庭のない我が家では、ささやかな花壇が玄関前にあります。
連れが、忙しい中植えてくれた花々が、美しく玄関先を彩ってくれています。
ジャスミンは去年から、そしてモッコウバラも3年越しでやっと蕾をつけました。
連れが戻ってくる5月の頭には、ジャスミンが満開で、
よい香りで迎えてくれるでしょう
そして、毎年のようにコンクリートの割れ目から咲きだすシクラメン。
鉢植えのものは、家の中に置いたらいたずらっ子たちにひっくり返され、
掘られて枯れてしまったのに。
なんと健気なことでしょう
毎年、このシクラメンを見るたびに思い出す詩があります。
「新緑の頃」高村光太郎
青葉若葉に野山のかげろふ時
ああ植物は清いと思ふ
植物はもう一度少年となり少女となり
五月六日の日本列島は隅から隅まで
濡れて出たやうな緑のお祭
たとへば楓の梢を見ても
うぶな こまかな仕掛け満ちる
小さな葉っぱは世にも叮寧に畳まれて
もっと小さな芽からぱらりと出る
それがほどけて手をひらく
晴れれば輝き 降ればにじむ
人なつこく風にそよいで
ああ植物は清いと思ふ
さういふところへ昔ながらの燕が飛び
夜は地蟲の声さへひびく
天然は実にふるい行状で
かうもあざやかな意匠をつくる
私も心を込めて感動のため息とともにつぶやきます。
「ああ植物は清いと思ふ」
こうやって、自然の妙の前に黙って首を垂れる瞬間が、
人間には必要なのかもしれません。
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