夢を見るか? | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 種が異なる二体の宇宙人が自動通訳機を間に挟んで対話していた。

 「君は夢を見るか?」と一方の宇宙人が質問した。

 「夢とは何かな?この機械では翻訳できない単語のようだね」ともう一方の宇宙人が疑問を口にした。

 「そうか。君は夢を見ないのだね。どうやら君の種には夢という概念がないようだね。ひょっとして、そもそも睡眠もしないのかな?」

 「この機械の解説によると睡眠とは肉体的な活動力が極端に低下した状態を指すようだね。つまり、気絶が最も近い状態なのかな?それから、夢とは睡眠中の意識が体験する仮想現実であるらしい。つまり、妄想だね」

 「その認識であながち間違っていないと思うよ。ただ、僕の種は夜間はほとんど活動しないから暇過ぎて睡眠や夢を体験するように進化してきたのだけど、君の種は睡眠や夢をしないとすると夜の間は何をして過ごしているの?ひょっとして、夜も昼間と同じように活動しているの?」

 「夜間はたくさんの仲間達と一つの大きな巣の中に集合して歌を唱っているから退屈にはならないよ。へとへとに疲れて唱えない夜でも常に他の誰かが唱っているし、たくさんの仲間達と身を寄せていれば外敵が近付いてこないから心強いよ。気絶や妄想して過ごすよりもずっと楽しくて安全だよ」

 「確かに仲間達との合唱は楽しそうだけど、僕の種は睡眠をしっかりと取らないと体調が悪くなるからね」


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