らぶばなです。みなさまご心配おかけいたしております。。。自分の入院ネタを元に、創作しています(今回が最終話です)。離れ離れって寂しいですよね。らぶばなの場合、子供に会えないのが寂しかった。英二の場合、日中はリンクス、アッシュは空いている時間にふらりと、夜はイベさんが付き添っているイメージです。少しでもお楽しみ頂ければ幸いです。
〜もしも英二が病気で入院したら?〜
「僕たちの大切な時間」
第六話:一緒に帰ろう(最終話)
保温容器の蓋を開けると、香味料とスープの香りがふわっと広がった。白いトロッとしたお粥の上に赤、黄、茶色の木の実と水菜がトッピングとして飾られている。
食欲をそそる香りなのか、ふんふんと犬のように匂いを嗅ぐ英二を見てアッシュはクスッと笑い、「さっさと食えよ」と促した。
恥ずかしそうに英二はスプーンを持った。
「じゃぁ、いただきます。。。。」
そしておかゆをすくって口元に運んだ。
心配そうにアッシュ、伊部、コングとボーンズが見守るなか、英二はもぐもぐと咀嚼して飲み込んだ。
「何これ。。。!!すっごく美味しい!!」
予想以上に美味しかったようで、英二は驚きながら次々にお粥を口に運んでいく。
その様子を見たアッシュは思わずガッツポーズをとり、コングとボーンズは嬉しさのあまりお互いハグしあっている。
安心したのか伊部は目に涙を浮かべながら温かく見守っていた。
「ねぇ、これって日本のお粥とはちょっと違うよね?どうしたの?」
「これは薬膳粥だ。鳥手羽でとったスープで、松の実、クコの実、ナツメと一緒に煮込んでいる。。。シンに教えてもらって作った。。。」
「え。。? 作ったって君が。。。!? シンも?? どういうこと。。。!?」
驚きの連発で、英二は信じられない様子だ。
ずっと一緒に見守ってきたコングとボーンズがフォローする。
「本当だぜ? ボスはわざわざチャイナタウンまで行ったんだよ。シンに頭下げて作り方教えてもらたんだ」
「おい、余計なこと言うな!」
ジロリとアッシュに睨まれて、コングはヒィッと体を震わせた。
「待って。。。!聞きたい、その話!」
英二が頼むので、アッシュは黙って俯いてしまった。それを”了承”だと読んだボーンズがつづけた。
「おまえ、飯食えなかっただろ?ボスが心配して。。。お粥だったら食べれるんじゃないかって。。。でもほら。。俺たち料理なんてしないだろ?だからシンに頼んでさ。。。あいつ、中華料理でもお粥があるって言ってたし。。。」
「そうだったんだ。。。」
アッシュやリンクスたち、そしてシンまでもが自分のためにあれこれしてくれたのかと思うと感激で英二は胸がいっぱいになった。
「みんな。。。。ありがとう。僕、すっごくお腹空いてきたなぁ!」
「!!」
英二の言葉にアッシュは顔を上げた。コングとボーンズも嬉しそうだ。
「もっと食え!今度はバケツに入れて持ってきてやる!」
「ばーか、そんなに食えるかよ!」
いつもの調子ではしゃぐ二人を見て、英二は微笑みながらお粥を食べ始めた。まともに食事をしていなかったので空腹だった英二は彼らが作ったおかゆを完食した。
「ふぅ。。。ごちそうさま!ちゃんと食べれたから自信ついたな。。。今度は通常食に戻してもらって、ちゃんと食べるようにするよ」
不自由さを体験して改めて、健康のありがたさを実感した英二はニッコリと微笑んだ。
***
食事が取れるようになり、みるみる回復していった英二は一週間後に無事退院できることになった。
退院準備を手伝うため、アッシュは子分たちと病室を訪れた。
バッグに荷物を詰めながら仲間たちは談笑している。英二は高層階の窓から街並みを眺めていた。
「どうした?気分でも悪いのか?」
「ううん、ほらあの建物を見て?」
英二が指差したのは、大手ショッピングセンターだった。
「あのモールがどうかしたのか?」
「毎晩、この病院から見えるあのモールの光がまばゆくてね。。。すぐそばにあるのに近づけない。何だかもどかしい気分だったんだ」
「。。。退院するんだから、いつでも行けるだろう?」
アッシュの手のひらが英二の肩に触れた。
「うん。。。でも僕はいつもこんな気分を味わっている気がする」
「。。。?」
どう言う意味なのか理解できず、アッシュは不思議そうな顔をしている。
英二にとってアッシュは眩い光だ。とても美しく強いがその脆さや繊細さも知っている。すぐそばにいるのに時々遠く感じてしまう。そんな不安を英二はずっと抱いていた。
「オニイチャン、退院祝いにやりたいことあるか?パーティーでも開くか?」
わざとおどけるようにアッシュは尋ねてきたので、英二はもうっと肘でアッシュを小突いてから再び窓の外に視線を向けた。
「窓から見えてたあのショッピングセンターでぶらぶら買い物して。。。それから。。。君と一緒にラーメン食べに行きたいな」
「それじゃぁ、いつもしていることと変わらないじゃないか」
アッシュは呆れたようにクスクスと笑った。
「まぁね、でもそれがしたいことなんだよ。入院中ずっと考えていたんだ。。。体はもちろん大事なんだけど。。。一番辛いのは君と離れ離れだったことだ。僕にとって、君と何気ない1日を過ごすことがどれほど大事か改めてわかった」
英二は真摯に自分の気持ちを告げると、アッシュは一瞬詰まったような表情をみせ、しばしの沈黙のあと照れ臭そうに口をぱくぱくさせた。
「そんなの。。。俺はとっくに。。。ずっと。。。」
(おまえとの時間がどれほど大事かだなんて。。。そんなのとっくに分かっている。。。)
どんな時でも迷わずストレートに気持ちをぶつけてくる英二が羨ましいとアッシュは思う。ポーカーフェイスで自分の気持ちを隠して相手をいかに誘導させるかは得意でも、自分の感情を素直に吐露することは苦手だった。
苦手とはいえ、さすがに今この状況ではきちんと自分も言葉にすべきだとアッシュは理解していた。頭では分かっていても素直になれずしどろもどろになってしまった。
幸い英二は察しが良い。アッシュの態度を見て何を言いたいかは理解してくれたようだ。少々格好が悪いが、いまは英二に甘えておこうとアッシュは思った。
「僕のために立派な部屋を用意してくれてありがとう。。。慣れない料理してくれてありがとう。君は本当に優しいね。君のお粥のお陰で元気をもらったよ」
英二はそう言ってアッシュの手をとって、感謝の気持ちを表すように両手で握りしめた。
「。。。。。。」
(よくもまぁこいつは。。。聞いていて恥ずかしくなるぜ。)
これ以上は聞いていられないと、アッシュは英二の手首を掴んだ。
「モールに行きたいんだろ?近いから歩いていこうぜ」
そう言ってアッシュはアレックスに向かって車の鍵を放り投げた。
「荷物をアパートまで運んでおいてくれ。俺たちは電車かタクシーで帰るから」
「えー!待ってよ。まだ荷物が。。。」
チラリとアレックスやボーンズを見ると、彼らはニヤニヤしながら「さっさと行けよ」と手で合図していた。なかなか思うように時間が取れないボスのために彼らも協力したいと思っているのだ。
「。。。ありがとう!」
英二は礼を言って、アッシュと共に病院を出た。
「あぁー!外の空気を吸うの久しぶり。。。!すっごく新鮮で美味しい!」
両手を広げて大げさに反応する英二にアッシュは大通りを走る車の列を指差した。
「はぁ?排気ガスだらけだぜ?オニイチャン」
「気分の問題だからい・い・の! モール行くの楽しみだなぁ。。。確か新しいノリノリ君グッズが出たって情報が。。。」
瞳をキラキラさせて英二はノリノリグッズに想いを馳せている。こうなると買い物は長くなることをアッシュは知っていた。
「まだ体力回復していないだろうから、買い物は1時間だけな!それからラーメンは胃もたれするだろうから俺とシェアすること!わかったな!」
釘をさすと、英二はリスのように頰を膨らませた。
「えー、1時間? ラーメンも半分だけ?」
「あぁ。だが食後の杏仁豆腐は許可してやる」
「やったー!」
「帰ったらビール一杯だけ飲ませてやるから、あんまり無茶するなよ?」
「うん、買い物して。。。それから僕たちの家に帰ろう!」
「。。。おう」
入院中、一緒にいられなかった時間を取り戻すかのように二人は肩を並べて歩いていく。そして笑顔のままショッピングモールの入り口へと消えていった。
*終*
(あとがき)
お読みいただきありがとうございます!。 お付き合いいただきありがとうございました。個人的な体験をせめてちょっとでも面白おかしくお話にできればなーと思ったのですが、大丈夫でしょうか、みなさん。。。ご心配おかけしました。もう退院してますよ!サクッと終わらせてしまいましたが、アッシュにお粥を作ってもらいたかったのと、バーバラとイタリアンドクターと対面するシーンが書けて個人的に満足しております(笑)一体シンはアッシュにどんな風に教えたんでしょうか?そもそも彼は調理できるのか?きっと彼の仲間で中華料理の跡取り息子はたくさんいそうだから、料理できる部下を呼んで一緒に作ったのかしら。。。?妄想が広がりますね。よければ小説へのご感想、リクエスト等お聞かせくださいね。
よければ拍手ボタンかアメブロのコメント欄から拍手かメッセージ応援お願いします!お返事は直近のブログ記事のコメント欄に返信させて頂きますね。
アメブロのコメントは承認後、内容が表示されますのでご了承ください。
ANGEL EYES 復刻版: イラストブックBANANA FISH BANANA FISH Original Soundtrack
『LisOeuf♪(リスウフ♪)』 BANANA FISH Blu-ray Disc BOX
BANANA FISH 復刻版BOX & 漫画家本special 吉田秋生本