グリホサート、安全神話の終焉  人体への健康被害明らかに ←---クリック(こちらのリンクから転載させていただきましたm(_ _ )m

 

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天笠啓祐|2019年8月26日2:49PM

除草剤「ラウンドアップ」の主成分であるグリホサート。本欄でもたびたびお伝えしていますが、米国ではグリホサートによる健康被害で多くの訴訟が進行中。また被害を認める判決が出ました。

5月13日、米カリフォルニア州アラメダ郡裁判所陪審は、グリホサートががんを引き起こす原因だったとして訴えた被害者夫妻に勝訴評決を下し、モンサント社を買収したバイエル社に対して20億5500万ドル(約2200億円)の支払いを命じた。

【グリホサートによる健康被害】

内容は、被害者夫妻に対して総計5500万ドルの損害賠償、さらに1人当たり10億ドルという高額の懲罰的損害賠償の支払いを命じたもの。現在76歳のアルバ・ピリオドは2011年に、現在74歳の彼の妻アルバータ・ピリオドは2015年に非ホジキンリンパ腫の診断を受けた。これによりグリホサートとがんをめぐる裁判は、3回連続の被害者勝訴となった。

これまで判決が下された訴訟以外に、現在、約1万3400件も訴訟が起きており、これからも被害者への支払いが累積していくことが予想される。この評決を受けて、バイエル社の株価はさらに6・8%下落し、昨年6月にモンサント社を買収して以来、約40%下落したことになる。

世界的にグリホサートの有害性が焦点になり、人体汚染の検査が進んでいる。日本でも、5月21日にデトックス・プロジェクト・ジャパン(代表・山田正彦元農林水産大臣ほか)が設立され、グリホサートの人体汚染の検査が始まることになった。その設立に先駆け、国会議員23人を含む28人の髪の毛の検査が行なわれ、途中経過ながら数値が発表された(図1)。

それによると、何らかの農薬が検出された人が21人。グリホサートとその分解生成物であるAMPAが検出された人が19人で、グリホサートが定量限界以上検出された人が4人だった。日本でも確実に人体汚染が進行していることが示された。なおAMPAは、グリホサートが分解してできるもので、グリホサートで汚染されていることが示されると同時に、AMPA自体の毒性が強いという、仏カーン大学の研究結果もある。

【市販食パンにも残留】

人体汚染の原因であるが、食品による摂取と環境中への散布で被曝したことがあげられる。日本では、農地以外にも公園や河川敷、校庭や空き地などで散布されており、環境中への散布で被曝するケースもあるが、多くが汚染食品によるものと考えられる。農民連食品分析センターが国内で販売されている食品の汚染調査を続けているが、現在、最も深刻なのが、小麦である。

特に汚染度が高いのが北米産で、その小麦から作られるパンの汚染度も高い。同センターがまとめた農水省の分析データでも、北米産の小麦でのグリホサート検出率は高く、米国産は97%、カナダ産は100%で、オーストラリア産の16%、フランス産の13%に比べて高い(2017年)。

同センターの検査によると、特にパンに用いる強力粉が高く、全粒粉だとさらに高い傾向にある。実際にパンを検査すると、山崎製パン、敷島製パンなど一般に市販されている食パンから軒並み検出される(図2)。しかし、汚染はそこにとどまらない。それ以外に、ビールやワインなどからも検出されている上に、遺伝子組み換え作物に広く使われていることから、さまざまな食品が汚染され、人体汚染をもたらしていると思われる。

米国での裁判では、グリホサートと非ホジキンリンパ腫の関係が示されたが、その裏付けとなる調査も行なわれている。農薬に曝露して危険な状況にある357万4815人の農民および農業従事者を調査したところ、そのうち31万6270人ががんを発生させ、そのうち2430人が非ホジキンリンパ腫だった。

その非ホジキンリンパ腫にかかった人で、グリホサートをよく使う人と、農薬を限定しないで使う人を比較したところ、グリホサートをよく使う人が非ホジキンリンパ腫にかかる確率が高いことが示された。この研究は国際がん研究機関(IARC)のマリア・E・レオンらが行なったもので、『国際疫学ジャーナル』(3月18日)に掲載された。

さらにはグリホサートなど農薬と自閉症との関係についての調査も発表された。出生前および出生後1年目までにグリホサートなどの農薬に曝露した子どもが、曝露していない子どもに比べて、自閉症スペクトラム障害(ASD)になるリスクが高いことが示された。

調査したのはカリフォルニア大学のオンディーヌ・S・フォン・エーレンシュタインらの研究チームで、ASDの子どもの母親2961人(そのうち知的障害を伴うASDは445人)と、同世代の母親3万5370人を比較したところ、グリホサート、クロルピリホス、シアジノン、マラチオン、アベルメクチン、ペルメトリンとASDの関連が疑われた。また知的障害を伴うASDの場合は、グリホサート、クロルピリホス、シアジノン、ペルメトリン、臭化メチル、ミクロブタニルが高い関連性を示したという(『BMJ』3月20日)。

【生殖分野にも影響】

そしてもうひとつ、深刻な影響を示す研究結果も『ネイチャー・サイエンティフィック・リポート』(4月23日)で発表された。グリホサートによる次世代以降の影響である。研究を行なったのはワシントン州立大学のマイケル・スキナーらの研究チームで、グリホサートに曝露したラットの子孫には、前立腺、腎臓、卵巣の疾患や、出生異常が見られた。原因は、精子での遺伝子のスウィッチ役の変化がもたらした遺伝子の機能の変化と見られている。第2世代では肥満に加えて、精巣、卵巣、乳腺の疾患が著しく増加していた。第3世代では、オスに前立腺の疾患が増え、メスに腎臓の疾患が増えていた。2代目の母親の3分の1が妊娠せず、3代目ではオスメス合わせその5分の2が肥満だった。次世代以降への影響を示したこの結果は深刻である。

以前、モンサント社は「ラウンドアップは安全」という宣伝を繰り返していた。その結果、いつの間にかグリホサート安全神話が形成されていた。この神話はものの見事に崩壊した。グリホサートを早急に禁止する必要がある。

(天笠啓祐・ジャーナリスト、2019年6月14日号)

 

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