口と耳の距離 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 種が異なる二体の宇宙人が自動通訳機を間に挟んで対話していた。

 「君は口と耳が随分と近い場所にあるのだね」と一方の宇宙人が指摘した。

 「そうかな?あまり近過ぎるとも思えないけどね」ともう一方の宇宙人は返事をした。

 「そんなに口と耳が近いと声を出した時に騒々しくて煩わしくないか?しかも、耳が七つもあるだろう?」

 「多少は騒々しいと感じるけれど、大した問題にはならないよ。声量や声色を調節すればいいだけの話だからね。君の方こそ随分と口と耳が離れているけれど、君の種では口は相手の耳に向けて話し、耳は相手の口に向けて聞くのか?」

 「なかなか察しが良いね。会話中は僕の耳は発言者の方に向けられるよ。」

 「しかし、だとすると、三人以上の会話には適していないのではないかな?君の耳は一つしかないだろう?」

 「それは大丈夫だよ。僕の耳は即座に発言者の方に向くようになっているよ。だけど、そのせいで僕はたまに耳が自分の身体の一部ではないかのようだという錯覚に襲われるよ。自分自身の意志ではなく、相手の発言に対応して反射的に動かされるのだからね」


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