UTMB 2018に出走。
46:10で完走し、3回目のゴールを嫁+娘3人で手つなぎでするという夢を叶えることができました。
https://utmbmontblanc.com/jp/live/runner/1845
それにしても今までで一番「痛くてつらいレース」になりました。。エイドのMedical Serviceをここまで使った人はすくなかったかもしれません。
少し落ち着いたので振り返ってみます。
レース前
この半年間は会社経営の難しさと忙しさを痛感する日々でトレーニングもおざなり。月間距離も50km程度という状態でした。
4月のUTMFは風邪気味で出場して、レース中の回復を望みましたが、ずっと鼻炎が止まらず、50kmで念をとってDNF。6月のSPA TRAILは、仕事の都合でDNS。
そして、7月末に富士登山競争(山頂)コースに出たところ、体力を残しながら、まさかの8合目制限に3分引っかかるという始末。
これで火がつきました。
「勝負勘が衰えて、無我夢中にゴールする気持ち、1分を大事にする気持ちがおざなりになってる!」
それから毎週金曜日に御殿場にバスで向かい、UTMBまでの1ヶ月、毎週富士山を2-3往復、とにかく徹夜で追い込みました。嫁の実家(浜松)への帰省の途中でも、立ち寄って徹夜で御殿場口を往復して、また運転を再開するという具合。
1ヶ月で130kmの走行距離は全て富士山で、累積標高は10000m超え。御殿場口のタイムも3時間ちょっとと大幅にベスト更新。
直前の疲労抜きで内田治療院にお願いしたら、先生に「よく1ヶ月でここまで筋肉作ったね!」といってもらいました。足裏を痛めていたので激痛ですが、足裏にも「しっかり」鍼をうってもらって悶絶しました。。。
レース前
8/25
家族5人で経由地のミュンヘンへ渡航。そこで3泊して、観光。
8/28
ジュネーブにとび、いつものmountain dropoffのタクシーでシャモニー入り。両親とも合流します。
8/29
氷河を見に3女を背負いながら行きました。子供たちのmini UTMBイベントに出てもらおうと思っていたら、ちょうど直前に大雨が降ってしまい、あえなくDNSとしてクレープを食べてまったり。
8/30
10時前に荷物チェックに向かうと、いつも1時間は待つところ、朝イチではガラガラでスムーズでした。
UTMB限定グッズなどのショッピングを楽しみます。
レース直前
8/31 ついにレース当日。朝にコンロで餅を5個くらい食べて、また寝て、14時ころにまた起きて、餅をまた5個くらい食べて用意をします。
直前に
「Tet Aux Ventのルートは落石事故で代替ルートに変更」
「山頂は氷点下の荒天を予想。防寒具が必携」
とSMSが来ます。
短パンで行こうと思っていましたが、急いで、タイツをはき、スタートからキャプリーンに着替えました。羽毛ジャケットも持っていきます。
目標タイムは45:30で、各エイドの到着予定時間をシミュレートしました。
17;40 スタート会場入り。いつも通りにぎわっています。
3分前頃、テーマソング「conquest of paradise]が鳴り響きます。3回目でも感動に熱くなります。
そして、レース開始!
18:00 スタート!家族と握手をして、出発。
前回はキロ5を切るスピードで飛ばしすぎて熱中症になった痛い思い出があるので、キロ7位で体調をみながら刻みます。
19:00 8km 最初の補給 Les Houches
ここはスルー。この辺りで6回完走している師匠のAさんに声がけされます。
21:10 21km 一つ目の山を越えて。Saint Gervais 着。
嫁が応援に来てくれていました。5分ほど休んで、水と食料を少し補給します。ここまでは体の不調はなく、懸念だった足裏の痛みもなく、快調にすすみます。ここからずっとじわじわした登り。
22:54 31.8km Contamine着。
アシスタントエイドがかなり混みあっていて、嫁と待ち合わせるのにすこし手間取ります。疲れも眠気もそこまでなかったのと、ユンケルだけ飲んで補充して、寒さも予想よりなかったので、羽毛ジャケットは渡しました。
ここから徐々に厳しい登りになり、Bonhomme峠まで続きます。
00:49 40km La Balme着。
焚火がある中腹のエイド。妙におなかが減っているので、初めてスープを飲み、エイドで配っている補給食のバナナベースのバーを食べます。意外とおいしい。
時間はほぼ予定通り。とはいえ、そこまで余裕はないので、そのまま進みます。
後ろには光の列がつならります。
2:33 45km Bonhomme峠。
多少眠気と空腹が止まらないので、少し休んでジェルを多く補給します。山頂は寒いので足早に通り過ぎ、さてここから得意な下り! と快調にスピードを上げたところで、
「右足脛が痛い!!!」
120km位で出るような痛みが、なんとこんな距離で出てしまいました。
一歩足を着くたびに ジワっと血が染み出すような感触。
前脛骨筋が痛んでいます。
マッサージクリーム(フラッシュバウンス)を塗ってもあまりよくならないので、とりあえずテーピングでサポートしてゆっくり下ります。
3:30 50.8km Chapieuxにホウホウの体で着。
Petzlの充電をしてもらいながら、急いでMedicalに行き、
「続けるつもりだから、走れるように足のテーピングをしてほしい。」と伝えます。
診察をしてくれたところ
「たぶん前脛骨筋が横に裂け始めてるね~。すこし止めるテーピングしとくよ」
といわれ、固定用の白いテーピングで右足首を固定し、脛は一周ぐるっと回るような形で押さえました。
手際はすごくよかったので助かります。
「エイド毎に次にいくべきか、悩んだらMedicalに相談してね。じゃ、see you in chamonix!」
という感じでわかれました。
治療中、思い至った原因は
「ロードのような固い地面での練習不足」
です。
富士山の練習しかしていなかったのですが、下りは砂走でずるずると滑りながら下りるので、実は脛への衝撃は少なく、主に踵から太ももで吸収して走っています。
でもUTMBの土はアスファルト並みに固い。そこをバタンバタンと踏み込んでしまったので、鍛えられていない筋肉がすぐに損傷してしまったのでしょう。
ロードやっとけばよかったなぁ。。。。と思いつつも、得意の下りを走れない足であと120km行けるのか?と考えると絶望に襲われます。
でも、時間は全然ないし、せめて痛みの(あまり)でない登りは頑張らなくては、と前向きに気持ちを切り替えながら、次の難関、セーニュ峠への登りを歩きます。
6:47 Seigne峠着。
ガレ場を下るピラミッドルートがキャンセルになってよかったと心から思いながらも、Combalまでの下りでの痛みを想像してげんなりします。
そんなところで、ちょうどラン仲間のKさん(女性)と遭遇。夜明けの幻想的なコンバル湖を一緒に写真を撮ったりしながら、話してすこし気持ちをリフレッシュ。
テーピングのおかげで、走れないまでも痛みは少し軽減されていました。
しかし、今度は
「右膝裏が痛い。。」
たぶん固定されすぎて、衝撃がそのまま膝に行っているようです。
7:35 66km Combal湖着。
またMedicalに行ったら、膝にオイルを塗ってくれました。セーニュ峠からの吹き降ろす風が冷たいエイドだったので、あったかいスープを飲んで、またバナナのバーを補給。
コンバル湖の絶景に心をどうにか癒しながら進みます。
ときどき牛が通せんぼ。
9:02 Mont Favre着。
雄大なFavre山が目の前に聳えるチェックポイント。記念写真をとって進みます。
ここからクールマイヨールまで9km連続の下り。。。。
予定とは1分差もないくらいぴったり。しかしここから時間がかかりすぎると一気に危ない。
こんな序盤で飲みたくなかったですがロキソニンを1錠飲んですすみます。
クールマイヨールは全く見えません。
楽しい下りが、こんな地獄になるとは、、と思いながら、なるべく右足の負担がないような足の置き方をして、下りていきます。
とはいえ、クールマイヨール手前のちょっとテクニカルな日本の山のようなつづら折りでは痛みが倍増。
正直、日本のレースだったら間違いなくリタイヤしたと思います。
10:49 クールマイヨール着。
両親・嫁・子供3人が待っていてくれました!
子供たちが抱き着いてきて、頑張って!と声援をくれます。
アシスタントエイドには1人しか入れないので、嫁がはいりました。中は大混雑。
仕方なく床にすわって、靴を履き替えて、タイツを脱いで短パンに。シャツも着替えます。
無添加のアマノフーズの親子丼を開けたら、具だけでご飯はついてなかったのでガックシ。
でもかなりおいしいかったので、次回はα米も用意します。
あっという間に40分位立ち、出発の準備をします。
11:41 クールマイヨール発。
外で子供たちがまた待っていてくれたので、数分休んでから後半に挑みます。
12:00 クールマイヨールの広場。
Tシャツ一枚では思ったより寒いので、またキャプリーンに着替えます。
その時、高低表とタイム表を着替えの時のポケットに入れっぱなしにしたことに気づいたので、嫁に電話をして、メールで送ってもらいました。
そして去年熱中症で倒れたベルトーネの登りに入ります。
あーーつらい、と思いながらも富士山効果で登りの筋肉は残っています。
しかし中腹に来たところで、めまいがしていきなり動けない状態に。
クールマイヨールであまり補給しなかったのでハンガーノックかと思い、ジェルを2本補給してじっと休みます。
そこで、またKさんがちょうど登ってきて遭遇。
貧血かハンガーノックかも、と話したらグルタミンとオルチニンのパウダーをくれました。
早速それも飲んで5-10分位目をつむったところ、どうにか動けるように。
登りを再開しましたが、どうもベルトーネはいつもトラブルが起きる相性の悪い山です。。
13:59 84km ベルトーネ小屋 着。
予定の14:10より10分早いですが、トイレ休憩と補給であっという間に消化。
ここから左手にモンブランを見ながら細かいアップダウンを繰り返す絶景トレイルです。
走れたら気持ちいいんだろうなぁ、と思いながら満足に走れたこと一度もありません。(そして今回も。。)
そして下りで毎回起きる痛み。。左足に痛みがでたらリタイヤするしかないかも、と思いながら進みます。
15;53 91.5km Bonatti小屋 着。
予定(16:06)より10分早いですが、アルヌーバの下りで遅れることことを見越して、足早に出ます。
17:05 96.6km Arnouvaz着。
とにかく右膝と右脛が痛い!
トイレ休憩をしたあと、またMedicalに行くと、日本人のスタッフがいて1人待って、と言われ10分程まちます。
刻々とカットオフ時間の18:15が迫り焦ります。
「フェレ峠からの長い下りを走れるようにしてくれ」と無茶ぶりをします。
急ぐ?と聞かれましたが、しっかり巻いてくれた方があとで巻き返せるので、しっかりお願いします、と伝えました。そして、右膝にしっかり伸縮性のテーピングを巻いてくれました。
エイドを出ようとすると天候は悪化。長ズボンの着用が義務になったので、初めて履きました。
17:50 アルヌーバ発。
一気に予定から遅れ、関門25分前というヒリヒリした状態になります。
ここからは登り。テーピングはしてもらったとはいえ、また下りでロスをすることを考えると、全く余裕がありません。登りで時間を稼ぐしかない。
ここで富士登山競争での雪辱を晴らすべく
「フェレ峠まで全力ノンストップで登りきる」
と覚悟をきめて進みます。
たぶん100人位抜きました。
後ろを見ると氷河の切り開いた雄大な景色が広がりますが、写真も撮らずにモクモクと登ります。
19:09 Ferret 着。
1時間で登りきれた!一気に予定(19:26)からも15分前倒しになっており、想定よりも30分も早く登り切れました。
とはいえ、ここからが最大の難所。
22km の下り
です。
下りで激痛が起きるのにそれを22kmも。。。
日も暮れてきて、気持ちも真っ暗。でも行くしかない。
ロキソニンをまた1錠飲んで、進み始めました。
(つづく)