田植えの季節を迎え、どの用水路にも水がこんこんと流れている。
だが、豊かな水の中に生き物の姿はない。
コンクリートで直線化され、必要な時期以外水を通さない用水路には、生き物が住む場所がないのである。
今、メダカやドジョウといった身近な魚が絶滅危惧種になっているという。
かつてこうした魚は、小川や用水路を住みかとしていた。
今のようにコンクリートで被われず、一年中水のとぎれることがなかった水路で人間と共存して生きてきたのである。
田への水供給機能のみを追求した現代の水路では、こうした生き物が絶滅するのは当然の結果であろう。

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近年、河川の三面張りや直線化が反省され、生物が住みやすく、洪水にも対応でき、見た目にも潤いがあるよう改良する工事が行われるようになってきた。
用水路にしても、現代の土木技術を駆使すれば、水供給と生物多様性を両立させることは十分可能なはずである。

心安らぐ農村風景を取り戻すためにも、全国の用水路を多自然型に改良することを「春の小川復活事業」として農水省に提案したい。
「美しい国」づくりに直結する事業ではないだろうか。

写真:自宅近くの古い用水路に生息する魚。
泥が積もり水草が生えている用水路には、生物がもどってきます。