計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

今日は学会発表・・・の筈だった

2020年05月19日 | 気象情報の現場から
 今日は「日本気象学会2020年度春季大会」のポスターセッションで発表する予定でした。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から会場開催は見送られ、発表予稿集の発行をもって開催とする「誌上開催」となりました。

 私は研究題目「GSM地上とニューラルネットワークを用いた山形県内の降雪量解析の試み」の発表でエントリーしておりました。


 気象庁のスーパーコンピュータによる数値シミュレーション(数値予報)は、現在の天気予報の核となるものです。3次元空間をジャングルジムのような格子状(マス目)に分割し、その各格子点上における変数(気温、気圧、風、湿度etc.)の将来時点における値(格子点値)を計算して行きます。

 今回、この「格子点値(GPV)」の一部を入力変数(入力信号)、「地域内の降雪量の観測値」を出力変数(出力変数)として、この入出力パターンを人工知能(ニューロ・モデル)に学習させた後、これを基にした降雪量の予測を試みました。

 従来の研究では、入力変数(入力信号)には「ある1地点における高層(上空)の観測値」、また出力変数(出力信号)には「降水量の相対的な大きさ」を用いていました。この場合「降雪量が相対的に大きくなる領域(極大域)」を推定することはできますが、地点別の「降雪量の値そのもの」を対象とするものではありません。また数値予報の「格子点値」があるので、それを入力変数(入力信号)に用いた方が、より実用的な予測モデルになります。

 それでも、なかなか踏み切れなかったのは「アナログ」と「デジタル」の違いの問題があったからです。ニューロ・モデル(ニューラルネットワーク)は本来「デジタル信号(0か1)」を処理するものです。ただ、実際には内部処理でシグモイド関数を用いるため、0から1の任意の実数で取り扱うことが可能です。一方、気象変数はその大きさ(数量のスケール)がバラエティーに富む「アナログ」の数量です。こちらは0から1の範囲にとどまらないのは言うまでもありません。

 このような気象変数をニューラルネットワークで扱うためには、0から1の任意の実数(信号レベル)の形にスケール調整(変換)する必要があります。この辺の取り扱いが長年の課題でした。昨年の大晦日の前日にふと、この問題を解決するアイデアを見出し、正月返上でプログラム開発から学習データの作成、さらにその後もニューロモデルによる予測実験、発表予稿作成・提出・・・と1月はまさに怒涛の日々を駆け抜けました。この辺の話は過去の記事にも書きました。

 今回の実験結果では、特徴を適切に予測できた例もある一方、課題も見えてきました。何はともあれ、ニューロ・モデルの研究開発は「新たなステージ」に進んだので、今後も試行錯誤を続けるのみです。
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