らぶばなです。みなさまご心配おかけいたしております。。。自分の入院ネタを元に、創作しています。自分のベッドからお届けしています(笑)来週はじめには退院できそうです!少しでもお楽しみ頂ければ幸いです。
〜もしも英二が病気で入院したら?〜
「僕たちの大切な時間」
第二話:アッシュの看病
「。。。ん」
英二は寝苦しい夜を過ごしていた。汗をかいて背中にベッタリとまとわりついたシャツが鬱陶しい。だがそれよりも不快なのは、うまく呼吸ができないことだった。両鼻が詰まっているせいで口呼吸をするしかない。時々痰が絡むものの、それを吐き出すのも困難なぐらい喉はジリジリと痛みがある。
息苦しくて何度も英二は寝返りを繰り返していた。シーツの擦れる音が聞こえる度にアッシュは目を開き、英二の様子を注意深く確認していた。
「。。。ハッ!」
呼吸を求めて思わず英二は上半身を起き上がらせた。暗闇に包まれた部屋の中、自分の携帯で時計を確認する。先ほど寝ついてからまだ2時間も経っていなかった。
頭をあげると少し鼻通りが良くなった気がする。
(この調子じゃ眠れそうもないな。。。)
ふぅっとため息をついて汗ばんだ肌着を変えようとパジャマを脱ぎ、上半身裸になる。冷気を直接感じて思わずブルリと震えた。着替えを取るために立ち上がった時、ふと視線を感じた。
目覚ましの音でも起きないはずのアッシュと目が合った。暗い部屋の中で、彼の緑色の瞳が一瞬光った気がした。それはまるで猫のようだった。
(。。。えっ? アッシュ?)
見間違いかと思ったが、彼の目はしっかりと開いていて意識もあるようだ。無言のまま英二を観察するように見ていた。その瞬間、なぜだか英二にも分からなかったがーまるで捕食される動物のように動けなくなった。
しばらくの沈黙の後、英二は掠れた声で静かに話しかけた。
「アッシュ。。。起こしてごめん。その。。。やっぱり。。。」
言いかけた言葉を遮るように、アッシュは衣装部屋を指差した。
「そんなことより、着替えてこい。寒いだろう」
「あ。。。うん」
急かされて英二は自分の着替えを取りに行った。
アッシュは立ち上がり、英二の寝ていたベッドを見た。サイドテーブルのティッシュ箱は随分使われていて、もうすでにゴミ箱はティッシュの塊で溢れていた。
今晩同室で寝るのは止めておこうと英二は言ったが、アッシュは同意しなかった。先ほどもまた言いかけたようだが、当然了承するつもりはない。
妥協案としてアッシュも英二と同様にマスクを付け、ベッドの位置を少し離すのなら良いことになった。
アッシュは部屋を暖め、加湿器を用意し、スポーツドリンクやビタミン剤をサイドテーブルに並べた。英二が眠りにつくまで英二のベッドの横で座っているつもりだったが、逆に眠れないからと英二に言われて諦めたのだ。ふだんよりも離れたベッドの感覚がどうにも落ち着かない。
(英二が眠ったあとで元に戻してやる)
たかが風邪くらいで大げさだと英二は笑うが、アッシュにとっては奥村英二という人間の生命が僅かでも脅かされる事が大問題なのだ。英二がつまずいて怪我をしても、大げさに反応してしまうだろう。
アッシュにとって最後に残された、自分の命よりも大切な存在なのだから。
のろのろと気だるそうに英二が戻ってきた。結局元の位置に戻っているベッドについて突っ込む余裕もないらしく、ポスンと自分のベッドに腰掛けた。
「ほら、水飲むか。。。?」
目の前に差し出されたペットボトルを見て、英二はコクリと頷いてそれを受け取った。アッシュは寝室から移動していないようだったが、ペットボトルは冷蔵庫から今さっき取り出したのではと思うほどよく冷えていた。
(あぁ。。。もう、君って本当に。。。)
きっとアッシュは眠らずに英二の様子を見ていたのだ。汗ばむ英二を見て、そろそろ必要かと思いよく冷えたものを取り出してきたに違いない。
不器用で包み込むようなアッシュの優しさをどう受けとめてよいか分からず、照れ臭さもあって英二は勢いよく水を喉に押し込んだ。
ふわふわとした気持ちになっていた英二は今朝の失敗をすっかり忘れていた。再び襲ってきた強烈な喉の痛みで、勢いよく水を吹き出してしまった。
噴水のように口から水が飛び出してきたのを見て、アッシュも英二も驚いた。英二のシーツは見事に全て吸い取ってベタベタだ。
「お、おい? 英二?」
「。。。ゴホッ!!」
眉間にシワを寄せて盛大に咳き込む英二の背中をアッシュは優しく何度も撫でた。ようやく落ち着いた後、英二はゆっくりと飲もうとするがうまくいかず、口から水を垂らしてしまった。それをアッシュはタオルで優しく拭いてくれる。
(僕のことは気にせず眠ればいいのに。。。)
英二も分かっていた。自分が体調不良になってしまったいま何を言ってもアッシュは納得しないし彼は眠ることも出来ないのだ。反対の立場ならきっと英二も同じだから分かる。少し心配だが、このまま黙って大人しく彼の好きにさせておく方がいいと判断した。
喉は焼けるように熱く、しかも耳から首筋にかけても腫れと痛みがでてきているのを英二は感じた。良くなるどころか悪化している状態にため息がでてくる。
(きっと。。。もっと迷惑かけちゃうんだろうな。。。)
ふっとそう思いながらも、目の前に心配そうに自分を見つめる翡翠色の瞳と目が合い微笑んだ。
(でもやっぱり。。。ホッとするや。。。)
年下を心配させてはいけないと思うが、アッシュがそばにいるとやはり安心する。わがままかもしれないが、少しの間だけ彼を独り占めさせて欲しいと願ってしまう。
アッシュは勝手に英二のおでこを触ったり、冷却シートをおでこに貼ったりと忙しく看病している。そんなまめな姿を見るのはレアだと微笑ましく思いながらも英二は決して口にはしなかった。
彼の触れた部分から体の力がいい具合に抜けてリラックスするのを感じた。安心感と眠気で英二は座ったままウトウトし始めた。意識がどんどん遠ざかり、まぶたは重くてもう開けられそうもない。ふと耳元でこれ以上ないほど優しい声が聞こえてきた。
「オニイチャン。。。俺がそばにいるから。。。だから今はゆっくり眠って。。。?」
頭上に優しいキスが落ちたと同時に英二は意識を手放した。
***
翌朝、英二の熱は微熱まで下がったものの、今度は違う問題がでてきた。
英二の喉が相当ひどい状態になっていた。
昨日までは枯れた声で意思疎通できていたが、今朝は全く声がでない。喉の奥が完全に腫れ上がってしまったらしい。
「。。。。グ」
頑張ってもひとこと程度しか声がでず、首筋の痛みも強くなってきていることにショックを受けたのか、英二は涙目になっていた。更に悪いことに食べ物はもちろん、水すらまともに飲めない状況にアッシュは焦った。
「チッ。。。やっぱり昨日の時点で医者に診せておくべきだった。。。」
自分の判断が悪かったとアッシュは自分を責め、すぐに電話をかけた。
「。。。アレックス!緊急事態だ!まずはイベのところまで行って、本人を連れてここまで来てくれ!」
「え。。。イベ?」
突然のことに電話に出たアレックスは混乱しているようだったが、アッシュは口調を荒げて彼を急かした。
「殺されたくなければ1分以内に出発しろ!。。。英二が病気だ!」
察しのよいリンクスNo.2のアレックスは、【英二が病気】というただならぬ言葉を聞き逃さなかった。
「りょ、了解!ボス!」
(大変なことになっちまった。。。!!)
すぐ状況を把握した彼は、車に向かって死に物狂いでダッシュした。彼の近くにいた仲間たちは「見たこともない形相でアレックスがすっげー速さで駆け出していった」と後に語っている。
****
「扁桃周囲膿瘍(へんとうしゅういのうよう)ですね」
診察を終えた耳鼻科医は静かに告げた。
アレックスに連れてこられた伊部とともに、英二、アッシュは医師からの説明を受けていた。
「どういう病気なんですか?」
聞きなれない病名に伊部は症状について尋ねた。
「簡単に言うと、扁桃炎を酷くこじらせてしまい、扁桃のまわりに膿がたまる状態です。」
医者の言葉に伊部は顔をしかめた。
「これはかなり大きく腫れていますね。。。口も開きにくくなっていますし、痛みが強すぎて食事も取れなかったでしょう?」
声の出ない英二はコクコクと頷くことしか出来なかった。
「。。。今すぐ英二を治してやってくれ!」
耐えられないといった表情で、アッシュは医者に治療を急かした。一刻も早く苦痛から英二を解放させてやりたい気持ちでいっぱいだった。
「まずは腫れているところを切開ですね。それから膿を出します」
切開という言葉に英二はビクッと体を震わせた。その様子を見ていたアッシュは英二の背後から彼の肩を支えた。
「チッ、痛そうだな。。。」
出来ることなら変わってあげたいと思うが、現実はそうもいかない。アッシュは思わず舌打ちしてしまった。
「食事がとれてないからまずは点滴、抗菌薬、痛み止めですね。。。早く治す為に入院しましょうか」
「!!! 」
(ええー? 入院?)
予想外の言葉に英二は目を大きく見開いた。処置さえすめばすぐに帰れると思っていたからだ。
声の出ない英二の代わりに、伊部が医者に尋ねた。
「あの、先生。。。どれくらい入院するんですか?」
「早ければ5日ほど、長くて一週間の予定ですね」
「。。。。」
悔しそうに英二は膝の上に置いていた手をギュッと握りしめた。
「英ちゃん。。。アッシュの側に居られなくて寂しいかもしれないけど、早く治した方がいいだろう?」
伊部は説得するように英二をなだめた。アッシュも仕方がないとため息をついて英二の手をとった。
「そうだぞ、たったの一週間じゃないか。声も出ない、飯も食えないんじゃ困るだろう? さっさと治してもらえ。できるだけ見舞いに来るし。。。」
その時、部屋の外で待機していたアレックスが慌てた様子で入ってきて、アッシュを呼んだ。
「ーボ。。。いや、アッシュ。ちょっといいですか?」
何か問題が起きたらしい。緊急で対応する必要がありそうだと悟ったアッシュは残念そうに英二の指を離した。
「。。。あぁ、すぐ行く。。。」
そして伊部の方を振り返った。
「伊部、すまないが できるだけ英二に付き添ってやってくれないか?」
「もちろん、そのつもりさ。」
最初からそのつもりだったようで、伊部は力強くうなづいた。
(本当は英二のそばにいたいだろうに)
アッシュの気持ちを思うと心が痛むが、彼の代わりに英二をしっかり見ておこうと伊部は思った。
「 あー、英二。。。俺はちょっと今から出かけないといけない。入院で必要なものは部下に用意させるから心配するな。このままここにいろ。」
罪悪感にかられそうで英二の顔を見れないのか、アッシュは視線を外しながら申し訳なさそうに言った後、英二の頭をやや乱暴にクシャクシャと大きな手のひらで撫でた。そしてアッシュとアレックスは慌ててどこかに出かけていった。二人の背中を無言のまま英二は見ていた。ドアが閉まり、医者が今後のことについて説明し始めた。
「いいかい?今は自分の体を治すことが最優先だよ?」
すぐそばで言った伊部の言葉は、英二の耳には全く入ってこなかった。
*続*
(あとがき)
お読みいただきありがとうございます!。 英二の病名、私に診断されたものそのまんまです(笑)治療もそのまんま(笑)よければ小説へのご感想、リクエスト等お聞かせくださいね。
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