メキシコの治療施設に頼るアメリカ人です

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私は、常々公言しております通りNetflixの大ファンですが、
中でもネトフリのオリジナル作品というのに注目しているんですね。

女子高生の自殺問題を扱った「13の理由」や
様々な刑務所の模様を取り上げた「世界の刑務所シリーズ」などは、
依存症啓発のお手本としても、見習うべきところが多々あります。
是非、多くの方々にご覧いただきたいと思ってます。

そしてこのネトフリの中に「世界のバズる情報局」としてですね、
バズフィードさんの番組があるんですね。
これはバズフィードさんらしい、大手メディアでは注目されないような、
様々な社会問題に注目して、取り上げていく番組なんですけど、
その中で「更生ツーリズム」という回があったので、
これは!と思い早速見てみました。

rehab tourismを「更生ツーリズム」と訳しちゃうのはやめて欲しいなぁ~と思いますけど、
それはともかく、内容にはぶっ飛んでしまいました!

だって我々って、依存症の治療と言えばそりゃもうアメリカ!ってな感じで、
アメリカの様々なリハブ(回復施設)に視察に行き、少しでも真似して取り入れたい!
って思ってきたわけじゃないですかぁ~。

ところが、この番組では「アメリカには良い治療法がない!」ってことで、
メキシコの回復施設にすがっていった人達を取り上げていたんですよ。
「ひぇ~!あんな立派な回復施設をいくつも持ってるアメリカでそんなこと言ったら、日本なんてどうなるのさ~!」
と、のけぞって驚いちゃいましたが、でもそれだけ依存症って回復率が悪いってことなんでしょうね・・・
番組では2つのパターンが取り上げられていたので今日はそれをご紹介しますね。

そもそも何故メキシコなのか?と言えば、
規制が緩いから、他国では許されないような取組みがメキシコでは許されるというのです。
そのためにアメリカから多くの依存症者が、メキシコに渡ってくるのだそうです。
そして回復施設は、半分が自国メキシコ人、半分はアメリカからの遠征組という状況になっているのだそうです。

まず1つめ回復施設。
これは幻覚剤の「イボガイン」を使う治療なのだそうです。
イボガインは1960年代から、アメリカでは違法となっており、
そのせいであまり研究も進んでいないそうです。
でもイボガインはオピオイド依存の解毒作用があるので、
接種時に身体的な依存を軽減させる効果があるのだそうです。
でも、そのメカニズムは解明されていない。

んで、2016年にニューヨーク大学の先生も、イボガインを使って、
オピオイド依存の人に効果があるか、研究してみた所イボガイン接種の30日目には、
半分の人が薬物を辞めていて、これは従来の治療より効果的なのだそうです。
だけど、イボガインの使用は心拍数を下げたり不整脈の危険があるし、
とにかくメカニズムがわかっていないので、慎重にならざるを得ないんだそうなんです。

でもメキシコは禁止されてないから、使っちゃおう!という回復施設が現れた!
その施設を作ったのも、シカゴ出身のアメリカ人で元薬物依存症の当事者。
この方自身もありとあらゆる治療法を試してこられたけど、どれも効かなかったそうで、
唯一このイボガインを使った治療法で、回復できたのだそうです。
イボガインを使うと「明晰夢」のような体験が得られて、
その後からセラピストとの治療を始めるとのことでした。
そしてこの治療施設には、一日5人の患者が「アメリカにない治療」を求め、
国境を超えやってくるのだそうです。

なんだか、AA初期の頃、ビルがアルコールをやめるのにLSDを使って、
周りにたしなめられたというエピソードに似ていますよね・・・

さて次の事例。
こちらはですね普通の回復施設なんですけど、
普通と違うのは、何と入寮者を軟禁しちゃうんです。
みなさんご存知の通り、回復施設っていうのは、
閉じ込めておくところではないので、本人が「出たい!」と言えば、
普通に出ていくことが可能です。

それは日本もアメリカも同じです。
だって人権がありますから、今どき精神科の病院だって、
よっぽどのことがない限り閉じ込めておく事なんて不可能ですよね。
ところがメキシコでは、軟禁が許されちゃうわけです。

24時間、警備員が監視しているシステムで、出入り口には鉄格子があり、
途中で退寮が許されるのは、家族がOKの署名をした時のみ。
150人いる入寮者のうち、アメリカ人とメキシコ人が半々だそうです。

ナレーションで
「アメリカでは意志に反する拘留は困難。だが救えるなら何でもする家族もいる」
という言葉があり、胸に迫る想いがありました。

この言葉、私もご家族に何度も言われましたよ。
「無理矢理でも連れて行って欲しい。」
「施設に入ったら、脱走できないように閉じ込めて欲しい。」
もちろんそんなことできないですけれども、
そうでもしなくちゃ救われない!という悲痛な想いのご家族がいることもまた事実です。

そして入寮者の中にも
「自由に出れないのがいい。そう見えなくても、僕には必要なんだ。」
と答えている人もいました。

この人は、アメリカで他の回復施設を試したそうですが、
出たい時に出れるので、2日程で出てしまい、
出るとすぐ、離脱症状に襲われ再使用してきたそうです。

すごく残酷な話しですよね。
でも、この現実も依存症のまた一つの側面だと思っています。
絶対的な善も、絶対的な悪もない・・・そう思いました。

よく仲間が捕まると「よかった!これで死なないで済むよね」
ということを我々は言います。
それほど心配で眠れぬ夜を過ごし、無事に生き抜いて欲しいと願い、
警察に捕まったことでホッとする、普通なら有り得ないほど絶望的な家族の想い。

依存症問題は本人支援にばかり目が行き、
家族についてはないがしろ、最近では
「回復させるのも家族の役割」「管理監督が家族の役割」
と言わんばかりのものが出てきて我々危惧していますが、
限界を助け合いながら生きている、家族のことをもっと知って欲しいし、
家族の支援体制も強化して欲しいと思います。

そしてこのトピックの最後を、担当記者はこんな言葉でしめくくります。
「彼女のような人々が、実験的な治療や監獄同然の施設にすがる。
アメリカで良い治療がないから。アメリカは依存症の国民を支援すべきだ。
更生ツーリズムは極端だが、今、研究への投資が求められている。」

アメリカのアルコール・薬物依存症の対策費は500億円と言われています。
日本はどうでしょうか・・・今年の予算要求アルコール、薬物、ギャンブル含めて8.1億円です。
この世界とはかけ離れた日本の現状。あなたはどう思われるでしょうか?

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現在国内の推定罹患者320万人(2017年厚労省)のギャンブル依存問題。
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三代目ギャン妻の物語(高文研) ギャンブル依存症(角川新書)

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