「Jerry's Mash」のアナログ人で悪いか! ~夕刊 ハード・パンチBLUES~

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明石のブルースマン「ハウリンメガネ」が贈る・・・「どこまでもヴァイナル中毒!」(第31回)《ロバート・フリップ&アンディ・サマーズ編》

2020-09-11 12:30:03 | 「ハウリンメガネ」の「ヴァイナル中毒」&more

やあやあ読者諸賢、
攻撃的な直射日光も多少和らいできたが
如何お過ごし?ハウリンメガネである。

コロナだ、自民党総裁選だ、
超大型台風だとニュースも騒がしく、
心の平穏を保つのもなかなかに難しい
そんな今日この頃である。

そういう時、
心の平穏を保つ手段の一つに
「何かに集中してみる」という手がある。
読書でも映画でも運動でも瞑想でも
お好きなものでよいのだけれど、
やはり筆者としては楽器を始めることを強くお勧めしたい。

部屋で楽器をポロポロと音を紡いでいくと
様々な情報で散漫になっていた意識が
段々と音だけに集中していき、
楽器を置く頃にはどこかスッキリした気分になれるものである。
秋の夜長も近づき、新しい趣味を始めるには
実にもってこいではなかろうか
(……なんて書いているが、最近楽器屋を覗くと
なにやらステイホーム推進のためか楽器を買う人が多いらしく、
にわかに品切れが多発している様子。いや、誠に結構)。

さて、そんなことを書いている筆者が
家でよくやる遊び練習がシーケンシャルなフレーズを
リズムを変えて延々と弾き続けるというもの。

まあ、これもキング・クリムゾン総帥、
ロバート・フリップ先生に近づくための
ディシプリン(鍛錬)なのだが、
やはりフリップ先生大好き男である筆者としては
このようなポリリズム的な練習というのは
やればやるほど瞑想状態に入っていく・・・
そんあ面白さがあり、ついついやってしまうわけです。
こーいうプレイに関係する盤といえば、
当然フリップ先生関係!

というわけで、今回の盤はこちら!

筆者のフェイバリットバンド、ポリス!
のギタリスト「アンディ・サマーズ」とフリップ先生
による84年作「Bewitched / Andy Summers, Robert Fripp」!

この二人が同郷の古い友人であることは
過去の当連載でも書いたが、
アンディさんとフリップ先生の連名作は
この盤と、この盤の前作となる
82年作「I Advance Masked」のみ。

発売年から分かるとおり、ポリスは分解直前、
クリムゾンはディシプリン期の最盛期
と二人とも脂の乗りまくっている時期である。

ポリスでの活動に飽き始め、
ポリスとは毛色の違うプロジェクトを始めたかった
そんなアンディさん。
フリップ先生に一緒に何かやらないか、と手紙を書いた。
当時、ディシプリン・クリムゾンの中で
「自分の自由にプレイできるスペースの少なさ」
に悩んでいた先生はこの誘いに大喜び。
アンディさんと二人、合宿状態で
優雅にお茶を楽しみながら(笑)
作ったのが82年の「I Advance Masked」。
そして、この時の制作がよほど楽しかったのか、
その2年後に再び二人合宿レコーディングを経て発売されたのが、
今回の「Bewitched」となる。

前作も今作もほぼアンディさんとフリップ先生の二人体制で、
ギターは勿論のこと、ベース、シンセ、ドラムマシン、
オマケにパーカッションなども二人でプレイしている為か、
どちらも二人のやりたい事だけをとことん注入した
グッド・ニューウェーブアルバムに仕上がっている。

……実をいうと、筆者、ギタリストとして好きなのは
「I Advance Masked」の方なのだ。
こちらはフリップ先生の色が強く、
ディシプリンやエクスポージャーに近い緊張感のあるプレイが満載で、
ギタリスト二人の共演という意味ではこちらのほうがいい!
と筆者は思っている。

ではなぜ、今回「I Advance Masked」ではなく、
「Bewitched」を取り上げたのか。
それは今回の話の枕にした楽器の練習、
という話につながる。

このアルバム、
アンディさん(左)とフリップ先生(右)による


「プレイの教材」とも言えるような作品なのだ。

実はこのアルバムの制作時、
フリップ先生はディシプリン・クリムゾンでのツアーを控えており、
2週間程度しか制作に関われず、
後半はアンディさんが全て仕上げている。
その為か、先述の通りフリップ先生色の強かった前作に比べ、
今作はアンディさんのカラーと先生のカラーのバランスがよく、
二人のプレイ、音の色分けが素晴らしくはっきりしているのである
(聴いていてもこっちはアンディさん、こっちはフリップ先生と分かるほど。
大体コードから発展させたプレイがアンディさんで、
シーケンシャルなアルペジオといつもの伸びやかなリードは先生)。

聴いていると
「あっ、これはロクサーヌのバッキングパターンだ!」
とか
「あっ、シェルタリング・スカイのソロの音運びだ!」
とか、
二人の過去の名演の分解がこれでもかと出てくる。
こういう「あの曲のプレイを発展させるとこうなる」
というのが演奏者には大変勉強になるわけで、
しかもニューウェーブギタリストの二枚看板である
二人のコンビネーションは抜群!
ブリュー&フリップとは別のツインギターの醍醐味が
みっちり詰まっている。

こんな風に「いい盤だなぁ」とただ感動するだけでなく、
「ああ、こうやってフレーズを変形させて使うんだな」
とか
「あ、このフレーズはこういう曲で使うとこんなに印象が変わるんだ」
という事に気がつくようになると音楽は倍、
いや、倍々ゲームで面白くなっていく。

だ!か!ら!皆さん!
是非楽器を始めてみて欲しい。
「生活を豊かにする」ということは
一つの物事を「多面的に楽しむ」ことに他ならない。

このコラムが
「あなたの生活を豊かにする」
そんなきっかけとなることを
筆者は強く願うものである。

《ハウリンメガネ筆》



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