皆さま、こんにちは!らぶばなです。アッシュのタイムワープ話の続きです。個人的に高校生の英二ってもっと天然で子供っぽいところがあるかな〜と思っています。そういうところをちょっと表現してみました(笑)
〜アッシュが英二の高校時代にタイムワープ?〜
「俺が叶えたかった望み」
第三話:都合のよい設定
英二に連れてこられた職員室で、俺は自分の現状を知った。教師が英二に俺の状況をペラペラ説明しだしたからだ。
どうやら俺は英二の通う高校の”交換留学生”らしい。NYに住んでいる日本びいきの両親(会ったこともないが)の影響で、日本語はすでにペラペラ(なんて都合のよい設定だ)。日本文化と最新技術を学ぶため、半年間だけこっちで過ごすことになっているそうだ。
「まだ制服の採寸が終わってないから当分は私服で通学してもらうしかないだろう」
「きっとアッシュなら似合うでしょうね。クラスの皆も驚くだろうなぁ。。。」
なぜか教師と英二は勝手に盛り上がっている。まぁ、英二が話し上手だからってのもあるだろうが。
「奥村、アスラン君のお父さんは有名な銀行家でな。お母さんはモデル兼ジャーナリストらしい」
「はぁ〜、すっごいですねぇ。想像つかないや!」
俺はジーっと他人事のようにただ聞いていた。
(へぇー、俺の親ってそういう設定なんだ)
こっちの世界にいる自分に関する重大な情報だから、本来はしっかり聞いておくべきなのだろう。閻魔大王の設定通りに俺は行動しないと不審がられてしまう。
だが、やはり他人事としか思えなかった。
何せ現実の俺は殺人鬼でストリートキッズのボスで、しかもオーサーに刺されて死にかけている。生きているのか死んでいるのかも分からない状態だ。
(もし俺が全く違う人生を歩んでいたのなら。。。)
続きを考えようとしたが、何だか気持ちがもやもやする。そんなことなどありえないからだ。目の前で起こっているのは、いわば夢のようなもので、閻魔大王のちょっとしたお遊びみたいなものなのだ。だから本気にしてはいけない。
「。。。じゃぁ、奥村。部活の邪魔をして悪かったな。アスラン君のことを頼むぞ」
「大丈夫ですよ、先生。今日やることはほとんど終わってますから。じゃ、行こうか、アッシュ!」
「。。。。」
俺は床をじっと見ながら考えことを
「。。。アッシュ?」
ポンと肩を叩かれ、俺は慌てて顔を上げた。
(やっべー、聞いてなかった)
「え、どこかへ行くのか?」
「どこって君の家に帰るんだよ。」
「あー。。。」
(しまった、俺ってどこに住んでるんだっけ?)
頭をぽりぽりと掻きながら何と答えるべきか迷った。まさか宿なしですとは言えない。家も分からないだなんて怪しすぎるだろう。閻魔大王にちゃんと聞いておけばよかったと俺は無下にしたことを後悔しはじめた。
ふっと俺の目の前に鍵が差し出され、俺は思わず顔を見上げた。
「先生から受け取ったよ。。。君の家の鍵。君のお父さんが学校に預かってもらうよう大家さんにお願いしたみたいだね。。。それにしても、空港から直行で学校に来ただなんて疲れただろう?荷物は先に届いているって先生が言ってたよ」
どうやら俺の寝床は保証されているらしい。俺は安堵のため息をついたが、英二はいい具合に誤解してくれたようだ。
「。。。。いやぁ、もう疲れたぜ」
(別の意味でハラハラしてだけどな。。。)
「先生がどうして僕を呼んだのか分かったよ」
英二がカラカラと笑い、自分のカバンから長袖ジャージを取り出して羽織った。今日の練習は終わりにするらしい。
「。。。? どういうこと?」
「行ってみたらわかるよ。さ、行こう」
***
学校の外は住宅街だった。狭い歩道を歩きながら坂道を下っていく。どこか懐かしい感じの木造建物や、昔ながらの個人商店、小さいが落ち着いた感じの公園などがある。人はまだらで車もほとんど走っていない。
「こっちの道が近道だよ」
英二が指差した方はコンクリート舗装されていない小道だった。もう夕方近くになっているので空はオレンジ色になり、木の陰が長くなっている。心地よい風がサワサワと通り抜けていった。
俺たちは肩を並べてまっすぐ歩いていく。ここが英二の故郷なのかと思うと感慨深い。時々知り合いが通るらしく、英二はすれ違うたびに丁寧に頭をさげて挨拶をする。
田舎道は静かで、俺たちの足音と鳥の鳴き声以外に聞こえるものはなかった。俺たちはすっかり無言になっていたが、息苦しさを感じることはなかった。英二の隣にいるのは不思議と心地よいのだ。
俺にとって随分”都合のよい設定”にしてくれたものだと俺は閻魔大王の情けに思わず苦笑しそうになった。
ふと俺は英二が制服を着ていないことに気がついた。
「あれ、お前。。。着替えないのか?」
「うん、汗かいたし、着替えるの面倒くさいもん。どうせすぐ風呂に入るから。。。だからいつも帰りはジャージ姿さ」
英二はクンクンと着ているシャツを匂って、わざと大げさに”汗臭い”と舌を出した。
「はははっ、お前らしいな」
俺の言葉に英二は立ち止まった。
「え?。。。僕らしい?」
「。。。。あ」
俺は自分の失言に気がついた。いつの間にかふだん英二といる時のような感覚に陥っていたからだ。
(出会って間もないないのに、”おまえらしい”なんて不自然にもほどがあるだろう)
「。。。俺の日本語おかしかったか?まだ勉強中なんだ」
咄嗟に俺は誤魔化した。日本語が話せる設定だとは言え、本来俺はアメリカなのだから表現を間違えることもあるだろう。
「。。。。ううん。上手だよ」
英二は否定せず、道端の石ころを足で蹴飛ばした。
「。。。。。」
(こういう優しさもこいつらしいな)
俺たちは15分ほど歩き、ある古い一軒家にたどり着いた。青い瓦屋根に白い壁の2階建木造住宅だ。小さな庭には大きな木と家庭菜園用らしき小さな畑がある。1階には縁側付きの和室、2階には個人の部屋がいくつかあるようだ。
「ここ?俺の家って」
俺は家を見上げた。まさか一軒家だとは思わなかった。
「いや、ここは僕の家」
「英二の?」
なぜ英二は自分の家に俺を連れてきたのだろうかと不思議に思っていると、英二は隣の建物を指差した。そこは単身者用の2階建ハイツだ。
「ここだよ、君の家」
「え、おまえの家の隣なのか?」
「そうみたいだね。えーっと、201号室。。。あ、あの角部屋だね。わぁ、僕の部屋と真向かいじゃないか」
「えぇっ!」
英二は自分の部屋はあそこだと指差した。俺の部屋と隣接していて、窓ごしに会話できそうだ。
「ね、君の部屋、見に行ってもいいかな?」
「あ、あぁ構わないけど。。。」
「じゃぁ、行こうぜ!」
いたずらっ子のように英二はワクワクしているようで、モタモタしている俺の手を引っ張りながらハイツへと入っていく。
俺の部屋は家具が備え付けられたシンプルなワンルームだった。机とベッド、着替えや生活必要品の入った段ボールが数箱積み重なっていた。
英二はキョロキョロと俺の部屋を眺めて ”いいなぁ〜。シンプルなモノトーンの家具がかっこいい!”と言いながら窓に近づいていく。そして窓を開けた。
「アッシュ!そこで待ってて!」
そう言った後、英二は部屋からかけて出て行った。俺も窓から外を眺めていると、英二がハイツから出てきて急ぎ足で自分の家に入り、ドタバタと走る音が聞こえたかと思うとガラッと二階の部屋の窓が開いた。
「おーい!やっぱり近いね!」
英二は窓から俺に手を振った。
「あぁ、これ。。。手を伸ばせば届くんじゃないのか?」
「本当だね。ねぇ時々ここで話ししようよ。落ち着いたら君の部屋にも遊びに行かせて!」
「。。。別に構わないけど」
「僕の部屋にも来てよ。狭いけどね」
「。。。ん」
英二の部屋はどうなっているのか正直気になっていたので、俺は素直に頷いた。
「じゃぁ、これは君の引っ越し祝いに」
そう言って英二は厚みのある本のようなものを手にとって”投げるよ〜”と言ってゆっくり放り投げてきた。
バサッと音がしてちょっとザラザラした感覚の本を俺は受け取った。
それは『少年サ●デー』と書かれた英二の愛読コミックだった。
*続*
お読みいただきありがとうございました。 アッシュの家、英二と同居でも面白いと思ったのですが、お隣さんにしてみました。これじゃほぼ通いつめますよね。。。創作しているうちにどんどん内容が(最初に考えていたのと比べて)変わっていくので、ラストはどうなるのか自分でも想像つきません。更新速度もまちまちになると思いますが、楽しんでくださったら嬉しいです。
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