ネクロマンサーの一言
09 16, 2020 | Posted in TRPG | Thema ゲーム » TRPG
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生前のシルヴィアは、フルネームをシルヴィア・ランカスターといい、英国貴族の末裔であった。
家格は子爵と取り立てて高いわけではなかったものの、祖父のグレイソン・ランカスターは海軍大将まで昇進しており、父のウィリアム・ランカスターも海軍中佐を務めていたときに最終戦争で戦死した、生え抜きの軍人の家系である。
メンタルが芸術家気質で家を出奔した兄の存在もあり、シルヴィアは弟妹の規範になりたいと感じて海軍幼年士官学校からエリート軍人の道を歩む。しかし、シルヴィアは生まれつきに呼吸器に疾患を抱えていた。
一般教養や軍事学の成績では首席を修めたシルヴィアだったが、軍人としての考査には「前線での任務には耐えず」との結論が出された。
「自ら武器を手に戦う気概のない者は、真の軍人とは言えぬ」と考えるシルヴィアにとっては、この結果は恥辱と感じられた。
戦士たるべきランカスター家の後継として、弟妹に顔向けができなかった。
虚しく後方勤務を覚悟していたシルヴィアは、海軍科学研究所の役職研究者を名乗る男から接触を受ける。
「海兵隊員の肉体の強靭化を図るための被験者の募集」そう説明する男に、普段の冷利なシルヴィアであれば胡散臭さからの拒否感を感じていただろう。しかし、戦士としての道を断たれた失意の彼女にとってはそれが悪魔の囁きであろうと、天界から垂らされた蜘蛛の糸のように感じられた。
昨年の11/25、今年の2/11、7/21、9/14と4回続いた、「長い後日譚のネクロニカ」のキャンペーンが終わりました。
銃砲爆撃・各種NBC兵器に耐える耐久力、右目に内蔵された溶断破砕生体レーザー、軍のあらゆる兵器に接合制御可能なバイオアタッチメント。中枢神経系以外の肉体の95%をバイオパーツに置き換えたシルヴィアは冷利な理想的軍人と軍部に高く評価され、16歳にして少尉から中尉へと昇進する。
しかしまれに中枢神経への情報交錯が発生する。人間と怪鳥のキメラ、身体各所に重火器を内蔵・多腕化した改造兵士、人間を食い破り擬態する殺人虫群……
自分に紛れ込んでくる情報の裏付けを取るために、シルヴィアは科学研究所のデータベースをハッキングする。
各種生体兵器の開発意図……研究所の設立意図……シルヴィアはこの戦争の勃発原因自体が、経済摩擦や民族問題などではなくあの役職研究員が自分の研究成果を実践するために壮大に仕組まれたものであることを知る。
そして謎の「粘菌」に関しての記述。シルヴィアのバイオ兵士としての研究価値は、この研究中の「粘菌」と融合することで無限の再生力を生み出すことにあるらしい。
身内の平穏・自らの矜持のための戦いであるならば命を懸ける価値もある。だがそれが個人のエゴのために引き起こされたものならば、それに操られるのは我慢ならない。シルヴィアは役職研究員の元に赴き拳銃を向ける。
落ち着き払った研究員は言い放つ。「ランカスター中尉、君の脳幹部分に君を制御するためのユニットを埋め込まないでいると思うのかね?」
当然の保険だろうな。ただの気狂いではなかったか。そう思うと同時に全身の感覚を失いシルヴィアは床に突っ伏すように倒れ込む。
遠くから連続する爆撃音が近づいてくる。後に最終戦争と呼ばれるこの戦いが最終フェーズに入ったのだ。
「私を認めなかったこの間違った世界はスクラップビルドされるべきだ。そして私の作品が正しい存在であると証明され、私は新たなる世界の創造主となるのだ!!」
道化が。そう研究員と自分の双方を嘲りながらシルヴィアの意識は失われた。
=====================================================
キャンペーンに飢えていたこともあり、久々のキャンペーンでしたが、コロナの影響もありながーいスパンでようやくケリがつきました。
メインクラスの「ステーシー」というのは、いわゆるタンクです。
タンクは好んでやりたがる人がいないのですが、俺にはフラッグPCのシルヴィアという便利なタンクキャラがいます。
今回は16歳の現代シルヴィアに転生です。
既存キャンペーンのネタバレになるので詳細は伏せますが、最終戦争後・PCも全員ゾンビ―・この先に具体的な明るい未来が特に見えない、というスタンスでリアリストであるシルヴィアが年下の他PC達を先導して動くというのは、なかなか難しいものがありました。
しかしそんなことを言っていてもキャンペーンは進みません。失われた記憶と現実を追い求めて、シルヴィアは他PCらとわずかな手掛かりで放浪します。
基本的にキャラクタープレイを通じて、あれこれ情報を探って話が分岐するという意味では薄味のキャンペーンでした。ちょちょっと会話があって軽くキャラプレイをしつつ、自動的にボードゲームライクの戦闘パートに入るという4連バトル風情です。
戦闘はかなりPLのノウハウを要求されるタイプで、正直他のPCがどういう能力で何をやっているのかは最後までよく分かりませんでした。物凄い勢いで何回も攻撃していたようなw
(自PCの防御に特化していた作りしか把握していない)
「まぁ既存のキャンペーンだし、まぁバトルメインのライトなものになってしまうのも仕方ないよね」そう思って終わった4回でしたが、終盤に誰だかが一言を発しました。
「ドール(PC達であるゾンビ)には生きていくのに必要なものは無いの?」
それに答えるGMであるところの"ネクロマンサー"曰く、
「ドール達に唯一必要なものは、正気を保つためのドールの仲間です」
PCらはそれぞれ、ゾンビ―となってしまった悲劇に対する美しいトラウマがあり、それらが傷つくたびにCoCライクに狂気に近づいていくので、PC同士で慰め合う(口の悪い表現をすれば傷をなめ合うw)ことにより狂気を減らすというシステムなのです。
このGMの言葉で俺の中にキャンペーンが終わった後のエピローグが浮かびました。
ならば、ドールによる国家を新たに樹立すればいい。
自分達に友好的な死者の仲間を増やし、秩序ある新社会を作り出して平和に暮らせるようにするのだ。
ドールを作り出すには、「ネクロマンサー」の知識と技術を習得すればいいとのこと。
そして、ドール自身がネクロマンサーになっている例もあるとのこと。
第一話でネクロマンサーの根城も発見している。
ならばやるっきゃないでしょ。
シルヴィアは他PC達とネクロマンサーの根城へと再び向かう。
ネクロマンサーの技術がタブーかどうかなどは考えない。最早この世界には秩序などないのだ。
新たなる秩序と社会は自ら作り上げる。初ネクロニカのシルヴィアは、新たなネクロマンサーとなるべくエンディングを終えることとなったのでした。
家格は子爵と取り立てて高いわけではなかったものの、祖父のグレイソン・ランカスターは海軍大将まで昇進しており、父のウィリアム・ランカスターも海軍中佐を務めていたときに最終戦争で戦死した、生え抜きの軍人の家系である。
メンタルが芸術家気質で家を出奔した兄の存在もあり、シルヴィアは弟妹の規範になりたいと感じて海軍幼年士官学校からエリート軍人の道を歩む。しかし、シルヴィアは生まれつきに呼吸器に疾患を抱えていた。
一般教養や軍事学の成績では首席を修めたシルヴィアだったが、軍人としての考査には「前線での任務には耐えず」との結論が出された。
「自ら武器を手に戦う気概のない者は、真の軍人とは言えぬ」と考えるシルヴィアにとっては、この結果は恥辱と感じられた。
戦士たるべきランカスター家の後継として、弟妹に顔向けができなかった。
虚しく後方勤務を覚悟していたシルヴィアは、海軍科学研究所の役職研究者を名乗る男から接触を受ける。
「海兵隊員の肉体の強靭化を図るための被験者の募集」そう説明する男に、普段の冷利なシルヴィアであれば胡散臭さからの拒否感を感じていただろう。しかし、戦士としての道を断たれた失意の彼女にとってはそれが悪魔の囁きであろうと、天界から垂らされた蜘蛛の糸のように感じられた。
昨年の11/25、今年の2/11、7/21、9/14と4回続いた、「長い後日譚のネクロニカ」のキャンペーンが終わりました。
銃砲爆撃・各種NBC兵器に耐える耐久力、右目に内蔵された溶断破砕生体レーザー、軍のあらゆる兵器に接合制御可能なバイオアタッチメント。中枢神経系以外の肉体の95%をバイオパーツに置き換えたシルヴィアは冷利な理想的軍人と軍部に高く評価され、16歳にして少尉から中尉へと昇進する。
しかしまれに中枢神経への情報交錯が発生する。人間と怪鳥のキメラ、身体各所に重火器を内蔵・多腕化した改造兵士、人間を食い破り擬態する殺人虫群……
自分に紛れ込んでくる情報の裏付けを取るために、シルヴィアは科学研究所のデータベースをハッキングする。
各種生体兵器の開発意図……研究所の設立意図……シルヴィアはこの戦争の勃発原因自体が、経済摩擦や民族問題などではなくあの役職研究員が自分の研究成果を実践するために壮大に仕組まれたものであることを知る。
そして謎の「粘菌」に関しての記述。シルヴィアのバイオ兵士としての研究価値は、この研究中の「粘菌」と融合することで無限の再生力を生み出すことにあるらしい。
身内の平穏・自らの矜持のための戦いであるならば命を懸ける価値もある。だがそれが個人のエゴのために引き起こされたものならば、それに操られるのは我慢ならない。シルヴィアは役職研究員の元に赴き拳銃を向ける。
落ち着き払った研究員は言い放つ。「ランカスター中尉、君の脳幹部分に君を制御するためのユニットを埋め込まないでいると思うのかね?」
当然の保険だろうな。ただの気狂いではなかったか。そう思うと同時に全身の感覚を失いシルヴィアは床に突っ伏すように倒れ込む。
遠くから連続する爆撃音が近づいてくる。後に最終戦争と呼ばれるこの戦いが最終フェーズに入ったのだ。
「私を認めなかったこの間違った世界はスクラップビルドされるべきだ。そして私の作品が正しい存在であると証明され、私は新たなる世界の創造主となるのだ!!」
道化が。そう研究員と自分の双方を嘲りながらシルヴィアの意識は失われた。
=====================================================
キャンペーンに飢えていたこともあり、久々のキャンペーンでしたが、コロナの影響もありながーいスパンでようやくケリがつきました。
メインクラスの「ステーシー」というのは、いわゆるタンクです。
タンクは好んでやりたがる人がいないのですが、俺にはフラッグPCのシルヴィアという便利なタンクキャラがいます。
今回は16歳の現代シルヴィアに転生です。
既存キャンペーンのネタバレになるので詳細は伏せますが、最終戦争後・PCも全員ゾンビ―・この先に具体的な明るい未来が特に見えない、というスタンスでリアリストであるシルヴィアが年下の他PC達を先導して動くというのは、なかなか難しいものがありました。
しかしそんなことを言っていてもキャンペーンは進みません。失われた記憶と現実を追い求めて、シルヴィアは他PCらとわずかな手掛かりで放浪します。
基本的にキャラクタープレイを通じて、あれこれ情報を探って話が分岐するという意味では薄味のキャンペーンでした。ちょちょっと会話があって軽くキャラプレイをしつつ、自動的にボードゲームライクの戦闘パートに入るという4連バトル風情です。
戦闘はかなりPLのノウハウを要求されるタイプで、正直他のPCがどういう能力で何をやっているのかは最後までよく分かりませんでした。物凄い勢いで何回も攻撃していたようなw
(自PCの防御に特化していた作りしか把握していない)
「まぁ既存のキャンペーンだし、まぁバトルメインのライトなものになってしまうのも仕方ないよね」そう思って終わった4回でしたが、終盤に誰だかが一言を発しました。
「ドール(PC達であるゾンビ)には生きていくのに必要なものは無いの?」
それに答えるGMであるところの"ネクロマンサー"曰く、
「ドール達に唯一必要なものは、正気を保つためのドールの仲間です」
PCらはそれぞれ、ゾンビ―となってしまった悲劇に対する美しいトラウマがあり、それらが傷つくたびにCoCライクに狂気に近づいていくので、PC同士で慰め合う(口の悪い表現をすれば傷をなめ合うw)ことにより狂気を減らすというシステムなのです。
このGMの言葉で俺の中にキャンペーンが終わった後のエピローグが浮かびました。
ならば、ドールによる国家を新たに樹立すればいい。
自分達に友好的な死者の仲間を増やし、秩序ある新社会を作り出して平和に暮らせるようにするのだ。
ドールを作り出すには、「ネクロマンサー」の知識と技術を習得すればいいとのこと。
そして、ドール自身がネクロマンサーになっている例もあるとのこと。
第一話でネクロマンサーの根城も発見している。
ならばやるっきゃないでしょ。
シルヴィアは他PC達とネクロマンサーの根城へと再び向かう。
ネクロマンサーの技術がタブーかどうかなどは考えない。最早この世界には秩序などないのだ。
新たなる秩序と社会は自ら作り上げる。初ネクロニカのシルヴィアは、新たなネクロマンサーとなるべくエンディングを終えることとなったのでした。
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