中国政府の香港マカオ事務弁公室のスポークスマンは7日に発表した談話で、「香港にこれまで三権分立が存在したことはなかった」との見解を示した。さらに、三権分立が必要だとする考えは香港における憲政秩序への挑戦だとし、「根本的に改め、ひっくり返ったものを元に戻さないといけない」と主張した。

 香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は1日に、「香港に三権分立はない」と述べており、談話は中国政府としてこの立場を正式に支持したものだ。同弁公室は、香港の教科書から三権分立の記述が削除されていることについても「支持する」と強調。香港に三権分立が根付いていたという認識を改める考えを示した。

 香港ではこれまで、司法長官や終審法院(最高裁に相当)長官が、香港には行政と司法、立法会(議会)が監視し合う三権分立があると述べていた。しかし同弁公室は今回の談話で、香港が中国に返還される前の1987年、当時の最高実力者・鄧小平が「三権分立を導入し、英米のような議会制度を取り入れるのは不適切」と指摘していたと強調。香港は行政主導で、行政長官の上に中国政府があると主張した。

 香港では、立法会選挙に立候補する民主派の資格が取り消されたり、6月末に香港国家安全維持法が施行されてからは香港の司法権を超えて中国当局が捜査できるようになったりしている。また親中紙がこぞって三権分立は中国政府の香港への管轄権を弱めるたくらみがあるとのキャンペーンを繰り広げている。(広州=奥寺淳)