台風10号 ~ 大いなる肩透かし | 大局観

台風10号 ~ 大いなる肩透かし

今年の台風10号は、非常に印象的だった。

気象庁が、「非常に危険! 戦後最大級!」と警告を発していた(下記A)が、その後勢力が大きく弱まった(下記B)。

大きく肩透かしを食った形である。

気象庁が予想を大きく見誤った、教訓的な事例となった。

 

A.特別警報級の台風10号 脅威のわけは熱帯並みの海水温

 非常に強い台風10号が、九州・沖縄など西日本に接近、上陸する見通しになっている。

気象庁は、戦後史に残る甚大な被害を出した伊勢湾台風に匹敵する「特別警報級」になっているとして、厳重な警戒と対策を呼びかける。

なぜ、これほどの脅威的な台風となったのか。

 気象庁の発表によると、4日午後3時現在の台風10号の中心気圧は925ヘクトパスカルで、中心付近の最大風速は50メートル。4日午後の予想では、5日午後には915ヘクトパスカルまで発達する見通しで、最大風速は55メートルに達する。

 京都大防災研究所の竹見哲也准教授(気象学)は「過去最強クラスであることは間違いない。日本近海が熱帯並みの海水温になっていることで、台風が猛烈な勢力に発達、維持したまま近づいている」と話す。 

 

 

 

B.台風10号、なぜ「特別警報級」に発達しなかった? 海面水温の低下要因か 台風8、9号の影響

 気象台は3日時点で、台風10号は中心気圧915ヘクトパスカルまで発達すると予報。その時点で沖縄近海は記録的に高い海面水温により、台風が発達しやすい状態とみられていた。
 特別警報級に発達しなかった理由について、気象台は

(1)台風8、9号が海水をかき混ぜたことで海面水温が予想より低かった

(2)上空の乾燥した空気を取り込んだ

―ことが可能性としてあるという。

気象庁の沖縄周辺の海面水温のデータを比較すると、2日は平年より高い数値を示したが、台風接近時の5日には平年より低くなっていた。これらにより台風を発達させる水蒸気が予想より取り込まれなかったとみられる。今後の詳細調査で判明するという。
 今回と同様に台風が立て続けに接近した場合、予想より発達しなかった事例は過去にもあった。

琉球大の伊藤耕介准教授(気象学)は2018年の台風25号について、沖縄の南東部で900ヘクトパスカルに達したが「24号が海面水温・海洋表層水温を冷やした海域にさしかかると急激に勢力を落とした」と指摘した。
 当時も1週間で台風が立て続けに接近しており、一時的に海面水温を下げる効果があったとみられる。

 

 

 

1.気象庁の釈明

①8号9号で海水温が下がった

②黒潮で海水温が下がった

③上空の乾燥した空気

 

 

2.気象庁が、後付けの説明をすることになった原因

①海水温など海洋の環境が台風に与える影響について研究している、気象庁気象研究所の和田章義室長
「台風9号が朝鮮半島に上陸してから10号が東シナ海に向かうまでの期間が比較的短かったため、海面が雲に覆われ、衛星から水温を推計して予測に使うデータとして入手することができなかった」として、予測の難しさを指摘した。
 
②琉球大学の伊藤耕介準教授(台風のメカニズムに詳しい)
「海面水温のデータは、気象庁の台風予報に使われているものの、数週間分のデータを平均する形となっていることから、今回のように短期間で起きる海面水温の極端な変動は組み込むことができないのが実情」
「今後は、より現実に近い海面水温のデータを把握する仕組み作りに取り組むべきだ。」
 
 
 
 
以 上