【2020年バレンタイン小話】味見係の特権【女子不在】 | あるひのきりはらさん。

【2020年バレンタイン小話】味見係の特権【女子不在】

※これから始まるバレンタイン小話に、女子は出てきません。

女子は、出てきません。

※これも全て、投票企画の結果なんです。

※ごめんなさい。

※バレンタイン当日の話じゃないです。

※反省してますん。

※前日譚ボイスドラマはこちら→https://mqube.net/play/20180214749747

※ミニキャラのイラストは、狛原ひのさんです。ありがとうございます!!

 

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 バレンタイン間近のある日、お世話になっている人のために手作りチョコレートを用意しようとしていた名杙統治だったが、妹の心愛からキッチンを追い出された。

「いいから出ていって!! とりあえず3時間くらいどっか行ってて!!」

 激しく拒絶されて閉ざされた扉。閉まる直前、その場に居合わせた透名櫻子が申し訳無さそうな顔をしていたが……彼女が止めに入らないということは、櫻子も心愛側ということになる。要するに、自分の味方ではない。

 とはいえ。

「……」

 このまま……自宅のキッチン前で律儀に待つのは時間が勿体ない。

 と、いうわけで。

 統治は材料一式を持って、自由に使える第2の台所がある政宗の部屋へと向かった。

 

「これだけチョコのニオイがすると、バレンタインって気がするよな」

 二つ返事でキッチンを明け渡した政宗は、チョコレートを湯煎している彼の隣に立つと、ボウルの中を覗き込む。統治は特に表情を変えることなく手を動かしながら、頭の中で誰に何を渡すのかを数え始めていた。

「なぁ統治、今年は何を作るんだ?」

「チョコクランチだ」

「おっ、美味そうだな。ケッカも俺も大喜びだ」

 こう言って楽しそうに笑う政宗を、統治は横目でみやり……ため息交じりに呟いた。

「……もらえる前提で語るのはおこがましくないか?」

 刹那、政宗が口をとがらせて反論する。

「何だよ統治、俺とケッカに渡すチョコはないっていうのか?」

「予定は未定だ。確実に渡すべき相手を優先した場合は、どうなるか分からないからな」

「分かってるよ。ただ、俺は味見係だから、絶対に一つ食えるけどな!!」

 そう言って胸を張る政宗に、統治はジト目を向けるしかない。

 どうして彼はこうも自信満々に、こんなことを言ってのけるのだろうか。

「味見係など、頼んだ覚えはないんだがな……」

 呆れ混じりに言葉を紡ぐ統治に、政宗は首を横に振った。

 そして、過去から得た確証と共に彼を見つめ、自信満々に口を開く。

「統治、チョコの出来を客観的に教えて欲しいって、毎年絶対味見させてくれるんだぞ。今、この部屋には俺と統治しかいないんだから、今年も俺が味見係になるのは確定事項なんだよ」

「……」

「今年も一番に食べられるの、楽しみにしてるよ。勿論、俺の評価は甘くないからな」

 そう言って屈託なく笑う彼に、統治は思わず毒気を抜かれて……肩をすくめた。

 同じ時間を多く過ごしてきて、良い意味で遠慮をしない彼に味見をしてもらえば……今年もきっと、誰に渡しても恥ずかしくない一品に仕上げることが出来るから。

 

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 ……これでいいのかな?(笑)

 投票企画にご協力いただいた皆様、ありがとうございました!!