パンセ(みたいなものを目指して)

好きなものはモーツァルト、ブルックナーとポール・マッカートニー、ヘッセ、サッカー。あとは面倒くさいことを考えること

半沢直樹とフルトヴェングラーの指揮する第5交響曲

2020年09月21日 08時40分30秒 | あれこれ考えること

 人気ドラマ「半沢直樹」がコロナ感染症対策のために収録が間に合わなかった時
急遽、スタジオで出演者の裏話を見聞きする番組に変更された
堺雅人、香川照之、片岡愛之助、その他、自分の知らないお笑いのひとが
演技の意図を詳しく説明していて、なかなか興味深いものだった

何年ぶりに憎き相手に会う時にはどんな表情がリアリティがあるか
人にものを頼むときはどうすべきかを、、気に食わない相手に言うにはどうしたら良いか、、、
セリフだけでなく体からにじみ出る仕草はどうしたら効果的か
それらはト書きには詳しく書いてないので、役者さんの感性や即興に任せるらしい

このドラマは顔のアップが多くて、顔芸のオンパレードだが
顔の表情の中にいろんな思いを込め、それを見ている人に想像させるというのは
表現者としての役者さんの力量を楽しめて、それはストーリとは違った面で面白い

時間内に収めるため、カタルシスを感じさせるためにストーリーはちょいとご都合主義な面があるが
それはエンタメはこんなものだ、、と割り切れば、少し文句を言いたくなる面も我慢できる
そして少しオーバーな歌舞伎役者の顔芸も、、一旦その世界に入ってしまえばそれを楽しむことはできる

そこで思い出したのがフルトヴェングラーの指揮するベートーヴェンの5番の交響曲
最近テレビCMで「ジャジャジャジャーン」が使われているのに刺激されてレコードを引っ張り出した
選んだのはベルリン・フィルとウィーンフィルのうち、ベルリン・フィルとの方
頭に残っているのはベルリン・フィルのほうが演奏中の間(休止)の効果がすごい、、ということ
それはライブ録音のせいもあるかもしれない
5番の交響曲は少しばかり押し付けがましくてなかなか聞く気になれない曲だが
フルトヴェングラーの指揮するのもは、押し付けがましさはあまり感じない
(同じくフルトヴェングラーの指揮する皇帝も押しつけがしさは感じない)

今年はベートーヴェン生誕250年で記念の年、本来ならば巷でベートーヴェン関係のコンサートが
行われているところだったが、新型コロナのせいでその話は吹っ飛んでしまったようだ

レコードに針を下ろす
有名な冒頭のテーマが響く
「重い音だ、、こんなに重い音(低い音だったっけ?)」
最初に感じたのはこのことだった(これはベルリン・フィルの音色か)
5番の交響曲の楽譜には、テーマの前に休符がある
急にその意味がわかった気もした
強拍ですんなり始まるより、息を少しためて緊迫感を煽って始める
そのほうが良い
この冒頭は最近の指揮者のと違って遅いし、物々しい
それは先程の顔芸と似たようなもので、少しばかり大げさすぎる、と感じないことはない
だが、始まってしまうとその世界に引き込まれて、全ては必然の流れのように感じられる
テンポの変化がフルトヴェングラーの演奏では特徴と言われるが、
どこがテンポアップしたのか、テンポを落としたのかなどは気づかない
むしろ必然の成り行きのよう
フルトヴェングラーの音でいつも思うのはティンパニの音だ
打楽器なのだが音階楽器のように聞こえる
そしてその効果的なこと

始まったらその世界に引き込まれて、終わると決まって出てくるのは
「すげー」の一言
それ以外の表現のしようがない
何か知らないが、とにかく濃密な時間を体験したという感覚だけは強烈に残る
それはベルリン・フィルの奏者も無我夢中になって音楽にのみ集中しているようで
そこには聴衆の存在すら忘れていそうな熱狂を感じてしまう
そして最後の音になると急にテンポが落ちて、「これでお終い」と
大きな芝居の出し物を終えるような、念を押すような終わり方をする
これは冒頭の音の出し方ととても調和が取れていると感じる

ドラマも音楽も楽しむためには、その世界に浸ることだと思う
だがその浸るものは、できることなら浸る価値のあるものが良いに違いない
今回の「半沢直樹」は価値あるものかどうかは、カタルシスを求めるだけでなく
現政権への抵抗も見て取ると面白いかもしれない

フルトヴェングラーの指揮は、時代がかって古い!
と無視するにはもったいない気がしてならない
(一旦ハマれば抜け出せなくなるに違いない)


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