天皇と国民つなぐ祭祀、大嘗宮の儀 | あたま出版ブログ 禿頭席(とくとうせき)

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天皇と国民つなぐ祭祀、大嘗宮の儀 「災害はらう」古代から継承
 

 14日夜に始まった大嘗祭(だいじょうさい)の中心的儀式「大嘗宮(だいじょうきゅう)の儀」は皇位継承に際し、最も重要とされる儀式で、7世紀後半以降、中断を挟みながらも歴代天皇により継承されてきた。専門家は「天皇と国民をつなぐ祭り」「現代に通じる自然災害をはらう祈り」といった意義があると分析する。

 

 天皇陛下は即位した5月1日に「剣璽等承継(けんじとうしょうけい)の儀」で皇位継承の正統性を示し、10月22日の「即位礼正殿(せいでん)の儀」で即位を国内外に宣明された。しかし、皇室研究者で神道学者の高森明勅(あきのり)氏は、大嘗祭を除くこれらの皇位継承儀式に欠けるのが「民との接点」と指摘し、大嘗祭に際して納められる米に着目する。

 

 高森氏によると、時の天皇が臨む例年の「新嘗祭(にいなめさい)」では前近代の場合、都を取り巻く畿内(大和、山城、河内、和泉、摂津)の官田(かんでん)(天皇の田)の米が使われるのが原則だった。これに対し、平安時代に編集された法令集「延喜式(えんぎしき)」では、大嘗祭の米を「民の耕作する田」と規定。畿外の一般民衆の田が、亀の甲羅を使った占い「亀卜(きぼく)」によって選ばれた。「天皇と民が、稲作を媒介としてつながるのが大嘗祭。すべての民の奉仕を象徴するという位置づけで、日本人が日本人としての同一性を御代ごとに確かめる祭儀ともいえる」(高森氏)

 米の供納に関し、天皇と国民の従属的な関係を表すという指摘もあるが、高森氏は「大嘗祭の成立以来、天皇は国家の公的統治の体現者であり、専制君主だったことはない。階級闘争史観の先入観を持ってみない限り、強権支配の表れとみるのは見当違い」との見方を示す。


 国学院大名誉教授の岡田荘司氏は、大嘗祭の意義を「古代の衣食住への回帰」にあるととらえる。岡田氏は「清浄」を保つために新設される大嘗宮について、かつての天皇の居住空間を再現したものとみる。神々に供する米などは柏の葉で作られた簡素な器に盛られ、陛下が身につけられる「御祭服(ごさいふく)」も粗い絹が用いられる。

 「現代と比べ厳しい状況にあった衣食住の環境下で、陛下が自然が鎮まるよう祈られる。近年は国内でも災害が続くが、日本国中に住む人々の祈りを、天皇の立場で共有するところに現代的な意味がある」。岡田氏はこう分析する。

 

 

 宮内庁は陛下が五穀豊穣(ほうじょう)を祈られる「御告文(おつげぶみ)」の内容を明らかにしていない。ただ、これまでの研究で判明している過去の大嘗祭の御告文では、自然災害を被らないよう祈る言葉は共通しているという。

 国学院大学研究開発推進機構長の武田秀章氏は、平安時代に東北地方を襲った貞観地震(869年)の際、当時の清和天皇が救済のための詔(みことのり)を出した例などを挙げ、「被災者への気持ちは東日本大震災などにおける皇室のなさりようと同じ」と指摘。今回の大嘗祭での御告文の内容も継承されていると推測し「自然の恵みを祈り、災いを未然にはらう歴代天皇の祈りが凝縮されているのではないか」と話した。

 

令和の時代は災害が少なく、御皇室と共に国民の笑顔が増える時代になってほしいと切に願います。