【2019年名杙心愛生誕祭】Cat Crossing【便乗短編】 | あるひのきりはらさん。

【2019年名杙心愛生誕祭】Cat Crossing【便乗短編】

 心愛の誕生日に頂いたイラストから、短編を連想してみました。

 最初に断っておきますが、心愛は名杙直系でも特に能力が高いので(潜在能力だけなら統治より上です)、動物痕には取り憑かれません!!

 

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■Cat Crossing

 

 

「なっ、何なのこれぇっ!!「」

 とある平日の夕方、『仙台支局』内に響いた名杙心愛の大声に、同じ空間に居合わせた全員が彼女を見つめた。

 全員の視線を一気に集めた心愛は、応接用の椅子に座っている里穂の隣に立ち、持っていたスマートフォンを彼女へと向ける。

「ちょっ、ちょっとりっぴー!! この写真は何なのよっ!!」

「へ?」

 唐突に責められた里穂は、心愛が持っているスマートフォンを見つめ……「あぁ」と合点がいったように首を縦に動かす。

 画面に表示されているのは、里穂が心愛に送った、1枚の画像だった。

「ココちゃんが可愛いので、より可愛くなるように人気のアプリで加工してみたっすよ。名前が冷たそうなアレっすね!!」

 こう言って親指を突き立てる里穂に、悪びれたような様子はない。今この場には仁義がいないため、そんな彼女を諌める人もいない。

 心愛は里穂に気圧されつつ、ここで自分が負けてはいけないと、スマートフォンを握る手に力を込めた。

「加工って……っていうかこんな写真、いつの間に撮影してたの?」

「覚えてないっすか? この間、一緒にプリクラを撮影した時っすよ。その時にスマホに送ったデータをちょっといじったっす」

「……」

 言われると確かに、心当たりがある。とはいえあの時は里穂と2人だったので、まさか単体で引き抜かれていたなんて思いもしなかったのだ。しかもあの時はプリクラの落描き機能も使ったので、まさかそれが綺麗に消されて、自分の姿だけこんなになるとは……。

「りっぴー、凄いわね。心愛、割とガッツリ落書きしてたはずだけど、全部消えてるし……」

 画面を見つめた心愛がシミジミと呟くと、里穂はあっけらかんとした口調でこう言った。

「あ、それをやったのは私じゃないっすんえ。っていうか無理っすね!!」

「え? じゃ、じゃあ……誰がこんなことをしたの?」

「それは……」

 一瞬、里穂は言葉に詰まった後……心愛が向ける疑惑の目など意にも介さずに、いけしゃあしゃあと言い放つ。

 

「それは秘密っす!!」

「えぇーっ!! ちょっとりっぴー、そんなの……えぇ……」

 

 心愛に残ったのは、謎の技術で加工された、知らない自分の写真。

 削除しようと思って動かした指を止めた彼女は、しばし、画面の中の自分を見つめて……静かに電源ボタンを押した。

 折角だから、折角、作ってもらったから……このまま消さずに、少しの間だけ、無料通話アプリのアイコンにでもしてみようか。

 猫と縁があるあの人が、少しくらい、興味を持ってくれるかもしれないから。

 

 

■参考にしたイラスト