私は小さい時から、とても怖がりでした。

それなのに、私が小さかったときは、怖い漫画が非常に多く、
あいにくなことに、私は怖い漫画が大好きでした。
(他には、バレーボールもの、バレー(踊るほう)もの、も多かった)

マーガレットとか 少女フレンドなどの漫画雑誌があり、
女の子はこぞって読んでいました。
定期購読を許されている子は少なく、
買ってもらうことのできた子は、人に貸したり、
お互いに交換して、なるべくたくさん読もうとしていました。

ブツを取引するヤバイ場所は、そろばん塾とか、お習字の塾とか、
漫画雑誌を持って行っても怒られないところでした。

で、どの雑誌にしても、怖い漫画というのは、後ろの方にあった・・
ような気がします。
ページの色が、暗い薄緑とか、暗い薄ピンクだったりします。
そこにまた濁った紺とか、意味不明な沈んだ紫とか、
やっぱりどう組み合わせても「暗ぁい・・・」色調のインク。
鼻を近づけて嗅ぐと、つんとインクの匂いがするようでした。

そんなどんよりとした場所に、「怖い漫画」があるのです。
後ろの方に読み進めていくと、楽しみであるのに、

ああ・・アレを、もうすぐ読まねばならぬ

という恐怖感が、そくそくと迫ってきます。
ああ、そのへんを思い出しても あれは今でも怖い。


楳図かずお先生は、なぜか、男子の漫画の方ではなかったですか?
なかなか読む機会がなく、コミックになってからクラスの男子に借りたような。
昔だから忘れてしまったと言うよりは、
怖い漫画たちは、あまりに怖かったからか、もろもろの状況が、
なんだか霞がかかって、はっきりしません。
トラウマになっているのでしょうか。


でも、漫画はよく覚えています。

古賀新一先生は、「エコエコアザラク」に、
「呪いの顔がチチチとまた呼ぶ」とか?
それにしても、じ、人面疽!
いたいけな少女たちに見せるには、あんまりな設定ではないでしょうか。

また、「ママが怖い」。
読みすぎて、自分の母親まで、実は蛇女なんじゃないかって。
ちょっと ときどきマジで怖い時がありました。
母と二人きりになると、そっと上目遣いで母の顔を確かめたくなる・・。


あと、ちょっと題名を忘れちゃったのですけど、こういうのがありました。

ある少女(のちの白蛇少女)が、不注意な他人の行動で、
お母さんを殺されてしまいます。

加害者の方は最初のうち、気付いてもいません。
白蛇少女自身も、後追いか、ショックのあまりかで、
そのあと、亡くなってしまいます。

その子が可愛がっていたのが白蛇です。

親族が

お棺からその白蛇を出しなさい。

それが・・・どうしても離れようとしないのです。


というわけで、多分一緒に荼毘に付されたと思われます。

その白蛇が、少女の霊というか怨みにシンクロしたようです。
白蛇少女となって現れ、
自分の母を、故意でなかったとへいえ、殺した少女に対し、
これでもかこれでもかと、白蛇っぽい行動で、
いろいろ怖いことをしかけてくるんですね。

いくつもの話がごっちゃになっている可能性がありますが、
昔のことなので 話半分でお願いします。

とはいえ、この漫画については、1回目と最終回をよく覚えています。

1回目。
呪われる方の少女が、パパの運転する引越しトラックの中で、
ふざけて、後ろの座席から、(助手席だったかもしれない)

パパぁ〜

と、運転中のパパの首に、腕を巻きつけるのです。

パパはにやけて、

こらこら、危ないじゃないか、ははは!

などと喜んでいるのですが、これにより、
山道を走るトラックは、ハンドルさばきが乱れ、ふらつきます。
と、引越し荷物の上に、なぜか剥き出しで載っていた首の長い花瓶が
トラックから飛び出して落ちていきます。
(ここらへんが、わざとじゃない感を巧みに引き出しています)

偶然その落ちてきたところにて、ゴーンと頭に花瓶が当たって、

あっ!

と言って倒れ伏す、のちの白蛇少女のお母さん。


トラックの中で、

ははは!

などと言っている場合じゃないが、知らぬが仏の親子。

この、痛いほどのコントラスト・・・鳴呼!

怖すぎて今でも忘れられない1シーンは、白蛇少女のお葬式。
覚えているのは、棺に横たわった少女の・・・

目が、閉じてなくて、薄く開いているんですよね。
こわぁ〜い!

今でも記憶スケッチができるほどです。

で、その少女の首に、少女が可愛がっていた白蛇がからみついている。

首に赤いリボンで鈴がつけてあって、チリンチリンと鳴るんですよ。
こ、こわい!
(粗末な、おそらくリサイクル古紙の、カラーではない画面で、
赤いかどうかは全くわからないのですが、記憶でそうなっています)

そして、蛇の首って、どこらへんなの?
どうでもいいけど・・・。


連載2回目以降、怒りと悲しみをしょった、呪いの白蛇少女が
この「パパぁ〜」の、うっかり娘を追っかけ回すのは、
初回を読んだだけで火を見るよりも明らか。
復讐するは我にあり、やらないわけがない。

毎週毎週、倦まず弛まず、
本当にいろいろあるんですけれども、いよいよ最終回。

蛇っぽい顔をした呪いの少女が、いよいよ主人公の少女に迫ります。
今までただ、いたぶってきただけだけど、そろそろもう気が済んだようで、
うっかり娘を殺そうとしているようです。

するとそこへ、亡くなった、蛇少女のお母さんの幻が現れて、

恵美子ちゃん、もうやめてあげて。
お母さん悲しいわ。

みたいなことを言います。

(恵美子だったかどうかは覚えていません)

すると、すごく蛇っぽかった少女の顔が元の顔に戻り、

ママ・・・

と、幻のママの胸に抱かれて、あんなにいろいろあったのに〜😱
あっという間に、ここで物語が終わるのでした。

(簡単だった・・・・)

それが当時の私の感想です。



なんでここまで覚えているかと言うと、
ずっと大きくなってから、物もちのいい友達の家で、
この連載漫画のコミック本を読んだからだと思います。

本当に怖かったなぁ・・。




さて、怖がりなのに怖い漫画を読んでいた私には、
当然の報いとして、「夜が怖い」という症状が現れてしまいました。

当時私は、両親と姉と6畳間で寝ていたのですが、
薄情な姉は、寝つきがとてもよく、
怖がっている私を一人残して、すぐに眠ってしまいます。

今と違って子供は、どんなに見たいテレビがあろうと、
その日、眠れなかろうと、夜の8時とか9時とか、
寝る時間になると、問答無用で暗い部屋に追いやられます。

姉はすぐにスースーと寝息を立て始める。

天井を見ると、暗くて何も見えないのに、
人の顔や、蛇少女の目のように見える、(昼間に確認済み)
天井板の節穴が見えるような気がしてきます。

体を横向きにして、家の裏口にあたる、右側を見ますと、
長い髪をおどろに振り乱した、
「ママが怖い」のママが入ってくる気がする。

いやだいやだ、こわい、と思って、左側に寝返りを打ちますと、
今度は、「黒い猫面」で、お父さんに顔をメスで・・・
うう、みなまで言えませぬ、あ〜んなことをされちゃった猫娘が
玄関を開けて入ってくるような気がします。

私には、こわいものの定位置? が決まっていて、
寝つかれなかった夜は、母親が寝に来るまで、
あっち向いたりこっちむいたり、うつぶせになったり、
本当に苦しんだものでした。

そんなに怖くなるのだから読まなければいいのに、
発売日にはやっぱり、買ってもらう少女漫画誌を読んで震え上がり、
買ってもらえない雑誌もわざわざ借りて、こわい漫画を読む。

そういうアホ少女が、どんなふうに怖いもの好きに育って行ったか。

続きます。




自分の体にできてしまうのですから、逃げても逃げ切れない人面疽・・
「人面魚」っていうのも、昔いましたね。




今でも思い出しても耐え切れないほど怖い「黒い猫面」




いや〜、家でいつも待っていて受け止めてくれるはずのママが怖いなんて。
すごい人間心理を突いていますね!
「ママが怖い」です。




三つじゃなくて真ん中から二つに切れば問題なかった生春巻き





サンラータン