以前,不動産を借りる際の仲介手数料について書きました。
仲介手数料は,1ヶ月分が当たり前のようになっているけれど,原則はそうではないという話。
宅建業法46条1項と国土交通省告示によって,借主貸主双方からの合計額として1ヶ月分(プラス消費税)が上限だけれど,居住用物件の場合,このうち一方から取れる上限は原則半月分(プラス消費税)なのです。
https://ameblo.jp/yoshinari-myp/entry-12113924693.html
ただ,国土交通省告示では,依頼者の承諾を得ている場合を除きとあるので,お客さんが承諾してればよい。
まあ,部屋ないし家を借りたいわけだから,普通は,1ヶ月分と提示されたら,承諾せざるを得ないですよね。
そして,裁判でこれが問題になることもないだろうと思っていました。
ところが,借主の承諾を得ていなかったとして,半額の返還を認める判決が出たとの記事がありました。
賃貸住宅の仲介手数料は原則0.5カ月分 手数料の一部返還認める 東京地裁(毎日新聞)
事実関係としては,
男性は2013年1月8日ごろ、物件を借りたいと同社担当者に連絡し、10日に担当者から契約をいつ締結するかについて連絡を受けた。男性は20日に契約を交わし、22日、同社の請求通りに家賃1カ月分に当たる手数料22万5000円を支払った
とのことです。
そして,東京地裁は,
業者が家賃1カ月分の手数料を請求する場合は、物件の仲介をする前に承諾を得る必要がある
として,
本件では
①10日に仲介が成立し,
②その時点では1カ月分の手数料を受け取る承諾を得ていなかった
と認定し,半額の返還請求を認めたとのことです。
ところで,弁護士だというと,六法全書を全部覚えているんですか?と聞かれます。
いわゆる六法に限定しても,そんなの覚えられるはずがない(笑)
私は,子供の頃から,記憶力はほんとお粗末でしたが,こればかりは,私に限らず,誰だって,覚えられない。
そもそも,論文試験や口述では,六法が机に置いてありましたしね(口述は許可があった場合のみですが)
司法試験は,覚えるような試験ではないというか,覚えてどうにかなるようなものではない。
むしろ,条文から一義的に結論が出ない部分を,どう解決するかの筋道を示す試験といえます。
例えば,先ほどの仲介手数料の裁判のケースですが,宅建業法46条1項と国土交通省告示の文字だけを見ても,返還が認められるのか認められないかは一義的に導かれません。
承諾がある場合は1ヶ月分取れるとあるのだけれど,その承諾がどの時点で必要なのかは,書いていないからです。
こういった書いてないことについて,どのような結論を出し,そこをどう筋道立てて説明するかが問われる試験なのです。
そこで,普通の受験生は,答案を書き始める前に,答案の構成を練ります。
私は,あまり勉強してなかったので,えいやーで,書き始めながら考えてましたが(笑)
仲介手数料の裁判の話に戻りまして,一般的な契約では,なにかの承諾を事後でもしてしまえば,有効であるとされることが多いと思いますが,承諾がないとされたのは,仲介手数料については,あえて上限を定めて,「依頼者の承諾を得ている場合を除き」という記載になっていることが大きいと思います。
ただ,この判決が出て,これが仮に確定したからといって,払ってしまった仲介手数料の半額が取り戻されるケースが多くなるかというと,多分違うんじゃないかと。
判決文を見ないと分からないのですが,おそらく原則が0.5月分であることを説明した上で承諾をとらないと取れないという判断まではしてないような。
その辺は,また判決全を見てから,記事にしたいと思います。
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