新井紀子先生の前著「AIvs教科書を読めない子どもたち」は「10年に一度の名著」だと思っていた。
今回は、より読解について詳論されているので大いに参考になる。以下、私なりにまとめてみる。
一、読解力について
1、筆者のいう読解力(RSTで測定する力)は次の6つである。
①係り受け解析…文の基本構造(主語・述語・目的語など)を把握する力。
次のような授業が有用であろう。
「カラスがとまった」
に修飾語を加えさせ、どこを飾るか説明させる
「電線にカラスがとまった」
「電線にカラスが二羽とまった」というように。
②照応解決…指示代名詞が指すものや、省略された主語や目的語を把握する力。
③同義文判定…2文の意味が同一であるかどうかを正しく判定する力。AIはかなり苦手。AIによる記述式問題の自動採点は無理。
この力をつけるためには「記述答案の採点を生徒任せにせず、先生が指導すべきである。この際は消しゴムを使わせず、赤で修正する」を徹底するべきだ。
④推論…小6までに学校で習う基本的知識と日常生活から得られる常識を動員して文の意味を理解する力。AIには困難。
⑤イメージ同定…文章や図やグラフと比べて、内容が一致しているかどうかを認識する能力。AIには未来永劫無理。
⑥具体例同定…言葉の定義を読んでそれと合致する具体例を認識する能力。
この力を養うためには、漢字や語彙ドリルを学んだら、それを使う場面をつくるべきだ。「(新しい言葉)とは、~のこと」と定義を示したうえで、次のシーンで使うように仕向け、使えたら「かっこいい」と言ってほめる。定義ができたらみんなで音読。定義とは「○○とは、〇○○ということ」という文章で新しい言葉を説明することである。
2、上のRSTの力は、行間を読み取るより、行中を読み取ることが優先する。そのためには、文のつくりを正しく把握したり、機能語(「と」「に」「のとき」「ならば」「だけ」を正しく使える必要がある。
3、RSTの読解力と読書の好き嫌いの間には相関関係はない。しかし、読書は奨励すべきである。
4、文章をキーワードの群れとしてとらえる読みは「AI読み」だ。文のつくりや、機能語(「と」「に」「のとき」「ならば」「だけ」)を無視しているのである。これでは教科書などの意味はぼんやりとしかわからず、本から新しい知識を得るのは難しい。
5、国語は芸術鑑賞ではない。国語の目的は「生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと」(学校教育法21条)である。
二、板書と学力
1、板書を写す際、
①画数ごとに写す生徒~学習障害?
②文字ごとに写す生徒~文の意味が分かってない
文を写せるか、文字単位でしか移せないか文の意味が分かっているかどうかが判定できる。
2、最近は板書を写す授業ではなく、穴埋めプリントを多用する授業が多い。しかし、特に小学生は、まずは自分の気分や力加減をコントロールしながら作業に集中できることを目指した方がよい。穴埋めプリントなどの多用は、文章の意味を考えることによって、写す時間を短縮しようとする時間を奪う。
3、あらかじめ桁がそろえてある筆算ドリルは止めるべきである。なぜなら、筆算の多くが「桁をきちんと合わせていないこと」「繰り上がりや繰り下がりを正しい箇所に書かないこと」にあるからだ。
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