オステリア・トスカネッラ | Espressoのブログ

オステリア・トスカネッラ



写真:ピッティ宮殿より西北方面、手前円蓋と尖塔のあるのはサント・スピーリト教会(フィリッピーノ・リッピ作「聖母子と諸聖人」がある教会)、その奥に見えるのはサンタ・マリア・デル・カルミネ教会(マザッチョとマゾリーノの共作壁画「聖ペトロの布教」がある教会)。

フィレンツェのピッティ宮殿前にある広場中央にある通りを一筋奥に入ると、トスカネッラ通りという車一台が通れる幅の小路があり、この通りにファブリツィオ・ゴーリさんが経営するオステリア・トスカネッラ(Toscanella Osteria)があります。このオステリアは、普通のオステリアとはひと味もふた味も違う芸術性と個性あふれる空間を演出しているお店です。今回は、このオステリア・トスカネッラと店主ファブリツィオ・ゴーリさんの紹介を少しだけ致します。ともかく一度は訪れていただきたいレストランです。

オステリア・トスカネッラ(Toscanella Osteria) 住所:Via Toscanella, 38, 50125 Firenze




目印は写真のピノッキオ



ゴーリさんは、このレストランのオーナーであると同時に自らも芸術家として活躍されており、作品はモマやパリ市近代美術館、ウフィツィ美術館などにも収蔵されています。店内には自ら描いた作品とともに、フィレンツェの近代絵画史に名を遺す彼の仲間たちの作品で埋め尽くされています。

オステリア・トスカネッラがある場所は、想像力を刺激し思考の世界へと誘ってくれるエピソードが多々あります。
ゴーリさんの説明によれば、この店舗がある建物は古くはピッティ宮の前庭にある開廊(Loggia)だった場所に建てられており、店内には店舗改修時に井戸が発見され、2017年この井戸に関する研究が発表され、イタリアの歴史上重要なフィレンツェ生まれの天文・数学・地理学者パオロ・ダル・ポッツォ・トスカネッリ(1397年 - 1482年)が住んでいたとされました。名前にあるダル・ポッツォとは井戸のことで、井戸のある所に住んで居たパオロを意味しているとのことです。


写真 上段:井戸 / 下段:研究発表(研究書)

また、この建物に関わりのあるのが、近代画家オットーネ・ロサイ(Ottone Rosai:1895年 - 1957年)であり、オステリア・トスカネッラのある建物の2階にアトリエを構えていました。ゴーリさんは、ロサイの精神を受け継ぎスタジオ・ロサイと名付け、芸術家たちの作品発表の場として提供しています。ゴーリさんは、自身の芸術家としての集大成として2018年にこのストゥディオ・ロサイで作品展を開いています。


上段:オットーネ・ロサイ作トスカネッラ通り / 下段:ゴーリさんの作品展パンフレット

ゴーリさんの作品展


ゴーリさんは、ピノッキオを主にテーマとされており、ピノッキオの生き字引的な存在でオステリア・トスカネッラはピノッキオのレストランとしてフィレンツェ市民から親しまれています。ピノッキオのお話は、1883年にフィレンツェの出版社パッジ社から『ピノッキオの冒険 ある操り人形の物語(原作者カルロ・コッローディ)』のタイトルで発売され、1892年には英語版『ピノッキオの冒険』が出版されて以降、瞬く間に世界中に広まり世界で最も多くの言語(260カ国:方言も含む)に訳され、児童文学書としてだけではなく映画や演劇、アニメ-ションにも引き継がれ、いまだに高い人気を保ち続けている作品です。

オステリア・トスカネッラの入口左側面には石板にジョヴァンニ・ボッカッチョのためのソネットが刻まれています。


石板写真

ジョヴァンニ・ボッカッチョのためのソネット ( 詩 )

私の名は、ムッシュー・ジョヴァンニ・ボッカッチョ、
フィレンツェのトスカネッリの井戸で産まれる。
フィレンツェの外に葬られ、チェルタルドに永眠。
プラトのジョヴァンニ・ゲラルディ

オステリア・トスカネッラは、とても楽しくトスカーナ料理は美味で値段もお手ごろです。フィレンツェは、丘陵に囲まれた盆地を流れるアルノ川沿いに発展した都市で、ルネサンス文化を開花させ近代ヨーロッパの出発点となった街、ロマンに満ちたルネサンス文化から現在までを体感させてくれ癒される素敵な都市です。