らぶばなです。みなさまご心配おかけいたしております。。。自分の入院ネタを元に、創作しています。少しでもお楽しみ頂ければ幸いです。
〜もしも英二が病気で入院したら?〜
「僕たちの大切な時間」
第五話:アッシュ、厨房に立つ
アパートメントに戻ったアッシュは、さっそくキッチンにはいった。
「えーと、どこにある。。?」
ゴソゴソと慣れない手つきであちこちの棚を開けてようやく取り出したのは、英二が調理で愛用している日本製の鍋だ。
「英二。。。待っていろ。俺がお前を救ってやる。。。!」
左手に鍋、右手におたまを勇ましく持つ姿は、まるで今から戦場に向かう戦士のようだ。
真剣な表情で携帯レシピを眺めていると、インターホンが鳴って買い出しに出ていたボーンズとコングが入ってきた。
「ボス、デパートで最高級のコシヒカリを手に入れてきました!」
「ネギってこれであってるんですかねぇ?カツオブシってなんか木屑みたいですけど、これは食いもんなんですか?」
「。。。あぁ、これであっている」
アッシュは紙袋の中身を確認するとネギと包丁を握りしめた。
「ボスが料理するだなんて。。。」
「包丁持ってるボス、スッゲー強そうだな。。。」
珍しいアッシュの姿に子分たちは興味津々だ。
「あの、ボス。。。一体何を作るんですか?」
「ネギとカツオブシの入った”おかゆ”だ。あれなら喉とおりが良いから英二も食えるだろう。」
英二につくってもらった日本のおかゆの食感をアッシュは覚えていた。あのとろりとした優しい味わいの食べ物なら、喉に痛みを感じている英二でも食べられるかもしれない。
できる限り英二が作ったおかゆを再現したいとかんがえていた。ただ問題は、アッシュには料理経験がないことだ。簡単なサンドイッチやスクランブルエッグ程度ならもちろんできるが、日本料理は初めてだ。
アッシュは洗った生米を直接鍋に入れ、水とネギとカツオブシを適当に入れて火をかけた。
「ボス、全部ぶちこんで炊くだけなんて、結構簡単なんですねぇ」
「一体どれくらい煮込めばできるんですかね?10分?」
鍋の前にやってきたコングとボーンズも心なしかワクワクしているようだ。
アッシュは少々得意顔で携帯のレシピを確認しながら言う。
「簡単なようで難しいんだぞ? 火力が大事なんだ。。。最初は強火で炊いて、沸騰したら弱火でじっくりコトコト30分煮込む」
三人はテーブルに腰掛けて、まだかまだかと鍋をひたすら眺めていた。しばらくすると鍋底から焦げたような匂いがしてきて、慌てて鍋蓋を開けると、水分量が少なすぎてコメが焦げ付いていた。さらにカツオブシも最初に入れてしまったので膨らんでしまい、とんでもないものが出来上がってしまった。
「あちゃー、失敗。。。」
焦がしてしまった鍋を気まずそうに三人は眺めていた。
「はぁー、どうしたものかな。。。」
ため息をつき珍しく自分たちの前で落ち込むボスを見て、ボーンズとコングは首を傾げながら何か良い案はないか考えた。
(ボス、何とか英二に飯くってほしいんだな。。。オカユ。。。オカユ。。。そういえば、俺も前に食ったことあったな。。。あんまり味しなかったけど、シンは”日本のおかゆも美味い”と話してたっけ。。。)
ボーンズはハッと顔をあげた。
「ボス!チャイナタウンです!あそこに行けばいいんですよ!」
***
「珍しい客だなぁ。あんたがこんな所に来るだなんて」
チャイナタウンに突然現れたアッシュに、シンは驚きながらも快く迎え入れた。アジトの雑居ビルは、もともとは中華料理店のようで、円卓のテーブルにキッチン、冷蔵庫が付いている。
一番奥のテーブルに腰掛けるよう促され、アッシュたちは座った。
「で、なんだよ?あんたがわざわざ出向くってことは相当大事な話があるんだろ?」
テーブルに肘をつき、シンがアッシュの目をじっと見つめた。彼が直接やってきた真意を確かめるつもりだ。
アッシュは相変わらず無表情だったが、シンが思い出したかのように「そういえば英二は?」と聞いた瞬間、アッシュはギュッと拳をにぎりしめ、表情を強張らせたのを見て、シンは不安になった。
「お、おい? 何かあったのか。。。?英二に。。。?」
苦しみに耐えるかのような表情で、アッシュはまっすぐシンを見据えた。
「シン、おまえに話がある。。。緊急事態だ。。。」
「なんだ?ヤバイことでも起きたのか?」
シンはとんでもなく面倒なことが起きたのだと悟った。そしておそらく英二に関することに違いないと。真剣な表情でシンは頷き、アッシュに続きを促した。
「頼む、教えてくれ。。。」
「何を?俺が知っていることか?」
(なんだ?なにが起きた?)
切羽詰まった表情で迫ってくるアッシュに、シンは思わずゴクリと唾を飲み込んだ。
「オカユだ!オカユの作り方を教えてくれ!今すぐ!!」
「。。。。。。ハァッ!?」
***
「あはははは!天下のアッシュ・リンクスがオカユ作りねぇ!」
シンは腹を抱えて笑っていた。
「。。。笑うな!」
ムッとしながらアッシュは恥ずかしそうにそっぽを向いた。
クックッとまだシンは笑い続けていたが、アッシュをチラリと見た。腕を組み、頬を膨らませていてとても人にものを教えてもらおうという態度には見えない。だがこの男がここまでするのは大事な親友のためだとシンは理解していた。
「でもまぁ。。あんたが恥を忍んで俺のところに来たんだから、教えてやってもいいぜ?」
シンの言葉にアッシュの表情が明らかに緩んだ。その様子を見て、ふとシンは不思議に思う。
(あれ、アッシュってこんなに表情豊かだっけ? )
いつもアッシュは無表情で冷静だった。だがいま目の前にいるのは、親友を助けたくてもがいているただの男だった。本人に言うと怒られそうだが、素直で可愛らしいレアなアッシュ・リンクスをシンははじめて見た気がした。
「シン、本当か?」
「あぁ、英二が病気なんだろう?あいつには世話になったからな。。。滋養栄養のある中華粥を作ってやるよ!」
幸いここには調理道具も揃っているしと、シンは奥の厨房を指差した。
***
病室では、英二はベッドに横たわりながら点滴をうけていた。少しずつ状態は良くなってきており、声が少しずつ戻ってきた。そして開かなかった口も少しずつ開くようになり、その結果問題なく水を飲めるようになっていた。
「アッ。。。シュ。。。遅いな。。。」
英二は思わずポツリとつぶやいた。
さっきからずっと時計を気にしている英二を見かねて、ソファーで新聞を広げて読んでいた伊部は立ち上がった。
「来るって言ったんだろう?彼が言うなら必ず来るよ」
伊部の言葉に英二はコクリと頷いた。
「英ちゃん、食べないの?」
伊部は和食プレートを指差したが、英二は首を左右に振った。上手に飲み込めない英二のために、病院側が気を使ってミキサーですり潰してくれたのだが、ご飯以外のおかずが全てドロドロになっているのを見て、正直食欲は湧かなかった。
試しに「ぶり大根の煮付け」をすり潰したものを口に運んだが、英二はオエッと吐き出してしまった。
「うーん、やっぱり見た目がこれじゃなぁ。正直俺も食いたくないね、これは」
そうはいっても英二の栄養状態が心配な伊部は何か良い方法が無いかと困っていた。
するとインターホンが鳴って、アッシュとコング、ボーンズたちが姿を現した。
「アッシュ!!コングにボーンズも!」
英二は嬉しそうに三人を向かい入れた。
「おまたせ、英二。。。おまえ、声が出るようになったんだな」
「うん、ようやく声が戻ってきたんだ。。。!嬉しいよ」
「飯は?」
「。。。まだ」
気まずそうに英二は視線を逸らしながら首を振った。
「そうか、おまえに食ってもらいたいものがある」
「え。。。?」
*続*
(あとがき)
お読みいただきありがとうございます!。 アッシュってお料理できるんでしょうか?やろうと思えばできるけど、英二が作ってくれるし他のことに時間を使いたいからしない派かな? ちなみにおかゆを失敗したのは、調理方法はあってたけど各材料の重さを測らずに適当に入れたから。。。ネギとカツオブシも最後に入れるはずなのに、なぜか最初に入れちゃったし!男の子らしい失敗で可愛いかなーと思ったのですが、どうでしょう? よければ小説へのご感想、リクエスト等お聞かせくださいね。
よければ拍手ボタンかアメブロのコメント欄から拍手かメッセージ応援お願いします!お返事は直近のブログ記事のコメント欄に返信させて頂きますね。
アメブロのコメントは承認後、内容が表示されますのでご了承ください。
ANGEL EYES 復刻版: イラストブックBANANA FISH BANANA FISH Original Soundtrack
『LisOeuf♪(リスウフ♪)』 BANANA FISH Blu-ray Disc BOX
BANANA FISH 復刻版BOX & 漫画家本special 吉田秋生本