その出来た道をのんびり歩く^_^