手を握り合う | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 種が異なる二体の宇宙人が自動通訳機を間に挟んで対話していた。

 「私達は身体の動作で自分の気持ちを伝えるけど、君はさっきから表情が変わらないように見えるね。君は発言の内容以外に自分の感情を相手に伝える手段を持っているの?」と一方の宇宙人が質問した。

 「私達は自分の感情を伝える為に手を握り合うよ。手の平に感情によって変化する分泌液があり、その分泌液を受容する器官もある。だから、言葉だけに頼る会話は私にとっては少々頼りないような気がしているよ」ともう一方の宇宙人は答えた。

 「なるほどね。その分泌液の内容を解析して感情を示してくれる機能をこの自動通訳機にも持たせたいものだね」

 「分泌液の内容が解析されて情報として相手に伝達されたとしても私としては物足りないよ。例えば、幸福感を示す分泌液を受容すれば私達はさらに幸福な気持ちになれる。だから、私達は会話の間中、互いが幸せになるように努める。だけど、感情を情報として伝え合うだけなら相手と幸福感を共有できないからね」

 「そうか。君達の手は感情を共有し合う器官でもあるわけだ。すると、君の手が一つではなく、もっとたくさんあれば良かっただろうね。そうすれば、たくさんの幸せを得られたはずだろう?」

 「どうだろうね?たくさんの相手と手を握り合えば、その中の一つでも幸せではない手があれば幸せが完璧ではなくなるよね?だから、現状は悪くないと思うよ」


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